PUMA x PHANTACi x WHIZLIMITED x mita sneakers の4者コラボの真相
アジアのクリエイターたちが、名作プーマ スウェードを奇想天外な発想で美しくリアレンジした
ストリートウェアブランド〈PHANTACi(ファンタシー)〉主導のもと、クリエイターが夢の競演を果たした。アジアのポップ・キングといわれるジェイ・チョウ(Jay Chou)率いる〈PHANTACi〉の共同設立者のリック・チャン(Ric Chiang)、いまや東京屈指のブランドにのぼりつめた〈WHIZLIMITED(ウィズ リミテッド)〉の下野宏明、そしてスニーカーシーンを牽引する〈mita sneakers(ミタスニーカーズ)〉の国井栄之。キーパーソンが一堂に会し、〈PUMA〉のアイコンである“スウェード”をベースとした4者コラボの1足を発表することに。そのローンチを前に、その思いの丈をそれぞれが語ってくれた。
気のおけない仲間とともに、それぞれの持ち味が生きる落としどころをとことん追求した。これこそがほんとうのコラボだと思う
Hypebeast:前代未聞のコラボレーション。まずはその経緯を教えてください。
リック・チャン(以下、R):PHANTACiは創業して今年で18年目を迎えます。アニバーサリーイヤーをみずから祝うべく、信頼に足る仲間を集めました。下野さんとはかれこれ16年にわたる付き合い。2013年にはコラボレーションもしています。真っ白なG-SHOCKをつくりましたね。国井さんとも下野さんを通して出会い、意気投合。酒を飲めば、いつかみんなで面白いことをしたいねと夜更けまで語り明かしたものです。
アニバーサリーイヤーといえば10とか20とかキリのいい年をいうことが多いと思います。18年というのはなにかの節目の年になるのでしょうか?
R:ジェイ・チョウの誕生日が1月18日なのです。だから、18はジェイのラッキーナンバーであり、ブランドにとっても意味のある数字なんです。
なるほど。それはまさしくアニバーサリーですね。そしてそんな年に仕込んだコラボレーション・モデルのベースはPUMA SUEDE(プーマ スウェード)でした。
R:じつはPUMAとのコラボレーションはこれで7度目。記念すべき年に選ぶならPUMA以外は考えられませんでした。
下野宏明(以下、S):ベースモデルはモデルは全員一致でPUMA SUEDEに決まりました。時代を超えて愛されるモデルですからね。ミニマルを志向するぼくにとっても格好のキャンバスでした。
PUMA SUEDEは元来、ミニマルなモデルですが、トーン・オン・トーンでまとめたストイックなデザインはその目盛りをぐぐっと進めていますね。みなさんのロゴを散らしたバランスも絶妙です。(手にとって、一瞬、言葉を失う)このフォームストリップ、取り外せるんですね!
国井栄之(以下、K):クラシックな外観をキープしたまま細部のディテールで魅せたい下野くんとスニーカー単体での存在感を表現したいリックとのせめぎ合いから生まれたものです。
S:リックはブランドカラーであるピンクをアグレッシブに使いたかった。しかし残念ながらミニマルなデザインワークにおいては少々インパクトが強いカラーです。
K:そこでひらめいたのがフォームストリップを面ファスナー仕様にして、面ファスナーのベースに色を入れるというもの。面ファスナーを剥がせばピンクのフォームストリップが現れるという寸法です(逆サイドには対抗色のブルーを使っている)。
S:結果的にぼくが考えていたアイデアも生かされることになりました。もともとコバに色を差したいと思っていたんです。面ファスナーをほんの少しずらしてとめれば同等の効果が得られます。
K:口幅ったいけれど、そこにはダイバーシティへの賛意も込められています。履き手みずから好みのスタイルにアップデートできるから、履く人、着る服を選びません。
S:考えてみればPUMAにはそのポテンシャルがあった。90年代のPUMAはノーマルとファット(のシューレース)を同梱していました。それはストリートカルチャーと密接だった同モデルのバックボーンに応えるものでした。この歴史にオマージュを捧げるべく、当モデルでは黒、白、ピンクのファットシューレースを標準装備としました。
K:シュータンにもギミックを仕込んでいます。PUMAの旧タグをプリントしたネームタグもこだわりのひとつですが、そのタグ、めくれますか?
(タグは上下がっつりステッチがかかっていた。指をこじ入れ、のぞき込むと……)〈PHANTACi〉のロゴが刺繍されている!
K:アナウンスするかどうか最後まで悩んだ部分です。手にとってはじめて知る事実にニンマリする――というストーリーはたまらないものがありますからね。
S:かかとのロゴも(シュータン同様のギミックで)マグネットでとめる、あるいは縫いつけるというアイデアがありましたが、前者は耐久性に難があり、構造上ぐるりと縫わなければならない後者は最後まで気づかれない危険がある(笑)。最終的にPHANTACiとPUMAのロゴを左右に振り分けるこのかたちに落ち着きました。
PUMA SUEDEというヘリテージの世界観を担保しつつ、みなさんの思いやこだわりがものの見事に昇華している。これぞコラボの鑑のような1足ですね。発売が待ちきれません。
S:ごめんなさい。これ、日本では販売しないんです。PHANTACiのサイトにアクセスすれば日本からも買うことができますが……。ほら、なんでもどこでも手に入る世の中ですからね。そうじゃない売り方があってもいいかなって。
K:コラボってのは非効率の最たるもの。現在となっては稀になってしまった手に入れるまでのストーリーに深みが出るそんな売り方だと思うんです。
リックさん、あらためて感想を聞かせてください。
R:めちゃくちゃハッピーです。苦労があればあるほどできあがったときの感動は大きいっていうけれど、実際、その通りでしたね。
●商品情報
PUMA SUEDE(プーマ スウェード)をベースに〈PHANTACi〉のPHロゴ、〈WHIZLIMITED〉のHEARTBEATロゴ、〈mita sneakers〉を象徴するチェーンリンクフェンスのグラフィックを採り入れた。フォームストリップは面ファスナー仕様。剥がせばブルーとピンクのカラーウェイが現れる。7月13日(土)より〈PHANTACi〉の店舗およびオンライン、7月16日(火)より〈PUMA〉チャイナにて発売される。
https://www.phantacico.com
●プロフィール
リック・チャン(Ric Chiang)
〈PHANTACi〉共同設立者
アジアで絶大な人気を誇るポップスター、ジェイ・チョウ(Jay Chou)とともに2006年、台北で〈PHANTACi〉を創業。
下野宏明
〈WHIZLIMITED〉デザイナー
2000年に〈Whiz(ウィズ)〉の名でデビュー、03年に〈WHIZLIMITED〉に改名、同年、原宿にフラッグシップストア『LUMP』をオープンした。
国井栄之
〈mita sneakers〉クリエイティブディレクター
1996年にアメ横の老舗〈mita sneakers〉に入社。コラボレーションや別注のパイオニアとして業界を盛り上げてきた。