“一夜限り”の特別な体験を ── 新型ヒップホップイベント EXP をレポート
記念すべき第1回目はフロントアクトにTete、メインアクトにJin Dogg、Kohjiya、Tiji Jojoが出演
新たに立ち上がったヒップホップ・イベントである「EXP」。全てのパフォーマンスがバンドセットで行われ、かつ、参加するオーディエンスにはスマホでのライブ撮影を全面禁止するというルールのもと開催された。そこには、自身のクリエイティブを追求したライブを披露する“きっかけ”を作りながらリアルタイムの体験をより深く味わい、“一夜限り”の特別な体験を提供する、という主催者側の目的がある。記念すべき第1回目にはフロントアクトにTete、そしてJin Dogg、Kohjiya、Tiji Jojoという個性的かつ豪華なメンバーが揃った。
当日、会場の『ZEPP DiverCity』は悪天候にも関わらずオーディエンスで満杯に。トップバッターのTeteが登場すると、観客らは一斉にスマホをしまいステージへと目を向ける。普段のライブと比べると、心なしかより一層の緊張感が生じているようにも思えた。まずは“Block Boys”をキックし、叙情的なリリックをマイクにぶつけるTete。「長崎県の平戸地区から来た」と自己紹介を兼ねたMCを挟み、「名古屋の大好きな先輩と作った曲」とつなぎながら、C.O.S.A.が参加した未発表曲を披露。“山羊”のイントロでは一斉に歓声が上がる中、最後は家族に捧げた歌詞が印象的な新曲 “angela”で締めた。
転換を挟み、真っ赤な照明の下、バンドメンバーを従えてステージ中央に立つのはJin Dogg。1曲目の“ボケ死ね”からラウドに盛り上げる。インパクトのあるバンド・サウンドはJin Doggのプレゼンスとぴったり合致し、本編の幕開けとしては最高だった。Jin Dogg本人は運営チームに向けて「俺を一番手に選んだことを後悔させてやる」と言っていたが、逆に、オーディエンスのバンドの迫力を伝えるには最適なトップバッターだったと思う。特に、ViryKnotが弾くギターとの相性も最高で、観客を手引きするかのごとくバンドのフロントマンとしてもしっかりとステージをこなしていた。「本気でぶち壊してやる、殺す気でかかってこいや」と煽りながら、“OMG”、“ベルセルク”と続けていく。半ば、「普段やらないけど、手紙に書いてきた。こんなんすんの初めてやけど、言葉にできないくらい色んなことがあった。現状に感謝しています」と前置きし、紙を取り出しながら“Show Is Over Now Get The Fuck Out”を披露。生々しい渾身のリリックをマイクにぶつけ、“雨の日の道玄坂”、“街風”といった人気曲を歌う。最後はハードコアにアレンジされた“チーム友達”を披露し、Young Cocoがステージに参加。全編通して、いつもよりエッジーではちゃめちゃなパフォーマンス。9月に『Zepp Osaka』でワンマン・ライブを行うことをアナウンスし、波乱のステージの幕が降りた。
転換を経て、一斉に歓声を浴びながらKohjiyaが登場。ワンマン・ライブですでにバンドセットは経験済みのKohjiyaは、渋いギターの音色と共にステージに現れ“Talk 2 Me”をキックする。「Jakeくんのライブも最高だったけど、俺は俺のやり方で音楽をやる。クールに行こうぜ」と呼びかけて“KJ Season Freestyle”、“Never Dissapoint”、“G.O.A.T”と披露していく。“Oneway Drive”ではサプライズでG-k.i.dも加わり、息の合ったコラボレーションを魅せつつ堂々と喝采を浴びる姿はまさにラップスター。「今日はお祭り。かまし合いでしょ? 新曲持ってきたから、次、歌うあいだだけカメラを使ってもいいので」と前置きして新曲となる“Stand The Rain”を歌い、場内は一気にスマホの液晶の光が灯された。オーディエンスの合唱を受けつつ、“Dreamin’ Boi Issue”、“Broke Boy Rich”などを続け、最後は“99 Steps”へ。ピンスポットに照らされて、バンドをバックに歌うKohjiyaの佇まいからは自信が満ち溢れていた。
いよいよクライマックス。満を持して登場したのはTiji Jojoだ。“Friday Night Forever”をイントロ代わりに、「川崎サウスサイド!」と呼びかけながらステージへと現れ“South Side Night”をラップする。“Go Up”、“Malibu Dream”など1stアルバム『F.N.F』の楽曲を中心に構成されたステージで、とくに“Party Girls”や“4Season”といった曲ではメロウなサウンドがバンドの演奏としっかりマッチし、心地よい興奮が場内に充満する。DJ PHANTOMよるスクラッチもいいスパイスになり、さらに世界観を盛り上げると同時に、Tiji Jojo自身、さすがこれまでに多くの大舞台を踏んできただけあってバンドによるダイナミックな演奏をしっかりと乗りこなしながら曲を進めていく姿が印象的だった。立体的なバンド・サウンドに負けないヴォーカルが、頼もしい。終盤になるにつれて、空気も徐々に熟していく。「昔の曲もやろうと思う」と前置きしてBAD HOP名義の“Fam*ley”が流れると、オーディエンスはさらに大合唱へ。そこから間髪入れずに“NRE.”へと移る。さらに熱狂に包まれる中、「最後の曲はライトを点けて撮っていいよ」とアナウンスし、さらに観客へと語りかける。「BAD HOPを解散しても、みんなの前に立てていることに感謝しています。山あり谷ありだけど、幸せな人生はこれ以上ないよ」とリリックの一部を発しながら最後に“Crazy Life”を歌い、「Jin DoggとKohjiya、ヤバいバンドメンバーに拍手を!」とシャウトしてステージを後にした。
未体験だったイベントを終えて感じたことは、ラッパーたち、そしてバンドメンバー、そして何よりオーディエンスたちがガチで向き合ったイベントであった、ということ。スマホ越しではなく、生身のアーティストとオーディエンスたちが生み出すエネルギーは、間違いなくいつもとは違う特別なものであった。ステージの上のアーティストたちは、オーディエンスから放たれる生のリアクションを即座に受け取り、それがすぐにアツいライブの火種となって客席に返される……そんな交歓が実現したように感じた。未知との遭遇、というには大袈裟かもしれないけれど、新たな経験としてのヒップホップ・ライブが楽しめるイベントとしては大成功ではなかったか。早くも次回の開催が待ちどおしい。




















