LEVI’S® 501XX 1922年モデルのオリジナル・デッドストックが存在した | Vintage Denim Club

『Hypebeast Japan』編集長の森口徳昭が、新連載「Vintage Denim Club」をスタート。デザインの“ルーツ・オブ・ルーツ”とも言えるヴィンテージアイテムの謎やディテールを紐解き、そこに宿るカルチャーや時代背景を理解し、読者とともに共有していきたい──。第1回は、LEVI’S® 501XX 1922年モデルのデッドストックという、世界最高の穿けるジーンズを紹介する。

ファッション
0 0 コメント
保存

LEVI’S®(リーバイス)〉501XX。そのなかでも“1922年モデル”、通称22(ニーニー)と呼ばれる約100年前のデッドストック・ジーンズが、ここ日本の、とあるコレクターの手に眠っていた。

アメリカ・サンフランシスコにあるリーバイ・ストラウス社のアーカイブ室にも“1922年モデル”のデッドストックが保管されているはずだ。ただし、それはレングスの長い特注品だと聞く。それはそれでめちゃくちゃロマンだが、一方、今回ご紹介するこの“1922年モデル”は、サイズがW34L31。当時店頭に並んでいたリアルな市販品サイズである。現存する“1922年モデル”の完全な状態のオリジナル・デッドストックは、世界でも数本もないと言われているが、このようにゴールデンサイズで残っているのは奇跡に近い。(ちなみに、この時代以前のモデルのデッドストックが市場に出た記録はない。)

つまり、この個体は、多くの人が“ゼロから穿ける”最古級の501XX。世界最高峰のデッドストックのヴィンテージジーンズと呼んでも、決して誇張ではないだろう。

かつて〈Dior(ディオール)〉のクリエイティブ・ディレクターを務めたキム・ジョーンズ(Kim Jones)は、“1922年モデル”のオリジナルユーズドを普段穿きしていた。それは、1900年以前の古い片ポケジーンズや1940年代の荒々しい大戦時代のジーンズとはまた違う、“1922年モデル”の特別なディテールを研究していたからだと思う。では、何が、ニーニーは特別なのか? それは何を隠そう、501XX史上屈指と言えるほどに、ディテールが豊富だからだである。そこで、まずは、“1922年モデル”がどうディテールがモリモリなのかを解説していこう。

これが LEVI’S® 501XX 1922のオリジナル・デッドストックだ | Vintage Denim Club リーバイス

まず“1922年モデル”は、腰まわりを見れば、その異様なモリモリ度がわかる。ベルトループ、針刺しバックル、サスペンダーボタン……パンツを固定する方法が3通りも存在するのだ。サスペンダーからベルトへと移行する過渡期ならではのハイブリッド構造な“全部乗せ”仕様。ベルトレスやサスペンダーレスで十分穿けるほど〈LEVI’S®〉のウエストバンドのホールド感は本来抜群なのに、1本で3度おいしい。ちなみに、銅製の針シンチの柱には「SOLIDE」の刻印あり。

そして、リベットにも特徴が多い。バックポケットはコンシールドリベット(通称:裏リベット)考案前のアウトリベット仕様。ボタンフライ裏の持ち出しは大戦と同じ切りっぱなしだが、バックポケットのリベット留めは大戦のような丸みのある鉄リベット留めではなく、銅製フラットの馴染みがあるタイプだ。そして股下にもリベットが打たれている。リベットもモリモリだ。

バックポケットまわりを見ると、アイコンであるアーキュエイトは1本針縫製。交差部分にダイヤモンドステッチはない。どこかマクドナルドのMにも、イーグルの羽にも、カモメにも見えるダイナミックな2本の曲線。一方、赤タブは存在しない。赤タブが付くのは、コンシールドリベットに変更される1937年以降だ。つまり、バックポケット周りも、細かな情報がモリモリ詰まっている。

と、ここまでは既存研究でも知られていた話かもしれないが、今回デッドストックを精査することで、さらに見えてきた特徴がある。腰回りの“全部載せ”を越える最大の特徴が、バックルバック下のサスペンダーボタン付近に付く紙「アワードタグ」だ。これはサンフランシスコで開催されたパナマ太平洋国際博覧会で最高賞を受賞したことを示す紙タグ(正式:“Panama-Pacific International Exposition Award Tag”)で、1936年頃までのデッドストックに確認される。

