これが LEVI’S® 501XX 1942(大戦バックル)がオリジナルデッドストックだ
1942年3月〜8月頃のわずか6カ月のみ生産された超希少モデル















近々、市場に出るとの噂のスーパースペシャル個体がある。筆者の市場価格予想は、3,000万円オーバー。その個体とは、〈LEVI’S®(リーバイス)〉のヴィンテージジーンズのなかでももっとも人気の高い大戦期モデル。そして、その大戦期のなかでも初期の初期にあたる501XX 1942だ。しかも、83年間、穿かれることのなかったデッドストック状態。まさに完品で、オリジナルのフラッシャー、ギャランティチケット、そして、おそらく世界初公開となる(!?)スペシャルなミニペーパー(命名:ライダースチケット)が付属している。
この501XX 1942を大戦期の初期の初期とするポイントは、1937モデルの特徴と大戦モデル(1942-46)の特徴の両方を備え持つ点だ。この時代のジーンズ好きには、最高のいいとこ取りで、名付けて「大戦バックル」と言える。では、具体的にその特徴を挙げると、まず黒いシンチバックが付いているのだ。1937と言えば、シンチバックだが、1942はここが黒いのである。よくこれは黒ラッカーと間違えられるが、実際はラッカーではなく、クロムを含む特殊な合金と考えられる。ちなみにこの黒いシンチバックは、1941年と1942年に見られる特別なディテールだ。そして、1937モデルまでの特徴である股リベットも存在。ザ・大戦な個体にはこの股リベットは(基本的に)ないので、501XX 1942は股リベットがつく最後のモデルと言える。そして、象徴であるアーキュエイトステッチにも1937時代の魅力が残る。1本針で縫われた、マクドナルドのようなMステッチは、カモメではなく、“イーグル”のように大胆だ(大戦期はペイントステッチ、その後は2本針のステッチ)。
いっぽうで大戦モデルのディテールは、前立て裏の持ち出しが荒っぽい切りっぱなしの点と、リベット類が(銅メッキの)鉄である点。1941年に物資統制の指令が出ているので、銅は使えなくなったのだろう。ただ、当時は銅に思われるほうが高級だったため、メッキを施している。実際に、磁石を裏リベットに当てるとくっつく。ので鉄。
では、この個体を501XX 1942と、1942を強調して特定する根拠は何か? 単純に1937モデルと大戦モデルの移行期だから、という理由もあるが、実はフラッシャーで確認できるのだ。
Copylight部分をみてほしい。1942とあるのだ。わざわざここに1942とあるのは、物資統制を受けたことを反映しているからだろう。ちなみに、ギャランティチケットは、ORIGINAL RIVETTではなく、COPPER RIVETTのまま。ただ、ヴィンテージデニム識者の青木孝則氏によると、表記はCOPPER RIVETTだが、実際は銅ではないとのこと。このタイミング直後に〈LEVI’S®〉のギャラチケが、ORIGINAL RIVETTに表記が変わったことが伺える。
そしてそして、今回、リーバイ・ストラウス本社も驚くであろう付属品があったのだ。
命名「ライダースチケット」である。この個体はアメリカ本土で発見された際、左後ろポケットから出てきたという。そういえば、2023年12月8日に〈Levi’s® Vintage Clothing(リーバイス ビンテージ クロージング)〉から本モデルの復刻版が出ていたが、この「ライダースチケット」は付いていなかった。ただ同時期の701のデッドストックにも入っていたという情報もある。カウボーイ店での販売用のみに付属していたのだろうか。調べれば調べるほど謎は深まる。いやはや、ヴィンテージデニムの世界、やっぱり“底なし沼”過ぎる。
Vintage LEVI’S 501XX 1942
●当時の販売価格:2.25ドル
●フラッシャーのCopyright表記は1942
●1942年3月〜8月頃のわずか半年間のみ生産されたと考えられる
●黒いシンチバック(おそらくクロム製)
●前立て裏の持ち出し部分が切りっぱなし
●股リベットあり(本モデルが最後とされる)
●ボタン裏には銅メッキ処理
●裏リベットは鉄製で銅メッキ加工
●「LEVI STRAUSS FRONTIER RIDERS」(命名:ライダースペーパー)が左後ろポケットに入っている ※カウボーイ店での販売用のみのチケットの可能性あり
●本個体のギャランティチケットは、COPPER RIVETT表記
●アーキュエイトステッチは1本針仕様で中央のダイアモンドポイントはなし
●生地は10オンスとフラッシャーに記載あり
●「大戦バックル」「ライダースチケット」の命名は青木孝則氏参考文献 /青田充弘著『WAR DENIM』(立東舎)