地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews

“俺らカルチャー”の核心を、リスタートオープン初日閉店後、すず、すず兄、コザら現場メンバーも含む総勢7名と語った

ファッション
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東京・北区王子に、不定期で開く店がある。『Dogs(ドッグス)』。いまやグローバルで活動の幅を広げるラッパー 千葉雄喜を中心に、地元の仲間たちが音楽とファッションを横断しながら営む場所だ。

千葉の多忙もあり、『Dogs』は2025年9月からしばらく休止していたが、2026年2月28日(土)、再始動を果たした。今回、新たにデザイナーの落合宏理、ファッションキュレーターの小木“Poggy”基史、スタイリストの髙橋ラムダが参画。千葉の言葉を借りれば、彼らは“洋服の師匠”であり、L.A.へ拠点を移した自身にとっては、最強の守護神のような存在だという。

再スタートに向け、メンバーはL.A.へ赴き、古着の買い付けを敢行。年代やブランドに縛られるのではなく、サイズ感や経年変化、わずかな歪さに宿る魅力を基準に選ばれた一点物が店内の中心を占める。そこには流行とは異なる時間軸が流れている。さらに、それらはそのまま並ぶのではなく、『Dogs』独自のカスタムが施される点も特徴だ。

原宿や渋谷のような中心地ではなく、王子から発信し続ける理由は何か。答えは驚くほどシンプルだ。「地元だから」。その言葉の軽さと重さのあいだに、『Dogs』の本質がある。

再始動初日の閉店後、オリジナルメンバーのコザ、すず、すず兄に加え、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダ、そしてL.A.から急遽ビデオ通話で参加した千葉雄喜を交え、総勢7名に話を聞いた。そこには、確かな温度があった。


いわゆる“服のプロ”ではないメンバーがノリやテンションで形にしていく
でも、その奥にちゃんとした魂がある

L.A.から千葉雄喜も取材にジョイン

地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews ドッグス

Hypebeast:Dogsは、単なる「ショップ」ではなかった気がしています。改めて千葉雄喜さんにとって、Dogsはどんな場所ですか?

千葉雄喜(以下、千葉):なんだろ、ん〜なんだろうなぁ。悪く言えば仲良しこよし。でも良く言えば、切磋琢磨する集団ですね。

さすがのワードセンスです。Dogsは原宿ではなく北区・王子にあります。王子で続けることは、東京のファッション構造に対するアンチテーゼでもあります?

千葉:アンチテーゼはまったくないですね。ただ地元だから。地元のみんなとやりたいから、地元に店を出した。それだけです。忙しくなって半年くらい動けていなかった時期もありましたけど、今回、改めて再始動っす。

落合宏理さん、小木“Poggy”基史さん、髙橋ラムダさんが参画することになった経緯は?

千葉:自分がL.A.に移住して、手伝えることが少なくなってしまって。落合さんとご飯を食べている時に「Dogsどうするの?」って話になったんです。「どうしようかと思ってるんですよ」って。その流れでお願いしました。落合さんはDogsの立ち上げ当初から知っているし、どういうコミュニティなのかも理解してくれていたので。

落合さんに加えて、Poggyさんと髙橋ラムダさんは、自分にとって“洋服の三師匠”。オープン前から知ってくれていた人たちなので、守護神みたいな存在ですね。

今回のメインはL.A.で買い付けた古着ですか?

千葉:はい。これも落合さんのアイデアです。自分がL.A.にいるなら、DogsでL.A.の古着を買い付けたらどう?って。もともと予約制だった頃は古着店だったので、原点回帰でもあります。

伝説と逸話──Dogsが“ただの店”ではなかった理由

地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews ドッグス

ここからは、Dogsのメンバーであるコザさん、すず兄さん、すずさんにもお話を聞きたいです。改めて、Dogsはシーンにどんな影響を与えたと思いますか?

