サン・カンによる映画『Drifter』のヒーローカー Lola (TOYOTA AE86ベース)を独占初公開
俳優兼監督の彼がこだわった“Lola”はAE86一択。スタントも自分でこなすための本気仕様だ
俳優であり映画監督としても知られるサン・カン(Sung Kang)が手がける新作カーアクション映画『Drifter(ドリフター)』が近日公開予定。その劇中で登場するヒーローカー“Lola(ローラ)”の姿が初公開された。
本作は、いわばアンダードッグの物語。カンが地元サーキットで働くなかでドリフトへの情熱と才能に目覚める主人公を演じる。ハイスピードのスタントと精緻なドライブ技術が要求される長編だけに、登場するクルマは厳密な仕様に作り込み、酷使に耐え、そして強烈な印象を残すスタイリングである必要がある。
今回、そのクルマ──映画のヒーローカーである「トヨタ(Toyota)」AE86を特別に先行チェックする機会を得た。“Lola”は、カンが米国でのAE86の国内名“カローラ(Corolla)”にちなみ命名。「Rocket Bunny(ロケットバニー)」のワイドボディに換装した、いまやカルト的人気を誇るクラシック“ハチロク”の1台だ。AE86は、その独特のスタイルとノスタルジックな趣だけでなく、フロントエンジン・後輪駆動ならではのダイナミックなハンドリングと、モディファイとチューニングへの懐の深さで、長らくコミュニティに愛されてきた。伝説的な日本のアニメ『頭文字D』では、物語を通してのAE86が主人公の愛機として活躍。これが世界中のカーファン、ドリフトファン、カルチャー関係者のあいだで同車を伝説へと押し上げた。
「心から好きになれるものを見つけ、その情熱を分かち合う仲間に囲まれたとき、何だって可能になる。観客にはそう感じて劇場を後にしてほしい」
Lolaについて
カンは『Drifter』の制作にあたり、「ドリフト映画にハチロクが登場しないなんてありえない」と即答したという。「Drifterのヒーローカーに選ぶなら、1986年式のGTSカローラ以外に考えられなかった。この車は物語の中で進化していくんだ。最初はドリフト練習用のビートアップカー(使い込まれた中古車)として登場し、次に低予算のチューニングマシンへ、そして最終的にはフルビルドされた完成形へと成長していく」と語った。『Drifter』におけるAE86は、単なるマシンではなく、主人公の情熱と成長を象徴する存在として描かれているのだ。
「この車両は実は、僕のプロジェクトカーの1台だったんだ」とプロドリフトドライバーであり、本作のメイン・スタントドライバー 吉原大二郎(Dai Yoshihara)が説明。「パワートレインはシボレーのLS3 V8。AE86にはまず想像しない組み合わせだけど、映画としては理にかなっていた」
映画の詳細はまだ正式発表されていないが、この改造から『Drifter』と主人公の文脈が少し見えてくる。カンもエンジンと車両の関係性に触れてこう続ける。「LS3が登場するのは、主人公のメンター的な立ち位置のキャラクターが娘のコルベットからエンジンを提供し、プロの舞台で戦えるように助ける場面。情熱と可能性を受け継いでいくことを象徴するシーンなんだ」
パワーの上積みに加えて、“Lola”はフロント周りを強化しトレッドを拡げる新サスペンションを導入。リヤはスープラやセリカのリヤエンドに接続するGForce GSRギアボックス、さらにKWサスペンションとT3リンクなど、見どころは尽きない。「ヨコハマタイヤ、レーシングサービスワタナベ、パンデム/ロケットバニー、スパルコ──コミュニティからは本当に多くのサポートを受けた。みんながパーツと知見を寄せてくれたんだ」とカンは謙虚に語り、吉原とクルーも大きくうなずく。「クルマの世界にどれだけの愛と結束があるかを物語っているよ」
もちろん、日本向けに設計された車体にアメリカン・アイコンを積むというアイロニーを2人が理解していないわけではない。なぜLS3を選んだのかと問うと、吉原は「ドリフトのシークエンスに必要なトルクと信頼性が欲しかった」と説明。「個人的には86は4気筒のままが好みだけど、撮影の要件にはこのセットアップがベストだった」と続けた。
プライベート取材では、もう1台のプロジェクトカーである「レクサス(Lexus)」のAE86 BEV Conceptも並走し、クラシックなハチロクに広がる可能性の二面性をあぶり出した。
「レクサス・インターナショナル」が主導するこのフル電動プロトタイプは、同ブランドおよび「トヨタ」の技術を採用している。とりわけNX 450h+ PHEVのリチウムイオンバッテリーとTundra Hybrid i-Force Maxの電動モーターを積んでいるのが特徴だ。実験機であるAE86 BEVは、ハチロクへの革新的なアプローチだけでなく、控えめな出力、バランスの取れたハンドリング、軽量ボディといった核となるアイデンティティをしっかり保っている点でも強く興味をそそった。「レクサス」はオリジナルが持つ1.6L 4A-GEの高回転サウンド(スピーカーからの再生ではあるが)を残し、さらには驚くべきことに、実際に作動するショートストロークのマニュアルトランスミッションとクラッチまで搭載。エンストの再現すら可能だ。
2台の特別なプロジェクトカーを目の当たりにして、忘れがたい余韻が残った。「レクサス」はAE86のようなアイコニックなクラシックカーを取り巻くグローバルなカルチャーを明確に理解し、その価値を守りながら、次世代が楽しめるオール電動の世界へと橋渡しする革新的で魅力的な方法を同時に模索している。
『Drifter』について
作品の詳細を尋ねると、「Drifterはドリフトだけの映画じゃない」と、カンが補足した。「希望を見つける物語なんだ。人生で迷子になった誰かが、カー・コミュニティを通じて目的を見いだしていく──そんなヒーローズ・ジャーニーだ」
とはいえ、この新作はカンといえば思い浮かぶ『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(The Fast & The Furious:Tokyo Drift)』とはどう違うのか?「TOKYO DRIFTから19年が経ち、クルマ文化を体現したフランチャイズの一員でいられることに感謝している。でもDrifterは方向性が違う。アクションシーンはHOONIGANのブライアン・スコット(Brian Scotto)と組み、彼が監督を務め、スタントドライビングは吉原が担当した。アダム・LZ(Adam LZ)、チェルシー・デノファ(Chelsea DeNofa)、ライアン・ターク(Ryan Tuerck)ほか多数も出演する。まさに本物のドリフターたちによるオールスターキャストだ」
最後に、『Drifter』に込めた真意、観客に持ち帰ってほしいメッセージは何かも尋ねた。「この映画は僕に希望をくれた。ハリウッドでは、僕のような見た目で、複層的で誠実な物語を語ろうとする人間にチャンスは少ない。でもクルマのコミュニティを通じて、同じ夢を信じる仲間に出会えたんだ」
「この映画は、人が集い、絶望を乗り越え、クルマを通じて意味を見つける物語。心から好きだと思えるものを見つけ、その情熱を分かち合う仲間に囲まれたとき、何だって可能になる──そう感じて劇場を後にしてほしい」



