この「アワードタグ」に書かれている内容を分解すると
“All garments made by Levi Strauss & Co.”
→リーバイス社製であることの保証
“Indigo Dyed Denim”
→ インディゴ染めデニムであることを強調(当時の品質訴求)
“Highest Award / Grand Prize”
→ 最高賞を受賞したというブランディング
“Panama-Pacific International Exposition San Francisco 1915”
→ 1915年万博の受賞を明記
となっている。

一方でフラッシャーはこの時点では存在しない。フラッシャーの登場は1937年以降だ。それから本個体には、「FOR OVER 60 YEARS」のギャランティチケットが付属する。より古い“1922年モデル”には、「FOR OVER 50 YEARS」のギャランティチケットが付く。

ステッチ部分にも注目してみたい。イエローステッチはなく、すべてオレンジステッチ。だがよく見ると2種類の番手が使われていることに気づく。負荷のかかる部分には太番手、ポケット周辺にはやや細番手。工程ごとにミシンを使い分けていることがわかる。このそこはかとないオーラは、こうした微差から生まれているのだろうか。

さらに不可解なのがベルトループの素材だ。なぜかここだけオンスが低い、まるでデニムシャツのような軽い生地が使われている。サスペンダーボタン&バックルバックがあるから、より気軽なベルトループにして、コストの調整を図ったのだろうか。真相はわからない。ただ、こうした小さな不均質もヴィンテージの面白さでもある。同時に、オリジナルかどうかを見破るポイントにもなる。ちなみに、バックルバックと重なる後身頃真ん中のベルトループのみ、下の縫い付けが裏から行われている。

これが LEVI’S® 501XX 1922のオリジナル・デッドストックだ | Vintage Denim Club リーバイス

最後に、裾まわりにも、いくつかの特徴が確定できる。赤耳はインディゴと白の境目に位置、そして、この個体の裾の仕上げはチェーンステッチだった。“1922年モデル”の既存研究では、裾がシングル縫製のものを前期型、チェーン縫製を後期型と分類していたはずなので、この個体はチェーンステッチにつき後期型かな、と判断したら、ヴィンテージデニム研究の第一人者 青木孝則氏は、さらなる事実を教えてくれた。

「裾がシングルなのは、最初期の約2年間ほどですね。ちなみに、LEVI’Sがこのモデルを発表したのが1922年なんで、22モデルと呼ばれていますが、実際に市場に出たのは1923年頃と思われます。で、ボタンやステッチなど、約2年ごとにマイナーチェンジがあり、実質8パターンほど存在します。先人が“1922年モデル”と名付けただけで、今となっては1922〜36年生産の501XXをすべて“1922年モデル”とするのは違和感があります。ちなみにこの個体は1934年後半〜36年製造の“パターン8”に該当します!」

とのことだった。いやはや、ヴィンテージデニムの沼はやはり深い。1本追えば、必ず時代にぶつかり、構造にぶつかり、研究者にぶつかり、そしてまた自分の無知にぶつかる。だが、その謎をひとつずつ解きほぐしていく過程で、当時のカルチャーや空気と不意に接続する瞬間がある。その一瞬こそが、この世界に取り憑かれる理由なのだ。

これが LEVI’S® 501XX 1922のオリジナル・デッドストックだ | Vintage Denim Club リーバイス

Vintage LEVI’S 501XX “1922” 特徴
・ベルトループ、針刺しバックル、サスペンダーボタンを装備。パンツを固定する方法が3通り存在する“全部乗せ”仕様
・ベルトループのみライトオンスのデニム生地を使用
・ポケット脇のサイドステッチはこのモデルから採用
・バックパッチには「COPPER RIVETED」表記(大戦期以降は「ORIGINAL RIVETED」に変更)
・フラッシャーはまだ存在しない(登場は1937年以降)
・赤耳はインディゴと白の境目に位置
・裾はチェーンステッチ仕様
・裾がシングル縫製のものを前期型、1920年代後半以降のチェーン縫製を後期型とする説があるが実際は違う
・トップボタン裏は無刻印のドーム型
・トップボタン裏の縫製はVステッチではなく平行ステッチ
・ギャランティチケットは「FOR OVER 60 YEARS」
・初期の1922モデルには「FOR OVER 50 YEARS」表記も存在
・サンフランシスコの「パナマ太平洋国際博覧会」で最高賞を受賞したことを示す“アワードタグ”が付属
・研究では1922〜1936年の間に細かなマイナーチェンジがあり、実際には約8パターン存在するとされる

Read Full Article

次の記事を読む

見逃したくない今週のリリース 9 選
ファッション

見逃したくない今週のリリース 9 選

「Virgil Abloh Archive™」x Air Jordan 1 High OG “Alaska”から〈Supreme〉x DJ Screw 2026年春コレクションまで、今週の注目ドロップをおさらい

