國母和宏の右脚にタトゥーアーティスト Gakkin が刻んだ尾長鶏が MA-1 になった | Interviews
〈NOMADIK 777〉とGakkinによるコラボレーションジャケット“777 x Gakkin / ONAGA jacket”の誕生背景をふたりに聞いた
國母和宏の右脚にタトゥーアーティスト Gakkin が刻んだ尾長鶏が MA-1 になった | Interviews
〈NOMADIK 777〉とGakkinによるコラボレーションジャケット“777 x Gakkin / ONAGA jacket”の誕生背景をふたりに聞いた
スノーボードウェアブランド〈NOMADIK(ノマディック)〉による、國母和宏のシグネチャーライン〈NOMADIK 777(ノマディック スリーセブン)〉が、タトゥーアーティスト Gakkin(ガッキン)との限定コラボレーションジャケット“777 x Gakkin / ONAGA jacket”を発売する。かねてよりGakkinの独創的な作品に強く惹かれていた國母が、自身の着用映像をSNSに投稿したことを契機に交流が始まり、コラボレーションと映像制作、そしてタトゥー施術が1本の線で結ばれていった。2025年10月、奈良・吉野の山中にある茶室で、Gakkinは國母の右脚に尾長鶏の荘厳なモチーフを刻む。やり直しのきかない“線”を身体に通すタトゥーと、雪面に唯一の“ライン”を刻むスノーボード──。一見離れたふたつの表現は、この場で明確に共鳴した。
その“線”はウェアへと移植される。ベースは〈NOMADIK 777〉のコラボ定番であるMA-1。背面には尾長鶏の長大な尾をダイナミックに見せる精緻な刺繍、裏地には鶏脚紋を繋いだオリジナル生地。フロントは右胸に“777”、左胸に“Gakkin”のロゴワッペンを配し、袖には鶏モチーフを散らして物語性を統一。カラーは端正なグレーのみ、シルエットは〈NOMADIK 777〉らしいルーズさと機能性を併せ持つ。國母は「飛ばずとも圧倒的な存在感」を尾長鶏に託し、利き脚である右脚に刻んだという。Gakkinは刺繍サイズと視覚重心を精査し、尾の縦方向の伸びを最大化する設計で“身体性の延長”としての装飾をウェアに翻訳した。
“777 x Gakkin / ONAGA jacket”は限定100着、価格は64,900円(税込)。発売日は2025年11月11日(火)、〈NOMADIK〉および〈Gakkin〉の公式ウェブショップのみで販売される。量産のための妥協や過度な装飾を排し、ふたりだけの意思決定で磨かれた1着。タトゥーというパーソナルな祈りと、衣服という日常の表現が同じ“線”でつながった成果だ。ここからは、奈良での施術からジャケット完成までを辿る、國母和宏とGakkinへのQ&Aを届けたい。
自分は滑り出す前に心を落ち着かせ、信じるための“お守り”としてタトゥーを刻んできた歴史がある(國母)
Hypebeast:まずNOMADIK 777とは國母さんにとってどんなラインなのでしょうか?
國母和宏(以下K):始まったのは約5年前。もともと仲間の工藤洸平がやっていたスノーウェアであるNOMADIKで、自分も日本に拠点を戻すタイミングで一緒にやろうと声をかけたのが起点です。自分が実際に滑る時に着るものでもあるから、毎作すごく特別な位置づけになっています。
そんなNOMADIK 777の通常ラインとは別に、今回の限定コラボジャケット(777 x Gakkin / ONAGA jacket)はどのような位置づけに?
K:MA-1ベースで、毎年1回“アーティスト・コラボアイテム”を発表しているんです。今回がGakkinさんとのコラボで3作目になります。
Gakkinさんに惹かれたきっかけは?
K:『Instagram』のGakkinさんの投稿で、作品を見続けて憧れていました。そんななか、自分がGakkinさんのジャケットを着て滑っている映像を上げたら、Gakkinさんから反応をもらってやり取りが始まったんです。そこで、僕から「一緒にやりたい」と伝えて、本プロジェクトが始まりました。
ふたりが初めて対面したのは?
K:実際に会ったのは“彫る日”が初めて。今年の夏、奈良で施術してもらいました。
そうなんですね。ちなみにロケーションが奈良だったのは?
Gakkin(以下G):アムステルダムが拠点だったのですが、夏は仕事で日本の色んな場所に滞在することも多くて、今年はたまたまその時期、東京から奈良に移動して滞在してました。せっかくなら奈良の環境の良い場所で、撮影などもできるようにと、吉野の山中にある文化財的な場所を借りて、ここでタトゥーも彫ることにしました。そして、國母さんが奈良に来てくれて、前夜は近くの旅館に泊まって、一緒にご飯を食べて、自然に打ち解けていきました。まるで、昔からの知り合いだったように。
タトゥー文化とスノーボード文化、どこで共鳴したと思われますか?
