村上隆と細川雄太の目指す “アートとファッションの調和” ── mononoke・made が始動 | Interviews

創造的な対話から導き出された“ファッション”と“アート”を融合した新プロジェクトに迫る

ファッション
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日本を拠点に国際的に活躍するアーティスト・村上隆と、〈READYMADE(レディメイド)〉および〈©SAINT Mxxxxxx(セントマイケル)〉のデザイナー 細川雄太が新たなプロジェクト〈mononoke・made(モノノケ・メイド)〉を今春より始動。両者がタッグを組んで制作したアパレルコレクションは、2026年3月より同ブランドの正規取扱店舗および『Tonari no Zingaro』にて販売をスタートする。

二人の出会いは、2018年に村上のアートワークを用いた服を細川が制作したことをきっかけに交流が始まる。以降、クリエイターとして互いへの尊敬とともに対話を重ね、2021年には村上が細川をアーティストとして招聘し、自身の主宰する『Kaikai Kiki Gallery(カイカイキキギャラリー)』にて初個展 “-YES-”を開催。こうして時間をかけて培われた両者の信頼関係により、“ファッション”と“アート”が融合する新プロジェクト〈mononoke・made〉が生まれたという。

本プロジェクトはありふれたコラボレーションではなく、両者が長年にわたり築いてきた確かな信頼関係と、創作における本質的な対話の積み重ねによって導き出された、ひとつの“到達点”と位置付けられる。また、〈mononoke・made〉は「カイカイキキ」が初めて展開するオリジナル・ブランドであり、同時に細川にとってはこれまで培ってきたモノづくりの哲学と経験を余すことなく注ぎ込んだ“集大成”でもある。

記念すべきファーストコレクションでは、Tシャツやフーディといったアパレルを中心に、ベルト、ウォレットチェーンなどのアクセサリーまで多彩なラインアップが揃う。特筆すべきは、村上の作品の中から、誰もが知る“お花”や“DOB”に留まらず、これまで一度もアパレルのプロダクトとして世に出ることのなかったアートワークを多数採用していること。これらの貴重なアート作品に対し、細川が素材の選定や構造、縫製、加工の細部に至るまで徹底的に向き合い、幾度にもわたる試作を重ねながら、立体的なプロダクトへと昇華。芸術作品としての価値と、日常で身に纏うプロダクトとしての完成度を兼ね備えるコレクションが誕生した。

コレクションのビジュアルは、パンク・ニューウェーブ時代のミュージシャンや第一線で活躍するアーティスト/俳優などの著名人をカメラに収めてきた写真家・ハービー山口氏が撮影を担当。細川たっての希望で実現した今回の撮影はカイカイキキ三芳スタジオを舞台に行われ、〈mononoke・made〉のコンセプトとハービー氏の美意識が融合した唯一無二の仕上がりに。

〈mononoke・made〉の本格ローンチを前に、『Hypebeast』が首謀者の二人、そしてハービー山口氏へのインタビューを敢行。プロジェクトの成り立ちから制作のプロセス、コレクションの背景を語ってもらった。


僕が本格的に“ファッション”としてのブランドを立ち上げるのは、mononoke・made が初めてです ── 村上隆

Hypebeast:まずは mononoke・made を立ち上げることになった経緯を教えてください。

村上隆(以下、M):2024年の京都市京セラ美術館での展覧会 “村上隆 もののけ 京都”のオープニングに細川さんが来てくださったんです。その会場で立ち話をしている中で、「やりましょうよ」と僕が言ったら、「そうですね」と返してくださって、そこから自然に始まったような気がします。

細川雄太(以下、H):2年前に、村上さんのほうから「何か洋服を作ってみませんか」と声をかけてもらったことがきっかけです。明確に「この日からスタートした」というより、自然な流れの中で動き出した感覚に近いです。

mononoke・made は、カイカイキキ初のオリジナルブランドです。これまで数多くの協働を通してファッションの世界と関わってきた村上さんが、このタイミングで本格的にブランドを始めようと思ったのはなぜですか? また、そのパートナーに細川さんを指名した理由を教えてください。

M:僕がブランドをやりたいと思ったというよりは、“(僕と)細川さんとのブランド”というところに意味があると思っています。中野にあるお店『Tonari no Zingaro』ではTシャツやカバンなどは作っていますが、本格的に“ファッション”としてのブランドを立ち上げるのは初めてだったので、細川さんのナビゲーションで作らせていただいています。

mononoke・made は構想からコレクションの完成に至るまで約2年の歳月を費やしたそうですね。ローンチまで時間をかけた(かかってしまった)理由を教えてください。また、構想段階ではどのような議論を重ねましたか?

