東京デザイナーに訊く10の質問 ── ORIMI 編

「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 S/S」期間中の短期連載企画。今回は〈ORIMI〉デザイナーの折見健太をフィーチャー

ファッション
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東京のファッションシーンにとって、いまや年に2度訪れる風物詩となった「Rakuten Fashion Week TOKYO(楽天ファッション・ウィーク東京)」。ストリートとハイエンド、伝統と革新が交錯するこの舞台は、単なるコレクション発表の場ではなく、次世代の価値観や美学がリアルタイムで更新される現場だ。今季も、国内外から注目を集める全25ブランドが参加し、東京ならではの熱気を放っている。そんな中、『Hypebeast』では独自の視点でフィーチャーすべきブランドをセレクト。単なるルックの紹介やトレンドの分析にとどまらず、デザイナー自身の言葉からそのクリエイションの核に迫る短期連載企画を敢行する。題して“東京デザイナーに訊く10の質問”。創作の源泉から日常のインスピレーション、そして未来のビジョンに至るまで、彼らのパーソナリティを掘り下げることで、ランウェイの向こう側にあるストーリーを明らかにしていく。

今回は〈ORIMI〉デザイナーの折見健太。18歳でヴィンテージバイヤーとしてキャリアを歩み始め、アパレルストアの立ち上げや商品企画・買い付けを経て、2019年にセレクトショップ『THE ELEPHANT』をオープン。その翌年、自身のクリエイションを具現化する場として〈ORIMI〉を始動。2024年には、同ブランド初となる2025年春夏コレクションランウェイショーを開催した。ブランドのコンセプトは、“Superfine garment for all the outsiders(異端者のための最高級の服)”。ラグジュアリーなベーシックウェアを基軸に、既存の構造や意味を一度解体し、新たな身体性とバランスを再構築することで、現代における衣服の在り方を問い直す。折見の約10年にわたる経験から培われた視点は、パターンや縫製に潜む“当たり前”への違和感を、ズレや歪みとして意識的に掬い上げる。それらを美しさやユーモアへと昇華し、感情と理性のあいだに存在する服を提案している。


Q1.2026年春夏シーズンのコレクションテーマを一言で表すと?

「ELSEWHERE」──近いのにどこか遠い場所。日常を少し歪ませることで非日常に変わる、その曖昧な距離感を表現しています。

Q2.今回のデザインを進める上で、特にインスピレーション源となったものは?

都市に漂う孤独感や、不完全さを抱えた制服的な衣服がインスピレーションです。スクールユニフォームや背広の要素をベースにしつつ、ズレや歪みを加えて再構築しました。また、子供の頃の遊びや人形といった“幼さ”も1部に取り込み、未来と過去が交差するムードを意識しています。

Q3.ブランドを始めたきっかけを教えてください。

古着を解体してリメイクすることから始まりました。既存の服を壊し、新しい価値を見出すことに強く惹かれ、それを軸にした自分自身の視点を形にするためにORIMIを立ち上げました。

Q4.ORIMIの強みを教えてください。

“SUPER FINE GARMENTS FOR ALL THE OURSIDERS”というコンセプトにあるように、既存のルールやカテゴリーから少し外れた視点を持ち続けていることです。高い技術を用いながらも、“ズレ”や“違和感”を前向きに変換し、着る人の個性に寄り添える強さがあります。

Q5.ファッションに興味をもったのはいつ頃からですか?

10代の頃、原宿でカルチャーに触れながら古着やストリートの服に夢中になったのが最初です。単なるファッションではなく、生き方や価値観を映すものとして服にのめり込んでいきました。

Q6.既存の構造や意味を“解体”するプロセスは、具体的にどのようなアプローチで進めていますか?

まずは古典的なアイテムや制服的な衣服を徹底的に観察し、それをパターンの段階から解体・再構築します。袖やパンツのバランスを極端に変える、縫い目の役割をずらす、素材を異なる文脈に置き換えるなど、“ほんの少しの違和感”を生み出す仕掛けを設計しています。

Q7.尊敬するデザイナー、ライバルだと感じている(または共感する)デザイナーはいますか?

日本ではNUMBER (N)INEやUNDERCOVERといった1990〜2000年代のデザイナーたちに大きな影響を受けています。彼らのように音楽やアート、サブカルチャーを服に落とし込む姿勢は常に意識しています。また、同世代や海外の若いクリエイターの存在も刺激になっています。

Q8.東京ファッションウィークという舞台で発表する意義をどう感じていますか?

自分が育ってきた文化的背景を、世界に向けて発信できる重要な場だと考えています。特に最終日の最終枠で発表できることは、ブランドにとって大きな挑戦であり誇りです。東京ならではの雑多でユニークな感性を提示できるのは、この舞台ならではの意義です。

Q9.今季のコレクションを通して、観客や着る人にどんなメッセージを届けたいですか?

「どこか遠くに行かなくても、身近な日常の中に“ELSEWHERE”は存在する」ということを伝えたいです。普段着を少しズラすことで新しい景色が見える、その感覚を体感してもらいたいと思っています。

Q10.ブランドの今後の展望、または挑戦してみたいことは?

今後は海外での卸やショールーム展開をさらに広げたいと考えています。また、ショーではより異なるジャンルとのコラボレーションも視野に入れ、ファッションだけに閉じない新しい体験を作りたい。3〜5年のスパンでブランドをより強固にし、ORIMI独自の世界観を国際的に確立していくことが目標です。

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