Our Legacy 2026年春夏コレクション
ブランドが20年かけて築き上げてきた対話やアーカイブを新たな文脈で再構築
















































































































































































































スウェーデン・ストックホルム発のブランド〈Our Legacy(アワー レガシー)〉が、2026年春夏メンズ&ウィメンズ レディ・トゥ・ウェアコレクション “B-SIDES”を発表した。
ブランド設立20周年の節目にあたる2026年春夏シーズンのコレクションは、過去を振り返る“ベスト盤”ではなく、あえて“B面(B-SIDES)”をテーマに掲げ、チームが20年かけて築いてきた対話やアーカイブを掘り起こす“記憶の掘り起こし”によって生まれたという。会話の断片、未発表に終わったプロトタイプ、ファンやアンチから寄せられた声、スタッフ同士のちょっとした冗談まで、あらゆる過去を見直し、今の視点で再構築した。クリエイティブ・ディレクターのクリストファー・ニイン(Christopher Nying)は、今回のコレクションについて次のように語る。「(Our Legacyは)今年で20周年を迎えますが、懐古的な視点にはしたくありませんでした。たとえ過去を振り返るとしても、それは特定の服ではなく、私たちが一緒に築いてきた“感性”にフォーカスしたかったのです。今回のコレクションは、とても内面的なものであり、私たちの働き方や共有してきた時間の反映でもあります。コーヒー片手に交わした会話や、ふとした思いつき、そんな“B面”のような記憶を、まったく新しいかたちで表現しました」。
アイテムは素材や構成によって“見慣れたもの”から遊離し、別の文脈で再提示される。クラシカルなメンズテーラリングには、シワ感のあるレースのアップリケを組み合わせ、袖口やジャケットの裾からは、レースで縁取られた透け感のあるシルクが覗く。こうした意外性のある構成によって、既成概念に揺さぶりをかける。ウィメンズでは、力強さを持つフェミニニティと、メンズウェア的要素の再解釈が共存。アイレットディテールとフック留めが印象的なブラックのウエストコートはシャープな存在感を放ち、アイコニックな“Tuxedo Bomber”は緩やかな曲線を取り入れた新しい設計に。ポプリンシャツはロングドレスへと拡張され、下からプリーツスカートがのぞくなど、構造的な再提案も行われている。
質感や素材の対比も本コレクションの軸となる要素だ。サテンシルクはあえて研磨され、通常の艶ではなく乾いた風合いに変換。柔らかくドレープするシルクニットは、アーシーでマーブル調の色合いとの組み合わせ。レインジャケットと思わせるルックも、実際には透け感と通気性を持つウールボイルで仕立てられており、その実用性に疑問を投げかける。素材の遊び、シルエットの再解釈、アーキタイプ(原型)への巧妙なツイストなど、ブランドの文法とも言える要素を徹底的に見つめ直し、衣服づくりへの深い愛をストレートに表現した。
また、多くのバリエーションが見られるプリントにも数々の記憶の断片が織り込まれている。たとえば、“モメント・モリ(死の象徴)”を描いた哀愁あるペイズリー柄は、アーカイブピースの写真をもとにシャツに転写。ブランド初期のコレクションに登場した“Archangel”プリントは、ガーゼのような質感のティードレスとして再解釈。また、過去20年分の“怒れるファンレター”は、ジャージー素材にプリントされ、皮肉とユーモアを込めて可視化された。
今季のルックブックは〈Our Legacy〉の社内チームによるスタイリングで構成されており、この“集団的プロセス”と“内部の論理”こそがコレクションの根幹にある。フォルム、質感、素材が巧みに対比されることで、ブランドの多彩な“B面”を視覚的にミックスしたような世界観を表現。革新性を根底に持つブランドのアティテュードをこれまで以上に純度高く体現し、次なるフェーズへとつなぐコレクションとなっている。
ブランド:Our Legacy
シーズン:2026年春夏