M:2025年に“ローズ・セラヴィ さりながら、死ぬのはいつも他人なり MNNK MADE”という曲をJP THE WAVY(ジェイピー ザ ウェイビー)さんと作った際に、そのプロモーションビデオに細川さんのアイデアを入れていただいて。その時にお互い、アートのこと ── 特にマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)との関係性、デュシャンの問題意識といった事を話し合ったような気がします。

H:お互いにスケジュールがなかなか合わなかったという現実的な理由もあるのですが、それ以上にアイデアやコンセプトが本当に合致するポイントを探し続けていたことが大きいです。何度も対話を重ね、納得のできるモノが完成するまで何度も試作を繰り返しました。結果的に2年ほどかかってしまった、という感覚ですね。

mononoke・made のコンセプトを教えてください。また、mononoke・made というブランド名には、「日本の文化・精神性を世界に向けて発信する」という意味合いが込められているように感じられます。村上さんにとって、「モノノケ」という言葉はどのような概念と結びついていますか?

M:コンセプトは“身に纏うアート”ですが、それを強く打ち出すというより、自然にそうなっている状態を目指しました。「モノノケ」という言葉は、“もののけ 京都”の展覧会の会場で決まりました。日本の中で、目に見えないけれど確かに存在しているもの、そういった感覚が含まれている言葉だと思っています。

H:mononoke・madeは、マルセル・デュシャンの提唱した「レディ・メイド(Readymade)」がコンセプトになっているので、“既製の洋服にアートを重ねる”という考え方からスタートしています。

洋服自体が1点モノのアートになるようなイメージで製作しました ── 細川雄太

過去のブランドやデザイナーとのコラボレーションと、今回の mononoke・made では、村上さんのファッションに対するアプローチはどのように異なっているのでしょうか?

M:これまではブランド側のフォーマットがあって、その中に僕の図像を入れていく形が多かったですが、今回は細川さんのナビゲーションで作っているので、全くアプローチが違います。細川さんがベースを決めて、その上で僕がアプルーブを出すという体制ですが、今のところ僕が却下したことは一度もありません。

今回、これまで一度もアパレルのプロダクトとして世に出ることのなかった貴重なアートワークを解禁したのは何故でしょう? それはある種の“ルール破り”の意識があったのでしょうか。

M:細川さんが選ばれた図像については、その風体や全体のバランスを見て自然に決まっていきました。特別に“ルール破り”という意識はなく、プロダクトとして成立するか否かが大事だと思っています。

村上さんのアートワークをプロダクトに落とし込む際に、その解釈(手法、素材の選定等)は完全に細川さんに委ねられていたのでしょうか? もしくは、村上さんから具体的なアイデアやアドバイスはありましたか? コレクションの制作プロセスを教えてくだだけますか。

H:基本的には、全て僕にお任せしてもらっています。洋服に村上さんのアートワークを乗せて、その上から加工など色々な法作業の行程を加えて、アートに近づけられるように考えながら洋服作りをしていきました。洋服自体が1点モノのアートになるようなイメージで製作しました。

素材・構造・加工に至るまで徹底的に向き合ったとのことですが、特に苦労した点、こだわった点を具体的に教えてください。

H:アートと洋服の調和を目指しました。アートがただ乗っているだけにならないように、そこはかなりこだわりました。また、ヴィンテージ加工を施しているアイテムも多いのですが、いかにも“加工しました”という見え方にはしたくなくて。実際に長く着込まれてできたような、自然な朽ち方になるように調整しています。嘘っぽくならないように、細かい部分まで気を配りました。

完成したコレクションを見て、村上さんの率直な感想を聞かせてください。

M:かっこいい!

今回のコレクションの中で、それぞれが特にお気に入りのアイテムとその理由を教えてください。

M:サスペンダーと半パンとTシャツの組み合わせです。僕が夏場に埼玉の現場で着ている格好をモデルが着てランウェイを歩くというのは、ユーモアがあって、面白いと思いました。

H:村上さんのアイコンでもあるサスペンダーですね。それを贅沢にシルバー925で作ったところが、個人的にはいちばん気に入っています。

今回のビジュアルの撮影をハービー・山口氏に依頼した理由を教えてください。

H:僕がもともとハービー・山口さんのファンで、特にThe Clash(ザ・クラッシュ)のジョー・ストラマー(Joe Strummer)を撮影した写真が大好きだったんです。知人のアートギャラリーの方にご縁をつないでいただき、今回念願叶ってビジュアルの撮影をお願いすることができました。

mononoke・made プロジェクト今後の展望、次回コレクションの予定等、明かせる範囲で教えてください。

M:ジュエリーはやってみたいと思っています。あとは、パリのファッションウィークの時に、ロサンゼルスの『H Lorenzo(H.ロレンツォ)』や、『Maxfield(マックスフィールド)』のディレクターのサラさん(Sarah Stewart)といった方々が来てくれて、とても有意義なお話をさせていただきました。サラさんとは、また先日もお話しさせていただいたりして、何か大きな展開ができるといいなと思っています。

H:まだ具体的な予定は決まっていませんが、いろいろと構想は進めています。mononoke・madeは、いわゆるファッションブランドのシーズンサイクルに合わせて動くというよりも、自分たちの中で自然に生まれたアイデアを少しずつ積み重ねていく感覚に近いんです。シーズンに左右されず、できるだけ普遍的なものをつくりたいと思っているので、タイミングありきではなく、自分たちが納得できた段階で形にしていくプロジェクトになると思います。

