Kvi Baba 初の武道館公演で見せたスペシャルで等身大なラッパー像

終始ハッピーでポジティブな空間となった彼らしい1時間半をプレイバック

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大阪府出身のラッパー/シンガーソングライター Kvi Baba(クヴィ・ババ)が、8月28日(木)に『日本武道館』でワンマンライブ「Kvi baba Shout out to Jesus」を実施した。近年の日本のラッパーにとって、この由緒正しいヴェニューでワンマンライブを開催することはキャリアの指標のひとつとなっている。Kvi Babaは去る1月29日(水)、『Zepp Diver City』での「Kvi Baba 2nd One Man Live Tour 2025 “Friends, Family, Fans & God”」東京公演で、“City Love City Love City Love”の「2番出⼝を出た所で逢おう、駅は九段下で」というリリックを、「2番出⼝を出た所で逢おう、武道館やっからよ!」と変えて本公演を発表した。

ステージにはZeppツアーから引き続き、ドラム、キーボード、ギターの3人のバンドメンバーが立ち、後ろに大型スクリーン、両サイドには縁にネオンをあしらった十字架型のスクリーンが設置された。客電が消えてバンドが“Intro -Shout Out to Jesus-”を演奏する中、Kvi Babaが白Tに赤いショートパンツという出たちでステージに登場し、“I Like It” “To Man Nai”とポジティブな2曲を歌った。Kvi Babaは「ついに来たね、この日が。ひとりで来た人も大丈夫だよ。みんな優しくね。愛でいこう」とメッセージを送る。そして、Kvi Babaは自身の内面が現在の心境に変化していく過程をリリックに落とし込んだ“No Cloud” “Baby Come Back”を歌った。

“Mr. U”ではキャッチーなフックを観客と一緒に合唱すると、idomが登場してセクシーな声でヴァースを歌う。続いて、SALUも登場。オートチューンがかかったラップでフリーなフロウを聴かせた。3人は武道館の広いステージを左右大きく使ってパフォーマンスし、それに応えて観客もハンズアップでステージにエネルギーを送った。曲が終わると、Kvi Babaはidomと抱擁。「idomはほんとにいいやつなんだよ。本当に優しくて、1番近くにいてサポートしてくれる。もはや家族以上かもしれない。でもSALUくんも忘れられないくらいすごくサポートしてくれてるな」と語る。そしてEP『19』に収録された“A Bright”をエモーショナルな赤いレーザー演出の中で一緒に歌った。SALUは「Big shout out to Jesus, Big shout out to Genius. それからBig shout out to みーんなっす」と素敵なシャウトアウトを残してステージをあとにした。

“Fuck U & Love U”は足元から天井に向かってダークブルーのスポットが照らす中、アコースティックギター1本でフルコーラスを観客と一緒に大合唱する。Kvi Babaは何度も「ありがとう」と言いながら、“Fight Song”へ。バンド演奏に合わせて、背景スクリーンにはJUN INAGAWAが描いたアニメーションとリリックが映し出され、武道館全体が一体となって、自己肯定という楽曲に込められたメッセージを体現した。そして迷いと祈りがテーマの“Planted in Problem”で後半はバンドのダイナミックな演奏で盛り上げた。この間、Kvi Babaは一旦ステージからはけて、ブラックを基調にした衣装に着替えて軽快なグルーヴの“Life Interlude”を歌った。

Kvi Babaが「みんな、大事な人と過ごしてね」とコメントして“Last First Forever”のイントロが流れるなか、ステージ上手からJ.Rio、下手からCherishがステージイン。J.Rioの圧倒的な声量とCherishのキュートな歌声で可愛らしいリリックの世界観に彩を添えた。「JとCherishは今19と20歳。僕が初めてZORNくんに武道館に立たせてもらったのがそのぐらいの歳だったんです」と話したあと、過去の自分について話し始めた。「みんな昔の僕がどんな感じだったか知らないでしょ? NORIKIYOくんに今にも消えちゃいそうだねって言われたんだから」と笑いながら回顧した。Kvi Babaは今の自身のほうが好きで、今が一番幸せだと明かした流れから、“Toge Ni Bara”“Tombi” “Tear Wave”という過去の自分の内面にフォーカスした曲を、乾いたバンドサウンドで歌った。特に“Toge Ni Bara”の“今なら仇も恩で返す ネガティヴがくれたポジティヴは目から何かが溢れかける 温かな涙がほおをかける”という歌詞が感動的に響いた。