コザ:千葉の愛車でもあった光岡自動車のラセードを売ったことはまず伝説かもしれません。ファッションの現場で車を売るなんてないですよね。ラセードばっかり、3台売ったんですよ。服屋なのに車を売りました。

すず:2021年に開催した『Dogs Aoyama』のポップアップイベントの時に販売したんだよね。あの時は2日間で100人くらい並びました。

すず兄:後輩が1台買って、沖縄で乗っていますね。ほかのラセードを買ってくれたコも、まだ乗ってくれていて、たまにDogsに横づけして買い物に来てくれます。

千葉:ラセードを買ってくれたひとりに“スター”ってあだ名の子がいて、その車でナンパした子と付き合って、そのままDogsに来てました(笑)。

コザ:完全にスターっすね。

Nirvanaの『In Utero』ツアーロンTにプリントを施した企画も話題だったと聞きます。あれはどう生まれたのですか?

千葉:ありましたね。Nirvanaの『In Utero』のツアーロンT。オリジナルは10万、20万で取引されるようなヴィンテージです。その古着に、さらにプリントを重ねて販売しました。今思えば、なかなか気合いのいることをやっていましたね(笑)。

すず:あの企画は本当に楽しかったです。

すず兄:最初は古着のセレクトショップとして始まりましたが、だんだん「これをやりたい」「あれも試したい」というアイデアを、そのまま形にしていくようになって。その流れで古着のカスタムも自然と生まれました。自分たちの感覚としては、“古着屋”というよりも、古着を起点にいろいろなものと交差していく場所。TogaやFACETASMのようなブランドとも関わりながら、枠を広げていった感覚があります。

新章のはじまり──三師匠が加わった理由

地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews ドッグス

今回、新たにDogsのメンバーに加わった落合宏理さん、小木“Poggy”基史さん、髙橋ラムダさん。それぞれが参画を決意した理由を教えてください。

落合宏理(以下、落合):千葉くんだけでなく、もともとDogsのチームメンバーとは長い付き合いで、友人のような関係でした。彼らが積み重ねてきた時間をずっと近くで見てきた中で、「新しいDogsを見せるタイミング」が来ていると感じたんです。そのとき自分たちに何ができるのか、みんなで自然と話すようになって。Dogsをまた違うかたちで提示することは、きっと自分たちにとっても面白いし、一緒に“遊べる”はずだと。肩肘を張るというより、気楽なリズムの中で参加させてもらっている感覚ですね。

小木“Poggy”基史(以下、小木):僕も声をかけてもらって、その後メンバーと食事をしたんですが、そのときにバンドもやっているすず兄が話してくれた言葉が印象的でした。「お客さんがたくさん来る日も好きだけど、少ない日でも本気で店をやりたい。バンドでお客さんがゼロでも全力で演奏するのと同じ気持ちで、店にも向き合いたい」と。こんなに熱い人がいるんだと感じましたし、こういう姿勢を持った人たちと一緒に何かをやりたいと思った。それが大きな理由です。

髙橋ラムダ(以下、髙橋):僕はサポートという立場でDogsに顔を出すことが多くて、みんなの作業を見ているうちに、だんだん黙っていられなくなったんです(笑)。「それは違う」「こうしたほうがいい」と、つい口を出してしまうようになって。ああしろ、こうしろと言っているうちに、自然と自分も当事者として関わりたくなっていました。流れの中で、気づいたら参加していた、という感じです。

「輪郭を色濃くする」とは何か

地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews ドッグス

再始動を告げるリリース文には「輪郭を色濃くする」という言葉がありました。今回の再始動で、変わったことと変わらないことは何でしょうか?

すず:変わった……変わらなかった……。うーん、めちゃくちゃ大きく変わった、という感じではないですよね。

コザ:そうだね。ただ、昔より目利きは確実に良くなっていると思う。今回は初めてみんなでL.A.に行って、自分たちで倉庫を回って、自分たちの目で選んできた。誰かに教えてもらうんじゃなくて、「自分たちのかっこいい」をちゃんと確かめながら買い付けた感じはありますね。

Dogsの“コア”は何だと思いますか?

