Suchmos 再始動 ── Asia Tour Sunburst 2025 レポート

“修行期間”を経て形作られる新たな彼らの姿

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去る12月13日(土)ロックバンド Suchmos(サチモス)が、国内外13都市を巡る『Suchmos Asia Tour Sunburst 2025』の最終公演として、『Zepp Haneda』にてワンマンライブを開催した。2025年6月21日(土)、6月22日(日)には彼らの地元でもある神奈川『横浜アリーナ』での2days公演で、5年8カ月ぶりに復活を遂げたSuchmos。この公演には約20万人もの応募が殺到し、バンドの存在感がいまだ色褪せていないことを強く印象付けた。そんな大きな反響を背にスタートした本ツアー。10月29日(水)の『KT Zepp Yokohama』のスタートを皮切りに、『Zepp Fukuoka』や『Zepp Namba』、『BLUE LIVE 広島』といった関西・中国地方での公演から、『Zepp Sapporo』や『Sendai PIT』といった北海道・東北地方、加えて、ソウル、上海、台北、バンコクといったアジア主要都市での公演も敢行し、その熱量は日本国内にとどまらず、アジア全域へと確実に波及していった。

都市ごとに異なる空気やカルチャーを吸収しながら進化を続けてきた本ツアーは、各地で“再始動”という言葉を単なる復活劇に留めない、現在進行形のSuchmosの姿を刻み込んできた。ステージ上で鳴らされるサウンドは、かつての彼らを想起させながらも、確実にアップデートされており、観る者に今のSuchmosが向かう先を強く示唆するものだったと言えるだろう。そして、アジアツアーの最終公演の場所は『Zepp Haneda』。ツアーの集大成として相応しいこの夜には、これまで積み重ねてきた熱狂とエネルギーが凝縮され、会場全体を包み込む特別な時間が生まれていた。『Hypebeast』では、そんなSuchmos Asia Tour Sunburst 2025最終公演の模様を、ステージの空気感とともにレポートしていく。

当日の『Zepp Haneda』公演は、入場開始時刻である17:00の時点で人で溢れかえっていた。開演を待ちわびるファンたちは思い思いに談笑を交わしながらも、その空気には確かな高揚感が漂う。会場全体がこれから始まる一夜を予感させる緊張感に包まれていた。そして淡い紫色の光と共に登場したのがSuchmosのボーカルであるYONCEら計6人。強めのイントロダクションと共に会場は拍手に包まれる。その瞬間から『Zepp Haneda』はSuchmosの世界観に引き込まれていった。そして歓声とともに披露した1曲目は『Pacific』だ。続く2曲目『Eye to Eye』がスタートすると同時に、ステージ背後の幕が大きく開き、会場は一転して鮮やかな青い光に包まれた。その視覚的演出が楽曲の疾走感をさらに際立たせる中、YONCEが「羽田、よろしく」と短く投げかけると、フロアからは大きな歓声が巻き起こる。序盤から完全に観客の心を掴み、ライブの主導権を握った瞬間だった。その後は『ROMA』、『Ghost』、『DUMBO』とアップテンポな曲を披露し、さらに会場の熱を温めていく。

観客がそれぞれのスタイルで音に身を委ね、フロア全体が心地よい揺らぎに包まれる中、YONCEは穏やかな表情で「ご自由に踊って」とひと言添える。その言葉を合図に、会場の空気はさらに解き放たれていった。続いて披露された『FRUITS』、そして『MINT』では、タイトで洗練されたリズムが観客の身体を自然と動かし、フロアには手拍子と歓声が重なり合う。Suchmosならではのグルーヴが、観る者と演奏する者との境界を曖昧にし、会場をひとつの大きなリズムへと変えていく。その後、『Alright』『To You』『Hit Me, Thunder』といった楽曲群では、序盤とは打って変わって、ゆったりとしたイントロダクションからメロウで温度感のある世界観を丁寧に構築。抑制の効いた演奏とYONCEのしなやかなボーカルが重なり合い、フロアには落ち着いた高揚感が広がっていく。さらに『Marry』へとつながる流れでは、時間の流れさえも緩やかに感じさせるようなスローリーなムードが会場全体を包み込み、観客は静かに、しかし深く楽曲の余韻に浸っていた。

YONCEから「残り5曲です」と告げられると、その言葉を遮るようにフロアからは一斉に「ええー!」という惜しむ声が上がる。彼らの復活後、この日が14本目のライブとなることに触れつつ、続けて会場の話題へと移っていった。「もっと大きな会場でやればいいのに、と思う人もいるかもしれない」と前置きしながらも、今回の会場選びについては「お客さんとの距離が近いのがいい」と語り、あくまで“ライブハウスで鳴らす音楽”を大切にする姿勢を示す。さらに「近いうちに何かお知らせできると思う」と含みを持たせた一言で、会場の期待感を一層高めてみせた。「もっといろんな音楽を知るべきだと思う」とYONCEなりのメッセージを投げかける。その語り口は決して声高ではなく、しかしバンドとしての芯の強さを感じさせるものだった。

MCが終わると、空気を切り替えるように『A.G.I.T.』を披露。タイトで攻撃的なグルーヴがフロアを再び熱狂の渦へと引き戻す。続けて演奏されたのは、彼らを象徴する楽曲のひとつ『STAY TUNE』。イントロが鳴った瞬間に沸き起こる歓声とともに、会場全体の演出はより大胆さを増し、照明とサウンドが一体となって『Zepp Haneda』を最高潮へと導いていった。続いて演奏された『808』では、会場は一転して緑のライトに照らされ、どこか幻想的で奥行きのある空間へと変貌。ミニマルでありながらも芯のあるサウンドが際立ち、Suchmosというバンドの真髄を改めて印象付ける瞬間となった。

その流れのまま披露された『VOLT-AGE』では、赤いライトが大胆にフロアを染め上げ、勢いはさらに加速。躍動感あふれる演奏が観客のボルテージを極限まで引き上げていく。そしてYONCEが「ラストチューン、come on DJ!」と叫ぶと、最後に披露されたのは『YMM』。この日一番とも言える歓声と熱気が会場を包み込み、フロアは完全に解放された空気に満たされていた。すべての演奏を終えると、彼らは短く「ありがとう」と言い残し、颯爽とステージを後にした。しかし、その余韻が消えることはなく、フロアから湧き上がった歓声と拍手はやがてアンコールを求める大きなうねりへと変わり、会場全体を包み込んでいく。ほどなくして、会場中央にスポットライトが当たり、再びSuchmosの6人が姿を現す。簡潔なMCを挟んだのち、アンコール1曲目として披露されたのは『Whole of Flower』。ゆったりと響くピアノの音色が、先ほどまでの熱気を優しく包み込み、フロアには穏やかで温度のある空気が広がっていった。続いて演奏された『Life Easy』では、その余韻を大切にするかのように、肩の力が抜けたグルーヴが会場を満たす。観客は静かに、しかし確かな充足感をもって楽曲を受け止め、ライブはゆっくりと終幕へと向かっていった。そこにあったのは、派手な演出や過剰な言葉ではなく、音楽そのものによってこのツアーを締めくくるSuchmosの姿だった。本公演は、彼らの現在地とこれからを強く印象付ける、象徴的な一夜となった。

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エディター
Ayumu Nakamura/Hypebeast
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Takayuki Okada
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