ピンクパンサレスが語る UK カルチャーへの愛と飾らないポップアイコンとしての信念 | Interviews

初の来日公演に際してその素顔や音楽性を深掘り

ミュージック
401 0 コメント
Save

『TikTok(ティックトック)』世代のフレッシュな感性でUKクラブミュージックを現代的なポップミュージックとして再定義し、瞬く間にセンセーションを巻き起こしたのが、イギリス出身のシンガー/プロデューサーであるピンクパンサレス(PinkPantheress)だ。

ドラムンベースやUKガラージのビートに、彼女が愛するK-POPにも通じるキュートなメロディを乗せ、2分足らずのキッチュなポップソングへと仕立て上げる──その独創的なセンスはZ世代の支持を集め、楽曲は『TikTok』を起点に次々とバイラルヒット。彼女自身のアイコニックなビジュアルも相まって、新世代のオルタナティブなポップスターとして一躍脚光を浴びた。2023年には、アイス・スパイス(Ice Spice)とのコラボ曲 “Boy’s liar Pt. 2”が全米3位の大ヒットに。この曲で彼女の名前を知ったという人も多いだろう。

そして現時点での最新ミックステープ『Fancy That』は、1990~2000年代のUKクラブカルチャーを象徴するベースメント・ジャックス(Basement Jaxx)やアンダーワールド(Underworld)を大胆にサンプリングしたサウンドと、ピンクパンサレスらしいフックの効いたメロディセンスが融合した会心作。ザラ・ラーソン(Zara Larsson)やSEVENTEEN(セブンティーン)、ブレイド(Bladee)、ケイトラナダ(KAYTRANADA)、グルーヴ・アルマダ(Groove Armada)など、ジャンルや世代を越えた才能が集結したリミックス版『FancySome More?』も、彼女の世界観を別の角度から浮き彫りにする一作として楽しめる。

2026年2月には待望の初来日も実現。これを記念し、日本独自アートワーク仕様でボーナストラックを収録した来日記念盤『Fancy That (Japan Edition)』もリリースされた。『Hypebeast Japan』はライブ前日にピンクパンサレスに話を訊き、Y2Kカルチャーの魅力やファッションのロールモデル、そして自分の音楽を通して誰をエンパワーメントしたいのかについてなどを語ってもらった。

Hypebeast:以前プライベートで日本に来たことがあるそうですが、日本のどんなところが好きですか?

PinkPantheress:日本は多様性があるところが好き。みんなそれぞれ自分のスタイルを持ってるし。あと、もちろん食べ物も最高。前に来たときはディズニーランドも行ったし、本当にめちゃくちゃいろんなことをやったの。東京で思いつくことはもう全部やった気がするくらい。だから今回は、もっと東京以外のところを旅行してみたいかな。京都とか、他のエリアにも。

あなたがデビューしたとき、「クラブミュージックをこんなモダンなポップセンスで斬新に再解釈できるんだ!」と衝撃を受けたのを覚えています。あなたとしては、これまでにない新しいものを作ることに意識的でしたか? それとも自然に出てきたものだったのでしょうか?

私はイギリス出身だから、サウンドはイギリスの影響がすごく強い。だから自分では、そんなに「めちゃくちゃ新しいことをやってる」って感覚はなくて。でも気づいたのは、イギリスの音楽って、イギリスの外だと意外と知られてないんだなってこと。イギリスって国自体が小さいし。だから私がSNSを使って音楽を広めたことで、いろんな国の人たちが初めてそのジャンルとか、そういう音を聴いたんだと思う。歌い方のスタイルも含めてね。ほんと、自分では当時そこまで突飛だとは思ってなかったけど、周りに言われて「そうなのかも」ってなった感じ。実際、アメリカであそこまで大きくなるとは思ってなくて、UKのほうがもっと盛り上がると思ってたから。

あなたの音楽にはY2Kの影響が通底しています。当時のカルチャーの一番の魅力はどこにあると思いますか?

一番は音楽の自由さだったと思う。あの頃は今よりもっとサブカルチャーがたくさんあった気がするんだよね。まあそれって、良い面も悪い面もあるんだけど。今はもっといろんなものが混ざり合ってて、コミュニティ的にも昔ほど分断されてない。でも当時は、それぞれのサブジャンルがちゃんと独自のスタイルを持ってて、それがすごく面白かった。あと、ロックが普通にメインストリームだったのもよかったと思う。今のチャートだと、オルタナティブな音楽があそこまで人気になることってあんまりないでしょ。だから音楽的には、あの頃の雰囲気が恋しいところはあるかな。

あなたはファッションもY2Kの要素が強いですよね。普段のスタイルは、どんなものから影響を受けていますか? 音楽や映画、特定の人物など、具体的に挙げるとすれば?

