メディアアーティスト 落合陽一が語る glo™ LOVE AT FIRST の舞台裏 | Interviews
彼ならではのクリエイティビティに迫る
「最高の体験は“最初の瞬間”からはじまる」をコンセプトに掲げ、業界のさまざまなクリエイターとタッグを組み、『Hypebeast』ならではのカルチャー的な視点で実地する体験イベント「glo™ LOVE AT FIRST」。仙台に続き、2025年8月23日(土)から表参道でポップアップストアをオープンした。インスタレーションの創作を手掛けたのは、メディアアーティストの落合陽一。昨今では日本国際博覧会(大阪・関西万博)にて、シグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」を発表したのも記憶に新しいところだ。『Hypebeast』ではそんな彼に特別インタビューを行い、彼ならではのクリエイティビティに迫った。
言葉じゃない概念が立ち上がる瞬間と
言葉の概念が立ち上がる瞬間を表現した作品
Hypebeast:glo™LOVE AT FIRSTのインスタレーション「SIGHT」を担当されました。作品制作の始まりから教えてください。
落合陽一:まず、会場となる表参道について深く考えました。表参道はもともと何もないところから始まり、明治神宮ができて文化が発展した街。そして明治時代はいろんな言葉が生まれた時代ですよね。この二つの背景を膨らませていきました。例えば、LOVEという言葉の意味は、いつ日本で愛になったんだっけ?って調べると、1870年頃の明治時代。芸術という言葉もこの時代ですね。そう考えた時に、日本語の概念そのものが実は新しいものばかりなんです。そんな言葉じゃない概念が立ち上がる瞬間と、言葉の概念が立ち上がる瞬間。このふたつの概念を作品にすると面白いんじゃないか。そこから作品作りは始まっていきました。
なるほど。言葉に起源があれば何もなかった時代もあり、どちらにも何かしら立ち上げる瞬間があった。それらを切り取っていく、とても感慨深いです。メインのインスタレーション作品タイトルは「即今鏡門」ですが、内容をお聞きできますか?
“即今”は今この瞬間という意味で、“鏡門”はその名の通り、鏡が立ち上がるという意味です。“即今”はもともと茶道において使われていた言葉で、目の前の瞬間を大切にするという思想です。なので“LOVE AT FIRST”の一目惚れという意味合いを、古い言葉でそのまま変換しています。
落合さんならではのテーマですね。特に大切にした点をお聞きできますか。
そうですね、大きなアート作品を都心に持ってくるってこと自体が面白いなと思っていて、それをうまく着地できるように頑張りました。鏡の彫刻を外から見るのは万博でも作っていますが、鏡のなかに入ったり、挟まれたり、振動を感じられるっていうのは、この作品ならではだと思います。
来場者も一緒に作品に入り込める内容になっているということですね。大阪万博や今回もそうですが、このようなパブリックな空間で実地するインスタレーションの意義や他との違いはありますか?
やっぱり美術館のなかで行うのとは全く違いますね。パブリックな場所でやるのは、前提として見た目にインパクトがあった方がいいと思いますし、今回は、一目見ただけで印象に残りそうなものを作りました。
表参道の交差点にあると、より強い印象が引き立ちますね。作品作りについてですが、社会とどう接続させるかを常に考えていますか? それとも、まずは純粋に自分の感性を優先していますか?
アート作品に関しては、社会との結びつきを考えないことが多いですね。今までこういうの作ってきたから今回はこれにチャレンジしようだったり、自分との文脈は大切にしています。
まずは純粋にご自身との接続性を大切にされているということですね。自然とテクノロジーにまつわる作品を多数手掛けられているなかで、近年では「ヌル」という言葉をよく耳にします。今回の作品もそうですが、「ヌル:null」について、改めてどのような意味が込められているのかお聞きできますでしょうか。
空という意味です。何もない“ヌル”からあらゆるものが生まれ、あらゆるものは何もない“ヌル”に帰っていく。つまり、モノができて社会に循環していく様を意味しています。
落合さんのおっしゃる「世界とは鏡である」という意味が理解できました。今回に限らずですが、作品からは「無常や揺らぎ」を大切にされているように感じます。それは日本的な美意識からきていますか?
よく気づいてくれましたね、ありがとうございます。その通りで、割れてしまうもの、消えてしまうものをテーマに、作品を作ることは多いです。
「即今鏡門」もまさにそうですね。さまざまな作品を手掛けるなかで一貫して大事にしていることを教えてください。
世界観を大事にしています。僕の場合、同じモチーフをずっとやっていくタイプではないので、僕の世界観のなかでそこにあるものは何か?を日頃から考えています。
ありがとうございます。最後に、glo™ LOVE AT FIRST SIGHTで来場者に体験してほしいことはなんですか?
まずは考えずに入ってみて、身体で何かを感じてほしいです。鏡がどよめく様子を体験しながら、意味や自分の気持ちが立ち上がる感覚を楽しんでもらえたらなと思います。
時間や人の交錯とともに景色を変える、「即今鏡門」。来場者もその作品の一部となり、またとない非日常を体験することができる。表参道で開催されているこのポップアップストアは、落合陽一のインスタレーションのほか、m-flo(エム・フロー)の楽曲に呼応して変化する映像作品も楽しめる。そして、アート、テクノロジー、glo™の新デバイスであるglo™ Hiloの魅力を通して、新たな発見と感動の体験を創出していく。20歳以上であればどなたでも入場可能なので、ぜひ一度足を運んでみてほしい。
「glo™ Hilo│落合陽一 ポップアップストア表参道」
日程:2025年8月23日(土)~9月7日(日)
月~木 11:00~20:00(最終入店19:30)金~日 11:00~21:00(最終入店20:30)
※9月7日(日)のみ 11:00〜15:00(最終入店 14:30)の営業となります。
場所:OMOTESANDO CROSSING PARK
住所:東京都港区南青山5丁目1-1
LED協賛パートナー: 株式会社セイビ堂