村上隆(むらかみ たかし)
アーティスト。1962年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。有限会社カイカイキキ代表。2000年、伝統的日本美術とアニメ・マンガの平面性を接続し、日本社会の在り様にも言及した現代視覚文化の概念「スーパーフラット」を提唱。自身の個展 “©MURAKAMI”(2007-2009年)は、ロサンゼルス現代美術館を含む欧米4都市を巡回。ヴェルサイユ宮殿(フランス、2010年)、アルリワク展示場(ドーハ、2012年)、森美術館(2015年)、ガラージ現代美術館(モスクワ、2017年)、大館(香港、2019年)、ブロード美術館(ロサンゼルス、2022年)、アジア美術館(サンフランシスコ、2023年)京都市京セラ美術館(京都、2024年)など、世界中で展覧会を開催。2025年は20年ぶりの Louis Vuitton とのコラボレーションも話題となった。2026年はロサンゼルスに続き、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(シドニー)での個展を控えている。

細川雄太(ほそかわ ゆうた)
READYMADE / ©SAINT Mxxxxxx デザイナー。1982年生まれ、大阪府出身。2013年に READYMADE のバッグを発表。そのバッグが米ロサンゼルスのセレクトショップ、Maxfield で発売されたことをきっかけにアメリカで知名度を上げる。A BATHING APEⓇ や、Fear of God、Off-White™ c/o VIRGIL ABLOH といった数々のコラボレーションを実現。過去には、トラヴィス・スコットの衣装製作やアルバムジャケットデザインも手掛けるなど、活動は多岐にわたる。近年では服飾だけにとどまらず、ファニチャーやアートの分野にも進出し反響を呼んでおり、2021年には Kaikai Kiki Gallery にて、初の個展を開催。また、国内アーティストのアルバムジャケットやロゴ、オフィシャルグッズへのデザイン提供、衣装デザインにも取り組んでおり、ますます活動の幅を広げている。


Interview with Herbie Yamaguchi

monono・made は現代美術家の村上隆さんとファッションデザイナー 細川雄太さんのプロジェクトですが、 以前から二人との交流や接点はありましたか? また、 今回のオファーを引き受けた理由を教えてください。

以前からの交流はありませんでした。世界的に活躍している方々からの刺激が私には貴重なものですから、二つ返事でお引き受け致しました。

monono・made のプロダクトを実際に見た/触れた感想を聞かせてください。

やはりオリジナリティに富んだデザインに感心しました。

今回のビジュアルについて、村上さんもしくは細川さんから何か具体的な指示やリクエストはありましたか? 特にない場合、ハービーさんはどのようなイメージで撮影しましたか?

特にご指示はありませんでした。周囲の環境に溶け込む様に自然体を狙いました。

今回の撮影を終えて、村上さん、細川さんそれぞれの印象を教えてください。また、お二人へのメッセージもお願いします。

村上さんの明るく材敵な笑顔を見せて頂き、安心しました。それに対し細川さんはクールな印象で、内に潜んだパワーが凄いと感じました。

今回のようなファッションシューティング、ミュージシャンなどの著名人の撮影、ドキュメンタリー写真など、シチュエーションごとで被写体に対峙する意識に違いはありますか? また、ハービーさんが撮影の際に常に心掛けていることがあれば教えてください。

被写体がどの様な立場の方であっても、その方の飾らぬ材の部分を引き出したいと思っています。そしていつも心掛けていることは、その方の明日の幸せを祈ってシャッターを切ることです。

これまでハービーさんが撮影してきた被写体の中で、特に印象に残っている人物は誰でしょうか? また、その人物について撮影時のエピソードがあれば教えてください。

1981年、ロンドンに住んでいた頃、地下鉄の駅でパンクロックバンド The Clashのジョー・ストラマーを見かけました。思い切って声をかけ、撮影の許諾を得ました。数カットを撮影させて頂いた後、彼は私に「撮りたいものは全て撮るんだ!それがパンクってことさ!!」と言って去っていきました。とても勇気を頂きました。また、つい先週のことですが、彼の奥さんから「あなたの撮ったジョーは最高よ」というメールを頂きました。

ハービー・山口(はーびー・やまぐち)
写真家、1950年東京都出身。23歳から10年間ロンドンに在住、現地の日本人劇団での役者を経て写真家になる。折からのパンクロックの最盛期に触れ洗礼を受ける。幼児期に長く患ったカリエスを克服したことで、「生きる希望」を写真のテーマにしている。その優しく清楚な作風は幅広い年代から支持されている。写真の他、エッセイ執筆、ラジオ番組、さらにはギタリスト布袋寅泰には数曲の歌詞を提供。2011年度日本写真協会賞作家賞受賞。大阪芸術大学、九州産業大学の客員教授を経て、2024年より日本写真芸術専門学校校長に就任。個展・著作多数。作家名の“ハービー”は敬愛するジャズフルート奏者 ハービー・マンより。
公式サイト

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