Phoebe Philo が設立からわずか2年で売上高4,000万ドルを突破
詩的かつミニマルな美学が時代と呼応した結果
フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の手掛けるブランド〈Phoebe Philo〉が、設立からわずか2年で売上高4,000万ドルを突破したことが明らかになった。12月30日(現地時間)付で提出された英国企業登記所の書類によるもので、実店舗やランウェイショーを持たない体制で達成されたこの数字は、業界内でも大きな注目を集めている。
2000年代に〈Chloé〉、続いて〈CELINE〉のクリエイティブ・ディレクターを務めたファイロは、ミニマルで知的なデザインによりカルト的な支持を獲得。現在もなお、彼女が手がけた当時のアイテムはアーカイブ市場で高い価値を保ち続けている。2017年に〈CELINE〉を退任して以降、その去就を巡る憶測が業界内外で飛び交う中、2021年2月に満を持して自身のブランドを発表した。
ブランドはすぐに大量生産や派手な発表に舵を切ることはなく、2023年第4四半期にようやくデビューコレクション「A」を発表。その後も現在に至るまで実店舗は構えず、2024年に『Bergdorf Goodman』『DOVER STREET MARKET』『Galeries Lafayette』といった厳選された小売店で卸売りを開始した。
〈Chloé(クロエ)〉や〈CELINE(セリーヌ)〉時代を想起させるノスタルジックなムードを纏いながらも、ファイロの成功は決して偶然ではない。ファッション業界において女性デザイナーがクリエイティブ・ディレクターを務める割合はいまだ12%程度にとどまる一方、ファッションを学ぶ学生の約74%は女性だとされている。女性が何を求めているのかを深く理解し、それをデザインとして昇華できる存在であることが、彼女の圧倒的な支持につながっているのかもしれない。
さらに、ファイロの影響力は女性層にとどまらない。Ye(旧カニエ・ウェスト)が2011年のコーチェラで彼女が手がけた〈CELINE〉のブラウスを着用したことや、A$AP Fergの楽曲『Jet Lag』に登場する“Céline bag”のリリック、そして2025年にA$AP Rockyがファイロ時代の〈CELINE〉のアーカイブを全身にまとって登場したことなど、ヒップホップシーンとの結びつきも象徴的だ。
こうした背景をもとに、〈Chloé〉や〈CELINE〉時代の評価以上に彼女の名を冠したブランドの価値が上がってきていることが目にみえる。オルセン姉妹による〈THE ROW(ザ・ロウ)〉や、マチュー・ブレイジー以前からの女性的視点を受け継ぐ〈Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)〉など、女性主導のブランドが高い評価を得る現在の潮流の中で、彼女の詩的かつミニマルな美学はクワイエット・ラグジュアリーという時代性とも見事に呼応している。「LVMH」からの少数株主投資や、取締役会にデルフィーヌ・アルノーを迎えている点も、ブランドに安定した基盤を与えている要因だろう。
洗練されたものづくりと、フィービー・ファイロならではの確かな審美眼は、クリエイティブ・ディレクターとして積み重ねてきたキャリアだけでなく、〈Phoebe Philo〉が築き上げてきた独自の世界観にも色濃く反映されている。同ブランドは、老舗メゾンで活躍してきたデザイナーが、自身の美学を純粋に表現するブランドへと移行する難しさを乗り越えた、数少ない成功例のひとつだ。変化のスピードが速いファッション業界において、彼女が意図的に形作ってきたレガシーは、今後さらに存在感を高めていくだろう。
