エミリー・アダムス・ボーディ・アウジュラが語る Levi’s® と記憶 | Interviews
ファッション

エミリー・アダムス・ボーディ・アウジュラが語る Levi’s® と記憶 | Interviews

〈Levi’s®〉と〈Bode〉のコラボレーション発表のため来日していた彼女に、そのルーツとデニム観を聞いた

香港発のヴィンテージアーカイブ本『Vintage Style Research Archive Vol.1』が発売 ── アジアに広がっているヴィンテージカルチャー
ファッション

香港発のヴィンテージアーカイブ本『Vintage Style Research Archive Vol.1』が発売 ── アジアに広がっているヴィンテージカルチャー

4月24日(金)〜5月5日(火)、代官山『蔦屋書店』にてポップアップイベントを開催。


Levi’s® とヴィンテージショップ 194 Local による2度目のコラボレーションが実現
ファッション

Levi’s® とヴィンテージショップ 194 Local による2度目のコラボレーションが実現

ヴィンテージの視点から再解釈されたデニムウェアを、より鮮やかで現代的なワードローブへと昇華

見逃したくない今週のリリース9選
フットウエア

見逃したくない今週のリリース9選

〈Supreme〉x〈Dr. Martens〉Postal Supremeから〈Nike〉x NIGO LO2 Air Force 1まで、今週の注目ドロップをおさらい

MM6 Maison Margiela x Salomon による最新カプセルコレクションが発売
ファッション

MM6 Maison Margiela x Salomon による最新カプセルコレクションが発売

XT-MM6、CROSS DUST、XT-15 Backpackを再解釈

Engineered Garments と Converse が人気シューズ Weapon Low を再解釈した最新コラボモデルを発表
フットウエア

Engineered Garments と Converse が人気シューズ Weapon Low を再解釈した最新コラボモデルを発表

“Vintage White/Yellow”と“Vintage White/Black”の2カラーで登場

BEAMS が Gramicci との最新別注アイテムをリリース
ファッション

BEAMS が Gramicci との最新別注アイテムをリリース

カラーはタイダイ染めによるBLACK x GREIGEとD.BROWN x GREENの2色を展

スクウェア・エニックスが新宿とロサンゼルスにフラッグシップストアをオープン
フード & ドリンク

スクウェア・エニックスが新宿とロサンゼルスにフラッグシップストアをオープン

新宿の3フロアを丸ごと使った旗艦店とリトルトーキョーの拠点でブランド体験を常設化

Columbia が『スター・ウォーズ』コレクションの最新作を発表
ファッション

Columbia が『スター・ウォーズ』コレクションの最新作を発表

『マンダロリアン・アンド・グローグー』から着想を得た今季


Nike Astrograbber にレザーを用いた新色 “Black” が登場
フットウエア

Nike Astrograbber にレザーを用いた新色 “Black” が登場

5月8日(金)9:00より販売開始

BEAMS がミリタリーの定番を現代的に再構築した orSlow 別注モデルをリリース
ファッション

BEAMS がミリタリーの定番を現代的に再構築した orSlow 別注モデルをリリース

U.S. ARMY FATIGUE PANTSをベースに〈orSlow〉のシグネチャーであるSUPER DAD’S DENIM PANTSのバギーシルエットを融合

ヌオーのミニテーブルが『ポケモンセンターオンライン』に登場
デザイン

ヌオーのミニテーブルが『ポケモンセンターオンライン』に登場

みずタイプのポケモン ヌオーを再現した受注生産アイテム

G-SHOCK の世界10点限定 GM-6900 を入手 ── UNBOXINGでその全貌を公開
ウォッチ

G-SHOCK の世界10点限定 GM-6900 を入手 ── UNBOXINGでその全貌を公開

選ばれた10名のスペシャルゲストへと届けられるエクスクルーシブモデル

メーカーからカルチャーブランドへ ── AlphaTheta が提案する新たな音楽体験
ミュージック

メーカーからカルチャーブランドへ ── AlphaTheta が提案する新たな音楽体験

「RAINBOW DISCO CLUB」で生まれたもう一つの風景

Kith が wagwear とタッグを組んだ初のペットコレクションを発表
ファッション

Kith が wagwear とタッグを組んだ初のペットコレクションを発表

アパレル&アクセサリーコレクションがラインアップ

More ▾
 
ニュースレターに登録して、“最新情報”を見逃さないようにしよう。