Kvi Babaは涙ぐんだ声で「(Tombiを歌うと)いろんなことを思い出すんですよね。でも僕はいろんなことがあった中でただただ愛されてきたな、と思える人生です。……武道館って苦労してきた人、頑張ってきた人が誇らしげに立つステージだと思うんだよ。そこにドラマがあったり、シナリオがあったり。みんなそういうの好きでしょ? 僕も好きだし。でも僕はここに立っていても全然自分を誇れない。良いことしたわけでもないし。でもここに立てているということは、ただただ愛されてきたんだなって思うんです。みんなありがとう。僕のことを受け入れてくれてありがとう。僕も(みんなを)受け入れるよ。何もない僕に何かくれたのはいろんな人がいるかもしれない。僕のために祈ってくれてたクリスチャンたちの人たちとか。僕は聖書を蹴ったこともあるのに。でも今はShout out to Jesusだよ。でもそれは僕がすごいからじゃなくて、神様がすごいから。僕は“愛される理由がない”と思っていたけど、神様は僕を愛してくれてる。みんなに対しても一緒だよ」とクリスチャンとしての心情を吐露した。そして“愛槌”のイントロが流れると、観客は自然と“愛槌”のフックを歌い始める。すでに観客はKvi Babaの世界観の中に引き込まれていた。その後、自らステージ中央に座り、観客も着席させた。そこで半年前に祖母が亡くなり、命や生き方について考えるようになったと明かした。「僕はもうおばあちゃんにメッセージに伝えることはできないけど、ここにいる1万人の人たちにはメッセージを伝えることができる。僕はみんなのために歌うよ」と“二つ目の家族”を、声を詰まらせながらも届けた。

何度も自己嫌悪で眠れない夜を経験したが、観客の声援を聞くことで自分を愛することができるようになったと告白して“Love Myself”を歌い始める。2ヴァース目にはAKLOが登場。フックの大合唱の中、3ヴァース目に突入するとKEIJUがイン。場内には悲鳴のような歓喜の声がこだました。凄まじい多幸感の中で、自己肯定のメッセージが浸透していくようだった。このトリオでの“Too Bad Day But…”は火柱の演出が加わった。AKLOを送り出した後、Kvi BabaとKEIJUで“Back Seat”をプレイした。楽曲はもちろん、ライブでも何度も共演している2人。Kvi Babaが「KEIJUくんは僕が弱い人間だと理解していて、何かあるたびに“大丈夫か”と言ってくれる」とエピソードを話すと場内がどよめいた。さらに「KEIJUくんは僕が知ってる中で、トップランクのいい男で。沖縄に連れて行ってくれたり、長い時間を一緒にすごしたんですけど、今日この会場に本当のお兄さんが来ているけど、KEIJUくんも本当のお兄さんだと思うことが多くて。……てことは、僕ら家族で良いですよね?」と話し、KEIJUが「じゃあここにいるみんなも……? Friends? Familyでいいですか?」と続けると観客から大歓声があがって、“Friends, Family, & God”に傾れ込んでいく。2ヴァース目にはG-k.i.dも参加して、中毒性の高いメロディのフックを会場全員と歌い上げた。