K:自分は滑り出す前に心を落ち着かせ、信じるための“お守り”としてタトゥーを刻んできた歴史があるんです。雪面に刻む“ライン”への執着も、タトゥーの“線”と近いかもしれません。
G:どちらも“やり直しのきかない”表現だと思う。スノーボードで命がけで1本のラインを通す感覚と、タトゥーで肌に刻む1回性には強いリンクがありますね。
國母さんの右脚に刻んだモチーフは“尾長鶏”でした。この“尾長鶏”を選んだ理由をお伺いしても良いでしょうか?
K:昔はハーフパイプで“跳ぶ”見せ方が中心だったんですが、今は“滑って見せる”が主軸。飛ばなくても“存在が立つ”象徴を刻みたくて尾長鶏にしたんです。右脚の理由は利き足だから。
G:尾長鶏は名の通り尾が長い。刺繍サイズや見え方を考え、縦方向の伸びをどう強調するかを意識しました。
いま、國母さんは、スノーボードの映像制作に力を入れていると思いますが、そこに関してのこだわりをお伺いしても?
K:20年プロをやって膨大な映像が世に出ましたけど、“20年後も見られるカット”は、実は、多くないんです。1本を残すために1年かけて場所とタイミングを見極める。雪面に刻まれたラインを見れば“誰の滑りか”がわかるレベルまで磨きたい。
いっぽう、Gakkinさん流の“身体性の美学”などありますか?
G:タトゥーは“身体装飾”。入れた後に身体の見え方すら変えられるんです。つまり、配置と曲線で腕を長く、脚を長く見せることも設計することも可能。で、服も本来は立体の身体に乗るもの。総柄シャツの見え方など、立体で成立するデザインという点で、タトゥーとファッションは近い表現だと思う。
なぜにMA-1だったのでしょう?
K:自分は山でも街でも同じ“自分の服”でいきたい。ヘルメットやGORE-TEXで“標高を上げる”方向より、MA-1とサングラスで行ける場所で“ヤバい”ことを残すのが自分のスタイルなんです。
裏地の“鶏脚紋”やワッペンの設計は、どう考えたのでしょう?
G:リバーシブル対応という話だったので、表が大きな刺繍なら裏は柄で世界観を補強したいと考えました。袖のワッペンまで“ニワトリ”モチーフで統一。日章旗を折り紙化して鶏に見立てた意匠など、全体をひとつの物語に収めました。
K:こちらの“尾長鶏でいきたい”という意図を伝え、ビジュアルは基本的にGakkinさんにお任せしました。出てきた案が“最高”で、ほぼ無修正でした。
限定100着にしたのは?
K:数字に特別な意味はないですよ。手が届く生産規模で、溢れさせないバランスを取ると100着ぐらいがちょうど良いかな、と。自分たちのウェアづくりは基本“年1回”。毎回が本当に特別になっています。
100人だけが、國母さんの右脚と同じ尾長鶏を背負えることになります。プロとして異なるフィールドで活動するふたりによって生まれたこのジャケットを、どんな気持ちで着てほしいですか?
K:まずはモノとして上がって、素直に“着たい”と思ってほしい。MA-1だからこそ、ガンガン着てボロボロにしてほしい。自分は、山でも街でも“同じ自分の服”で臨むことが多い。場所によって装備を変えるより、同じスタイルのままどこまで行けるかに挑むのが自分の美学になっています。
G:自分も“着古して格好良い”派。汚れを恐れずワンシーズン着倒すくらいでちょうどいいと思う。友人のブランド以外での大きなコラボはまだ少ないんですが、こういう“人ベース”の関係で作るのが自分には合っている。タトゥー中はさすがにMA-1を着づらいけど(笑)、基本は“好きなものを遠慮なく着倒す”。これからも友人たちと作ったものを自分で着ていきたいですね。
タトゥーとスノーボード、そしてウェアのあいだに通った1本の“線”。このコラボレーションは、まさにその延長線上にあるのかもしれません。これを着て、着まくって、着用者の歴史を刻んでいくのも良いジャケットですね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
國母和宏
北海道出身のスノーボードライダー。幼少期から国内外の大会で頭角を現し、2000年代後半にはハーフパイプ競技で日本代表として世界の舞台に立つ。独自のスタイルと美しいライン取りで知られ、映像作品やバックカントリーでの表現活動へとフィールドを拡張。現在は、自身の滑りを追求するウェアライン〈NOMADIK 777〉を通じ、ファッションとスノーボードの境界を超えたクリエイションを展開している。固定観念にとらわれず、“滑る”ことそのものを芸術的に再定義する存在。
Gakkin(ガッキン)
日本出身、オランダ・アムステルダムを拠点に活動するタトゥーアーティスト。独自の筆致で描く生物的な文様と植物的なモチーフを特徴とし、流麗な黒の線による構成美で世界的な評価を得る。国内外のアーティストやブランドとのコラボレーションも多く、タトゥーを“身体装飾”としてだけでなく、造形・デザインの領域へと拡張。アートワークには東洋的精神性と現代的感性が共存しており、その世界観は彫刻・ファッション・映像など多様な表現にも影響を与えている。






















