これが S も XX も表記のない大戦 LEVI’S® 506(通称ダウンパッチ)のオリジナルだ
月桂樹ボタン、フラップなし、そして粗すぎる縫製
“下手くそ”な縫製。でもそれが奇跡的な雰囲気を生んでいる──そんな大戦期〈LEVI’S®(リーバイス)〉のヴィンテージデニムジャケットがある。100着に1着ほどの割合で見つかるその個体は、他のS506XX(大戦期のファーストのロット名)とは一線を画している。
まず特徴的なのが、フロントのボックスステッチ。縦は10mmはあろうかというほど、やけに大きいのだ。袖のリベット周りの縫いもぐちゃぐちゃしている。そして、ところどころ内縫いされるはずの糸が表に飛び出していたりする。大急ぎで縫ったのか、縫製はかなり粗っぽい。そして、これらの個体にもし革パッチが残っていれば、必ずと言っていいほど通常よりも低い位置に取り付けられている。
この特徴に気づいた先人たちは、この雰囲気ありありの大戦期ファーストを“ダウンパッチ”の名を与えた。そして、なぜかこのダウンパッチの個体は共通して、革パッチのスタンプが506とサイズ表記のみで、S表記もXX表記もないのである。物資統制下の規制により、ポケットにフラップがなく、フロントボタンも5つから4つになっている大戦モデルにも関わらず、である。(※S表記がないモデルは存在するが、XX表記までないのはこの“ダウンパッチ”のみである)
そして今回、ここにご紹介するのが、この“ダウンパッチ”のほぼデッドストック状態の1着だ。2025年2月に伊勢丹新宿店で顧客向けに発表された、大戦コレクターのデッドストックシリーズの中に、このジャケットも並んでおり、今回、撮影の機会を得たので、そのディテールを固唾を呑んでゆっくりみてほしい。
S表記とXX表記のない事実以外に、新たにユニークなポイントを発見した。4つの月桂樹ボタンが、下にいくにつれて少しづつ異なる光沢を放っているのだ。約80年の時を経て、それぞれの合金が独自のエイジングを見せているようにも思える。製造時の素材のばらつきが、いまでは“唯一無二の風格”を演出している。大戦期〈LEVI’S®〉のヴィンテージデニムジャケットのデッドストックが、世の中に何着あるかわからないが、本個体はその中でももっとも雰囲気のある1着と言えるだろう。
Vintage LEVI’S 506 “Down Patch”
・革パッチが通常の506XXよりも下の位置に縫いつけられている
・その革パッチにSもXXも表記がない
・フロントは4つの月桂樹ボタンでフラップなしのポケットなど、大戦モデル特有のディテールは備えている
・大戦時は5工場あったと考えられるうち、特定の工場でのみ作られていたと考えられる希少個体
・本個体は未着用状態でシンチバックがカットされていることから当時はB品(規格外)扱いの可能性もある
・袖リベット周辺の縫製が非常に粗い
・ところどころ内縫いされるはずの糸が表に飛び出ている
・ウエストバンドの上部のチェーンステッチが、黒糸の混ざる“タイガーステッチ”仕様

