コザ:やっぱり“楽しさ”じゃないですか。正直、金儲けしたいっていう気持ちは1ミリもないよね。

すず兄:そうだね。でも“楽しい”を本気でやるのは、実はすごく大変なんですよ。楽しいところに辿り着くまでがしんどい。しかもその基準が毎回上がっていく。それをずっと追求している感じです。

すず:その先にある“楽しい”が見えているから、また頑張れるんですよね。でも、回を重ねるごとにハードルは上がっていく。

Dogsは、服だけを売っている場所ではない。空気やカルチャー、考え方も含めて共有しようとしているのでしょうか?

コザ:俺は“かっこいい”を共有したいだけですね。自分たちが本当にかっこいいと思ったものを集めている。それをわかってほしいし、もし俺たちをかっこいいと思ってくれたら、自然と欲しくなるじゃないですか。店の雰囲気もそうだし、古着の選び方もそう。誰か一人が全部決めているわけじゃなく、みんなの感覚が混ざっている感じっす。

千葉:このくだり、僕のコメントには「(笑)」を入れておいてください。

一同:(爆笑)

コザ:かっこつけてないからな(笑)。

“俺らカルチャー”という基準

アメリカ古着が中心ですが、ベースにあるのはアメリカンカルチャーなのでしょうか?

コザ:いや、そこは特に意識していないですね。

千葉:“俺らカルチャー”っすね。

落合:僕らは、まずDogsのメンバーが楽しんでいる姿を見たかったんです。だったら「L.A.に行って、自分たちで買い付けてみたら?」と提案しました。千葉くんもL.A.にいるし、現地で楽しみながら選べばいい。その延長線上で服が選ばれればいいな、という感覚でした。でも実際に蓋を開けてみたら、501XXみたいなとんでもないヴィンテージまで買い付けてきていて。正直、驚きました。

初めての買い付けとは思えないラインアップでした。良いディーラーを知っていたのですか?

すず:いや、Googleマップで辿り着きました(笑)。4日間しかなかったので、ほとんど寝ずに動いていましたね。

すず兄:楽しくて寝られなかった、っていうのもありますけどね。

Dogsにとって“良い古着”の基準は?

コザ:シンプルに、自分たちがかっこいいと思ったものです。

千葉:“俺ららしい”もの。

すず兄:あと、見たことないもの。ぱっと見て「これヤバくない?」ってなるような。たとえば、毛玉がネップみたいに飛び出しているスウェット。普通ならマイナスに見えるかもしれないけど、それが逆にかっこいいと思った。毛玉スウェットシリーズ、みたいな感じですね。

コザ:勝手にシリーズ化してますけど(笑)。でも人工的に加工したものじゃなくて、着込まれて自然にそうなった偶然の産物なんです。

小木:毛玉のスウェットを5着も揃えて買い付けるって、なかなかないですよ。普通の古着屋さんでも見たことないです。

王子発のリアリティ──ローカルとグローバルのあいだ

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落合さんはハイファッションとストリートの両方を横断してきた存在です。いわば世界的なデザイナーという立場から見て、Dogsはどのように映っていますか?

落合:想像以上に“地元の幼なじみ”の集まりなんですよね。それでいて、ここまで一つのものを作り続けている。そういうチームは、なかなかないと思います。そこが純粋にかっこいい。日本には、そういう在り方に憧れる人がすごく多いと思うし、僕ら自身もどこかで憧れている部分がある。Dogsは、それを本当に体現しているんですよね。東京・王子という場所から生まれて、その地に根ざしたまま、すごく丁寧に続けている。その姿勢が魅力的です。

小木:Dogsでしかできない服作りって、ありますよね。

落合:いわゆる“服のプロ”ではないメンバーが、ノリやテンションで形にしていく。でも、その奥にちゃんとした魂がある。それは、外から見ると音楽を作っているようにも見えるし、ただ雑談しているようにも見えるかもしれない。でも、その積み重ねの中に、独特のエネルギーがある。今はまだ言語化しきれていないかもしれないけれど、いずれ“Dogsらしさ”として輪郭がはっきりしてくるはず。僕らは、その芽をすでに感じている。そのテイストを少しでも広げられたら、と思って参加しています。

髙橋:千葉くんはどうしても目立つ存在ですけど、他のスタッフもそれぞれ強い個性がある。いい意味で、全員がキャラクターを持っているんです。
地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews ドッグス

小木さんは東京とグローバルの両方を見てきた立場ですが、その視点から見て王子発のDogsのローカル性はどう映っていますか?

