コロンビア発のレゲトンスター フェイド──日本で響いたカルチャーのリズム | Interviews

日本への愛情とレゲトンを広めるという強い意志

ミュージック 
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コロンビアにおけるレゲトン(レゲエとヒップホップを融合させた、ラテン音楽のジャンル)界のスターであるフェイド(Feid)。別名“El Ferxxo(エル・フェリチョ)”の呼び名で親しまれる彼は、滑らかな歌声と繊細な感性、そしてカメレオンのような音楽的適応力を武器に、いまやラテン音楽シーンの最前線を走る存在だ。コロンビアのメデジンで生まれた彼は、ラテンのルーツに誇りを持ち、地元のスラングを巧みに織り交ぜたロマンティックなリリックを綴りながらも、クラシックなペレオに冷たいシンセやR&Bの質感を融合させることで独自のスタイルを確立してきた。

2022年にリリースしたブレイク作『FELIZ CUMPLEAÑOS FERXXO TE PIRATEAMOS EL ÁLBUM』では、テックハウスのエッセンスを取り込み、収録曲『Nieve』をヒットへと押し上げたほか、2023年にはナイジェリアのアフロビーツスター レマ(Rema)と共に、トロピカル・ポップと電子音楽を横断する『BUBALU』をリリース。幼少期からクラリネットを学び、大学の合唱団で声を磨いてきた経歴に裏打ちされた音楽性は幅広く、ピアノやギターも操るマルチプレイヤーとしての顔も持つ。さらにコロンビア出身のシンガーソングライター J.バルヴィン(J Balvin)の『Ginza』をはじめ、クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)といった大物の楽曲にも関わり、“影の立役者”としてシーンを支えてきた。

そんな彼だが、2024年にリリースした楽曲『SORRY 4 THAT MUCH』のMVは、日本で撮影を行うなど親日家であることでも知られる。朝の情報番組を彷彿とさせる演出やアニメを想起させるCGを織り交ぜるなど、日本文化への深い理解を作品に落とし込んだ。

そして今回、2度目の来日で『Summer Sonic 2025』のビーチステージに登場。会場には彼を目当てに集まったファンも多く、圧巻の盛り上がりを見せた。熱狂の余韻が残る翌日、『Hypebeast』は短時間ながらも彼にインタビューを実施。そこで語られたのは、日本への愛情と、レゲトンをさらに広めていきたいという強い意志だった。


音楽を通じて、世界を少しずつでも良い方向に変えていきたい、それが僕の目指すところですね

Hypebeast : まず日本のファンに向けての自己紹介をお願い致します

フェイド(以下F):フェイド(Feid)です。コロンビア・メデジン出身でレゲトン・アーティストをやっています。本名はサロモンと申します。よろしくお願いいたします。

来日は何回目でしょうか?

F:2回目です。昨年に続き、今年も来ることができました。

初めて日本に来たときの印象を覚えていますか?

F:飛行機から降りて歩き始めた瞬間から、とにかくワクワクしました。日本は色々な伝統が見受けられる国だなと思っています。伝統的な建物とモダンな建物が混在していて、街中には巨大スクリーンにイラストやキャラクターなどクールなものであふれている。その独特の景観がすごく新鮮で、「これが日本か!」と強く印象に残っています。

先日の『Summer Sonic 2025』出演本当にお疲れ様でした。ステージはいかがでしたか?

F:最高でした。自分自身がステージを通してとても楽しむことができたし、日本のオーディエンスが僕のイメージカラーであるグリーンのアイテムや僕のグッズを身につけてくれている人が多く、本当にうれしかったです。僕の音楽は日本のファンにとって新しいものではあると思うのですが、オープンに受け止めてくれた印象が強いです。もちろんリッキー・マーティン(Ricky Martin)だったりバッド・バニー(Bad Bunny)といったラテンのレジェンドたちが日本でも知られていますが、僕自身にしかできない世界観を日本のファンに向けて披露して、拍手や歓声で応えてくれたのは本当に特別な経験でしたね。

千葉雄喜さんがステージに上がってましたが、彼との関係性は?

F:SNSや共通の友人を介して知ってはいたのですが、日本での公演が決まってから『Summer Sonic』の関係者が本格的に繋いでくれて彼とマッチアップしました。彼の楽曲『チーム友達』やメーガン・ザ・スタリオン(Megan Thee Stallion)との『Mamushi』なども聴いていましたし、友人たちからも話を聞いていたので、共演できて本当にうれしかったです。

 

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千葉雄喜さん以外に日本のアーティストで気になっている方はいらっしゃいますか?