一番大きな影響を受けているのは、私のスタイリスト。彼女の存在が、私が着るものにすごく影響してると思う。あと、母親もそう。その2人の存在が大きい。それから、日本のスタイルもすごく好き。私が着てるものって、結構そういう要素がある気がするんだよね。よく「(日本の)ギャルっぽい」って言われるし(笑)。メイクとかじゃなくて、服とか靴とか、全体の雰囲気がそういう感じだって言われる。だから、日本のスタイルはかなり好きで影響も受けてると思う。

『Fancy That』は、デビューミックステープ『to hellwith it』で提示したオルタナティブなダンスミュージックと、ファーストアルバム『Heaven Knows』で提示した洗練されたポップサウンドを掛け合わせ、さらに進化させたという印象を受けます。あなたとしてはどういった作品を目指していましたか?

それがまさに私のやりたかったこと。あと、歌詞の面では、前二作よりも悲しい雰囲気は少なくしたかった。でも基本的には、今言ってくれた通りのものを作りたくて。というのも、『Fancy That』はファンが気軽に楽しめる作品にしたいと思って作ったから。最初はシンプルに、夏に向けてファンの人たちに何かを届けたかったの(*『Fancy That』は2025年5月リリース)。だから、まさに前二作をミックスしたようなものにしたかった。新しくて楽しいんだけど、「あ、これって2021年頃のピンクパンサレスっぽさもあるよね!」って思えるような。そういう両方の要素を入れたくて。だから正直、このミックステープがここまで世間から好意的に受け取られて、びっくりしてるの。

『Fancy That』のアートワークや曲のサンプリングソースからは、イギリスらしさを強く感じます。今回イギリスらしさを意識的に打ち出したのはなぜですか?

自分自身とか、自分のルーツを表現したかった。イギリスのカルチャーって本当にすごいと思うんだよね。ポップカルチャーもめちゃくちゃ魅力的で、かっこいいものがたくさんある。でもイギリスって国が小さいから、そういうカルチャーがちゃんとスポットライトを浴びる機会って、意外と今までなかった気がする。だから、私の好きなイギリスのポップカルチャーの要素を今回あらためて強調したかったの。

今回サンプリングで使っている、ベースメント・ジャックスやアンダーワールドといった1990~2000年代のビッグ・ダンスアクトも、イギリスのポップカルチャーの重要な一部ですよね。ああいった音楽にいま惹かれた理由は?

シンプルに、最近ちゃんと聴くようになったから。曲自体は昔から知ってたんだけど、ディスコグラフィ全体を理解してたわけじゃなくて。でも、ベースメント・ジャックスの『Rooty』を最初から最後まで通して聴いてみたら、あまりに良すぎて衝撃を受けた。特に“Romeo”って曲が本当に最高。たぶん一番好きな曲で、あれは衝撃だった。今まで聴いたことのないタイプの曲だったから。もちろんリリース当時はすごく盛り上がったんだと思うけど、私はその頃まだ若すぎて、ちゃんと良さを分かってなかったんだと思う。だから今あらためて聴いて、すごく刺さって。あのアルバムを聴いたことで、自分の中の感覚が変わったというか、「(『Fancy That』で)自分がどこに向かいたいのか」っていう方向性を決定づけた感じがある。

『Fancy Some More?』のゲストアーティストは、まさにピンクパンサレスらしい世界観が感じられるセレクトです。どんな点を意識してゲストを選びましたか? また、特にお気に入りの一曲を挙げるなら?

何人かは友達みたいな感じだし、何人かはずっと一緒にやってみたいと思ってた人たちなの。で、私が「よし、やろう!」って決めて、彼らにどの曲が一番合いそうかを考えて選んで、「こういうの、どう?」って聞いてみたっていう。そんな感じで、けっこう簡単に進んだかな。お気に入りのトラックは……もちろんザラ・ラーソンの“Stateside”は大好き。でも実はブレイド(Bladee)の“Stateside”もすごく好きで。あれはとにかくプロダクションがめちゃくちゃかっこいいよね。

あなたの歌詞からは、「飾らない自分」を表現することを大事にしているのが感じられます。一時期、あなたがバッグを持ったままライブをやることも話題になりましたが、それも「ありのままの自分」であるだけだと思います。ポップスターのペルソナをまとうことなく、そのままの自分でいることは重要ですか?

うん、私は本当に自分のままだしね。私が何をやろうとしてるのか理解するのに時間がかかる人もいるんだけど、その理由のひとつは、たぶん私が「自分じゃない誰か」を演じるのが得意じゃないからだと思う。私って本当に普通だと思うし、それがある意味で、みんなが私に共感してくれる理由なのかなって。シンガーって、見てる側からすると「自分とは全然違う人生を送ってる」って思われがちだけど、私はむしろ普通過ぎて、みんなが驚いちゃうくらいだから(笑)。

私としては、ピンクパンサレスは今の時代におけるオルタナティブなポップスター像を提示していると思いますが、あなたは自分が何をリプレゼントする存在でありたいと考えていますか?

私としても、オルタナティブなポップスターみたいな存在を表現したいって思ってる。だって、私って一部の人からすると、そもそも「ポップスターっぽく見えない」タイプだと思うし。だからこそ、「自分みたいな見た目の人間でも、何だってできるんだ」ってことを、みんなに伝えられたらかっこいいなって思う。

具体的に、どういう人たちに自分の音楽が届いてほしいと考えていますか?