小木:2010年頃にフランスでPIGALLEをバイイングさせてもらった時も、彼らは自分たちが生まれ育った場所に強いこだわりを持っていました。その“場所への誇り”は、やっぱり大事だと思うんです。千葉くんは北区(王子)から世界に向けて音楽を発信している。Dogsも同じように、北区からファッションを発信していく存在になる可能性があると思います。

すず:もしかしたら、原宿や渋谷では足りないものが、ここにはあるのかもしれないですよね。

小木:これからも北区発でモノづくりしていくと思いますし、その視点自体が面白いと感じています。

髙橋:僕はルック制作や店舗のアドバイスという形で関わっていますが、ポギーの言うように、Dogsを見ているとPIGALLEを思い出します。実はPIGALLEのパリコレのスタイリングを担当していたことがあるんですが、当時の彼らも、ある意味“素人集団”のような勢いでした。
ボタンが取れたから針と糸を探したんですが、現場になかったりする。「これでショーやるの?」というテンション(笑)。でも、地元の仲間やネットワーク、助け合いの力で、最終的には当時のパリコレの話題をさらった。

小木:本当にかっこよかったよね。

髙橋:しかもフロントローには地元の友達を座らせる。そのスタンスがパンクで、地元愛が強くて。Dogsにも、どこか通じるものを感じています。

人間を写す──ヴィジュアルに込めた意図

髙橋ラムダさんは、今回の再始動にあたってヴィジュアルも手がけています。コンセプトについて教えてください。

髙橋:実は裏のコンセプトとして、モデルとカメラマンを一対一にして撮影することを意識していました。ときには後ろから少し驚かせたり、風を当てたりしながら、その人の“素の人間像”をえぐり出すようなポートレートにしたいと思っていて。まずはメンバーひとりひとりのキャラクターが伝わること。それと同時に、「楽しんで洋服を着ている」というテンションが写真から感じられたらいいな、と。作り込んだビジュアルというより、その場の空気や熱量を写したかったんです。

再始動初日の空気

地元でやるという選択──Dogs 再始動の真意を千葉雄喜、落合宏理、小木“Poggy”基史、髙橋ラムダらメンバーに聞く | Interviews ドッグス

本日、再始動初日の営業を終えたばかりですが、率直な感想を教えてください。

すず:準備にはかなり時間をかけてきました。並びも少しはありましたけど、意気込みほど大きく変わった感じはなくて。自分たちはいつも通り、ベストを尽くすだけ、という感覚でした。

コザ:お客さんは喜んでくれていましたね。雰囲気もいつも通りアットホーム。メンバーはそれぞれ別の仕事もしているので、営業は土日中心になりますけど、その限られた時間でベストを出したいと思っています。

最後に千葉さん、今後のDogsについて一言お願いします。

千葉:うーん……落合さん、お願いします(笑)。

落合:俺、けっこう話したよ(笑)。

一同:(爆笑)

落合:そうですね。僕らはこれを“仕事”だとはあまり思っていなくて、ただ純粋に洋服が好きなんです。それに、Dogsのメンバーもそうだし、小木さんやラムダさんのように本当にリスペクトできる人たちと一緒に、こうして服の話をできる時間がある。それが何より楽しい。
モードとかストリートとか、そういうカテゴリーを更新するというより、“Dogsらしい”コミュニティがここから自然に広がっていくんじゃないかな、という感覚があります。その先に何があるのかはまだわからないけれど、確実にワクワクはしていますね。

Dogs
住所:東京都北区豊島1-1-11 柴田ビル101
営業時間:11:00〜20:00
オープン予定日:3月7日(土)、3月8日(日)以降は、公式『Instagram』をチェックを

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