F:千葉雄喜はもちろんですが、LANA(ラナ)やLEX(レックス)の2人もチェックしています。あと僕は日本の古い音楽にも興味を持っていて。なぜかはわからないけれど、コロンビアの伝統音楽であるバジェナートに似た響きを感じるんです。言葉は違っても懐かしさというか、不思議とどこか親しみを覚えますね。

日本のリスナーに届けたいご自身の音楽の魅力はどういったところでしょうか?

F:まず覚えてほしい言葉が“ペレオ(Perreo)”です。レゲトンのビートに合わせて踊ることを指すのですが、僕の音楽の中心にあるのは、まさにこの“ペレオ”なんです。ただ、僕の楽曲は単に踊るためだけのものではありません。大きなヒット曲の多くは失恋をテーマにしていて、聴く人の心を癒すためのものでもあるんです。悲しみをそのまま歌うのではなく、「そこからどう抜け出すのか」「どうポジティブに変えていけるのか」という視点を常に取り入れるようにしています。僕のファンの間では「すべてを相手に捧げても、もしうまくいかなかったら音楽を聴いて前に進もう」というフレーズがよく知られています。これは僕のコミュニティを象徴する考え方であり、音楽が“心の治療”のような存在になっていると思っています。僕は常に、歌詞やサウンドを超えたエネルギーを作品に込めています。それは聴く人の心や魂に触れ、少しでも気持ちを前向きにしてくれるものです。音楽を通じて、世界を少しずつでも良い方向に変えていきたい、それが僕の目指すところですね。

音楽だけでなく、日本での時間そのものも楽しめたのではないでしょうか。今回の滞在で食べた料理や訪れた場所で、特に印象的だったことはありますか?

F:印象に残っているのは、やはり豊洲市場で食べたお刺身です。豊洲で食べた寿司やマグロは、人生で食べた中で最も新鮮な魚でした。あとは京都で麺類を食べたり、場所は覚えていませんがとても辛い食べ物を試食したりもしました。ただ、やはり一番は豊洲市場での魚ですね。早朝の競りは見られませんでしたが(笑)、それでも最高の体験でした。

最後に日本のファンに向けて一言お願い致します。

F:まずは、日本のリスナーとの関係性を築き上げてきていることをとても嬉しく思います。SNSでは、日本のファンの方々からたくさんのDMをいただいています。まだ言語を勉強している途中なので翻訳しながらやり取りしていますが、できる限り自分で応えたいと思っています。日本の文化について学べば学ぶほど、その奥深さに感動します。音楽やアートに対する考え方、そして生活の中に自然とイラストレーションが溶け込んでいる点がとても印象的でした。個人的に、自分の写真や顔を前面に出すのが少し苦手で(笑)、むしろイラストを通して表現する方が好きなんです。日本では身の回りの95%くらいのものにイラストが使われているように感じて、とても共感しましたし、自分自身とすごくリンクしているように思います。だからこそ、日本の文化には強い親近感を覚えていますし、ここで暮らす人たちともそんな感覚を共有できたら嬉しいですね。

フェイド
コロンビア発のレゲトンアーティスト/シンガーソングライター/プロデューサー。本名はサロモン・ビジャダ・オヨス(Salomón Villada Hoyos)。そのアイコニックな緑のスタイルとサングラスから“緑の男”や“Ferxxo”と呼ばれ、緑の衣装やサングラスをトレードマークとしている。マルチな才能を武器に、総ストリーミング数は240億回超を誇る。代表曲は『LUNA』『Classy 101』『Feliz cumpleaños Ferxxo』など。さらにバッド・バニー(Bad Bunny)、レマ(Rema)、カロル G(Karol G)といったシーンのトッププレイヤーとも共演し、グローバルな存在感を確立している。2025年の 『SUMMER SONIC』東京会場では、自身の誕生日(8月19日)を祝した特別企画 “Feliz cumpleaños Ferxxo”をBEACH STAGEでキュレーション。ボンバ・エステレオ(Bomba Estéreo)など強力な客演を迎える。日本とのつながりも深く、2021年にはアルバム『INTER SHIBUYA-LA MAFIA』をリリース。2024年には東京で『SORRY 4 THAT MUCH』のMVを制作するなど、親日家としても知られる。

アーティスト:フェイド(Feid)
タイトル:『Se Lo Juro Mor』
配信日:8月19日(火)
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Contributor
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