ドリス・ヴァン・ノッテンのラストダンス
38年、150回のコレクションを成し遂げた偉大なデザイナーの幕引き
ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)率いる〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉が話題の中心となっていた直近2シーズンだが、今季は間違いなく、66歳でデザイナーとしての幕引きを迎えるドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)のためのファッションウィークだった。
パリコレも大詰めとなった6月22日(現地時間)のトリとして、パリ郊外のラ・クールヌーヴ地区のウェアハウスにて開催された2025年春夏コレクション。会場に入ると真っ先に目に入るのは、中央に置かれた四面体の巨大なスクリーン。そこにはブランド設立からの過去のコレクション映像が映し出され、改めて終わりを実感させる演出に。
ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)、トム・ブラウン(Thom Browne)、アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)、ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)、ヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)ら、ドリスと親交のあるデザイナー陣も来場し、1時間半ほど同スペースでカクテルを楽しんだゲストたち。ベールに包まれていたショー会場のカーテンが開かれると、そこには銀箔の敷き詰められた眩い華道が姿を現した。
ヒラヒラと揺れる銀箔の上を歩いてきた最初のモデルは、1991年に開催されたブランド初のショーと同じくアライン・ゴッスアン(Alain Gossuin)という、憎いキャスティングで初っ端からゲストを心を掴む。シャープなロングコートやテーラリングを軸に、〈Dries Van Noten〉らしい華やかな刺繍や装飾が光るピースはもちろんのこと、中が透けて見えるオーガンザやカラーフィルムのような透明/半透明の素材を多くのルックで使用し、可視的なレイヤードを展開。この透明素材はベルギーのアーティスト エディス・デキント(Edith Dekyndt)からインスパイアされているという。カラーリングは、終盤に向かうにつれて、パステル系の鮮やかな色味に。また、銀箔と同じくくらい眩いシルバーやゴールドのジャケットやショーツなども登場。〈Dries Van Noten〉の十八番である花柄も10以上のルックで用いられていたが、プリントには日本の伝統芸術である墨流しの技法が採用された。そして、フィナーレでは肩を組み合ったモデルたちが、笑顔で駆け抜け、デザイナー ドリス・ヴァン・ノッテンのキャリアが終幕。
そのまま同会場で行われたアフターイベントでは、先述したスクリーンの中に仕込まれていた巨大なミラーボールが出現。ゲストはしんみりする暇もなく、パーティへと誘われた。バックステージでの囲み取材を終え、フロアで自らが中心となってゲストと共に踊り狂うドリス。デザイナーとしては引退となるが、今後もアドバイザー的な立ち位置としてブランドに関与していくという。ドリス自身とブランドの新たなチャプターに期待しよう。