「G(-k.id)くんは沖縄で出会って仲良くして、かわいがってくれて、よくアドバイスもくれんですけど、この曲(“Friends, Family, & God”)ができた時、Kviちゃんを武道館に連れて行くのが次のステージだって言ってくれたんですよ」と熱いエピソードを明かした。そのまま“City Love City Love City Love”のイントロがかかり、Kvi Babaは「みんなどこで待ち合わせした?」と話しかけて歌い始める。すると、“City Love〜”のリリックがまるで、今日自分が武道館に来るまで感情を歌われているような、嬉しい錯覚に陥ることができた。Kvi Babaが2ヴァース目で「2番出⼝を出た所で逢おう」と語りかけるように叫ぶと、観客は今日1番大きな声で「駅は九段下で」とレスポンスした。この瞬間、武道館にいた大半の人は筆者と同じようなカタルシスを感じていたはずだ。

「普段ならここで終わりなんですけど、終わりたくないよね?」と煽りを入れて、1曲目の“I Like It”を再び歌い始めた。ものすごい盛り上がり。ポジティブな空気が武道館に充満する。だが1ヴァース目が始まる前にKvi Babaは演奏を止めて、「僕からみんなへのサプライズです」とトラックをリワインドして、リミックスバージョンへ。2ヴァース目に登場したのは、なんとR-指定。大阪出身の二人がサプライズのマイクリレーを披露した。音楽の楽しさ、Kvi Babaのメッセージ性、演出、すべてが相まって、最高の雰囲気で“I Like It (remix)feat. R-指定”を歌い終えた。が、Kvi Babaは何かに気づいたようで、急にステージ袖にいたスタッフと話し始める。そして「めっちゃみんなに申し訳ないことした……。俺、自分がみんなにサプライズすることに必死で大事なこと伝えるのを忘れてた。ほんとはさっきの曲から撮影可だったんです」と明かした。すると観客からものすごく大きなアンコールが。「OK、みんなケータイ出して。もっかいやるから」と本日3回目の“I Like It”のイントロが鳴り、R-指定も再び登場して、1回目よりもパワフルなラップを聴かせた。R-指定は「Kviちゃん、武道館おめでとう」と絶叫して、ステージをあとにした。

Kvi Babaは「今日は次の曲で終わりだけど、これが終わりじゃないからさ。また大きい挑戦をしたいな、と。でもラッパーなんでやっぱり曲の中で言います」と溜めて、最後の曲 “1234”はまず観客と一緒にフックの歌唱練習をする。最後のサビ前までみんなと大合唱し、一呼吸置いて「次は横浜アリーナやっからよ」と発表。同時に客電も点灯して、ポジティブな雰囲気の中で記念すべき武道館公演を締め括った。

クリスチャンとしてのアイデンティティをベースに、自身と他者への愛という普遍的なメッセージをリリックに落としこみ、耳に残るメロディと節回しでラップと歌をハイブリッドして表現する。この日の武道館公演は、緻密に計算された演出と同時に、“I Like It (remix)feat. R-指定”を二回も歌ってしまうような、Kvi Baba自身の飾らないパーソナリティも体感することができた。ラッパーとして、ヒップホップのスピリチュアリティを持ちつつ、優れたポップセンスを併せ持つ彼のような存在が今後、日本のヒップホップシーンにおいてことさら重要になってくるのではないか、そう感じさせる武道館公演であった。

なお、本公演「Kvi baba Shout Out to Jesus」のセットリストはこちらをチェックしよう。


Kvi Baba 横浜アリーナ公演『Shout Out to Jesus in YOKOHAMA ARENA』

チケット最速先行受付開始
販売はe+にて
*締切は9月7日(日)23:59まで
日程:2026年8月27日(木)
時間:OPEN 18:00/START 19:00
会場:横浜アリーナ
席種:全席指定
料金:9,800円(税込)
枚数制限:4枚
※未就学児入場不可
主催:Toy’s Factory
制作:01 creative
問い合わせ:クリエイティブマンプロダクション
03-3499-6669
月・水・金 12:00-18:00

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テキスト
Writer
Keita Miyazaki
フォトグラファー
Ryusei Sabi (1% Plus)
エディター
Rina Sugo/Hypebeast
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