たぶん同世代の人たちかな。特に、何かを作りたいと思ってる女の子たち。たとえば、自分でプロデュースしたいのに「自分には無理だ」って感じてたり、どうやったらいいか分からない子って、たくさんいると思うんだよね。音楽業界って今でもすごく男性中心だし。だから私は、10代で何か始めたいと思ってる女の子たちに向けて、「私ができたなら、あなたにもできる」っていう存在でいたい。特別なコネとか、大きなリソースがなくてもできるんだってことを伝えたいと思ってるの。

Read Full Article

次の記事を読む

VERDY & TEITO と語る“ポスト裏原”トーク | Interviews
ファッション

VERDY & TEITO と語る“ポスト裏原”トーク | Interviews

もし90年代にデザイナーとして活動していたとしたら、裏原の中心にいたであろう二人。VERDYとTEITOに、「裏原というカルチャーの記憶」と「これからの裏原感」について話を聞いた

サミュエル・ロスと HUBLOT が出したクロノグラフという答え | Interviews
ウォッチ

サミュエル・ロスと HUBLOT が出したクロノグラフという答え | Interviews

第4弾となる“ビッグ・バン ウニコ SR_A”の発表に際し、『Hypebeast』はオンラインインタビューを行った

ソックス&サンダルの原点を探る── Teva と90年代裏原カルチャー
フットウエア

ソックス&サンダルの原点を探る── Teva と90年代裏原カルチャー

Presented by Teva
渡辺真史が語る“違和感がスタイルになる瞬間”と最新作 Hurricane XLT3の現在地


“Primitive Mode” を体現する Omar Afridi の日本旗艦店とは | Interviews
ファッション

“Primitive Mode” を体現する Omar Afridi の日本旗艦店とは | Interviews

“A Drawing Room”という考え方に基づいた店舗デザイン

A.PRESSE が香港で限定ポップアップを開催
ファッション

A.PRESSE が香港で限定ポップアップを開催

『HBX』が手がける「Gallery HBX」とのコラボレーションで実現

Patta x Nike Air Max 1 “White/Hyper Crimson” が登場
フットウエア

Patta x Nike Air Max 1 “White/Hyper Crimson” が登場

ベースにはPure Platinumのレザーとメッシュを組み合わせ、通気性と洗練されたルックスを両立

PALACE SKATEBOARDS x EVISU によるコラボレーション第5弾が登場
ファッション

PALACE SKATEBOARDS x EVISU によるコラボレーション第5弾が登場

〈EVISU〉創立35周年を記念した全23型のアニバーサリーコレクション

タトゥーアーティスト TAPPEI による個展 “TAPPEI WORLD” が開催
アート

タトゥーアーティスト TAPPEI による個展 “TAPPEI WORLD” が開催

『渋谷PARCO』の『GALLERY X BY PARCO』にて4月10日(金)から4月20日(月)まで

DIESEL が2026年春夏シーズンのデニムコレクションを発表
ファッション

DIESEL が2026年春夏シーズンのデニムコレクションを発表

〈DIESEL〉ならではのアプローチを加えたプロダクトがラインアップ

2026年秋冬楽天ファッション・ウィーク東京におけるフットウェアのトレンドをチェック
フットウエア

2026年秋冬楽天ファッション・ウィーク東京におけるフットウェアのトレンドをチェック

足元から読み取る、東京の前線


Street Style : 楽天ファッション・ウィーク東京 2026年秋冬
ファッション

Street Style : 楽天ファッション・ウィーク東京 2026年秋冬

東京特有のファッション文脈を色濃く反映

欧州版 Nintendo Switch 2 でユーザー交換式バッテリー搭載か
ゲーム

欧州版 Nintendo Switch 2 でユーザー交換式バッテリー搭載か

新たな修理ルールへの対応とみられる

JJJJound x New Balance 475 の発売情報が解禁
フットウエア

JJJJound x New Balance 475 の発売情報が解禁

時代を超えて愛されるクラシックなランニングシューズを〈JJJJound〉がアップデート

DAIRIKU がブランド初のリミテッドストアを渋谷 PARCO にて開催
ファッション

DAIRIKU がブランド初のリミテッドストアを渋谷 PARCO にて開催

会期は3月25日(水)〜3月31日(火)まで

YOKE x foot the coacher による初のコラボモデルが登場
フットウエア

YOKE x foot the coacher による初のコラボモデルが登場

フランスのヴィンテージローファーをベースに再構築

Nujabes 設立の Tribe から Nieve and SoulChef 『Move It Along』リミックス版7インチレコードが発売
ミュージック

Nujabes 設立の Tribe から Nieve and SoulChef 『Move It Along』リミックス版7インチレコードが発売

2026年4月4日(土) に渋谷『Manhattan Records』にてリリース記念インストアライブを開催

More ▾
 
ニュースレターに登録して、“最新情報”を見逃さないようにしよう。