Boys of Summer の終わらない夏 | Interviews
野村訓市を交え、世界初となる〈Boys of Summer〉へのインタビューを敢行




















6月15日(土)から、『Ron Herman(ロンハーマン)』の運営する東京・千駄ヶ谷の『UNDER R』にて、アメリカ・ロサンゼルス発の〈Boys of Summer(ボーイズ オブ サマー)〉を中心としたポップアップが開催される。
『Supreme LA』の初期メンバーでもあるジェフ・ カッター(Jeff Kutter)と、アーティストのアレクシス・ロス(Alexis Ross)が手掛ける〈Boys of Summer〉。2015年に発表されたジェフによる同名のスケート映像作品がその起源だ。DIYで制作された彼らのビデオは、ジェフの呼びかけのもとに集結した数々のレジェンドスケーターが参加していることも話題に。そこから派生した不定期リリースの(ユルい)アパレルラインは、映像の世界観をそのまま落とし込んだユーモア溢れる大胆なグラフィックデザインで、コアなファンを多く持つ。
〈Vans(ヴァンズ)〉や「TRIPSTER(トリップスター)」とのコラボレーションを記憶している方も少なくないと思うが、いまだ謎に包まれている〈Boys of Summer〉。『Hypebeast』は、会期を前に絶賛設営中の〈Boys of Summer〉クルーを直撃。彼らと旧知の仲である野村訓市を交え、ジェフ・カッターにインタビューを敢行した。しかも、ジェフによれば〈Boys of Summer〉としてインタビューを受けるのは、世界初!だという。〈Boys of Summer〉の歴史から“楽しむ”ことが最優先だという彼らのスタンスまでを語ってくれた。
Hypebeast:Boys of Summerはどうやってスタートしたのですか?
ジェフ・カッター(以下、J):まずはじめに、Boys of Summerはクルー。友達の集まり。ブランドではないんだ。最初は自分たちで自分たちのためにスケートビデオを作っていただけなんだけど、そのうちに「これはブランドなんだから、スケートトリップをして、ビデオを制作する資金集めのために何かしなければならない」という内輪のジョークが始まったんだ。だから、Tシャツを売ったり、スウェットを売ったり、イベントをやったり、とにかく友達を大勢集めてスケートをやっていく必要があったんだ。そもそもの始まりは、SupremeのCherryの撮影のために、ティノ・ラゾ(Tino Razo)、アンドリュー・アレン(Andrew Allen)、ルーカス・ベルセッティ(Lucas Vercetti)、ジェリー・スー(Jerry Hsu)たちとニューヨークへ行った時。2013年だったかな。ウィリアム・ストロベック(William Strobeck)と撮影していたわけだけど、その合間に自分たちでも動画を回し始めたんだよね。お互いを撮りあって。マジなスケートトリックの間のビハインドザシーン的なちょっとしたもの。LAに戻ってからも撮り続けて。止まらなくなったんだよ。最初のBoys of Summerのビデオが出るまで撮影に1年半もかかった。僕らは本当に遅いからね(笑)。
クリエイティブ・ディレクターのアレクシス・ロスが加わった経緯は?
J:アレクシスは、ドジャースのファンで、ミューラルとかにBoys of Summer(※ブルックリン・ドジャーズの伝記のタイトル)ってタギングしてたんだ。最初のビデオを作っている時に、ドン・ヘンリー(Don Henley)の“The Boys of Summer”という曲を映像の中で使いたいと思って。Boys of Summerといえば、アレクシスだったから、問題ないか聞きに行ったわけ。そしたら「ビデオのタイトルをBoys of Summerにしたら?」って言われたから「君が一緒にやってくれるなら、そうするよ」って答えた。彼から提案されるまでは、ビデオのタイトルはなかったと思う。だから、Boys of Summerの所有権はアレクシスにあるんだ。もともと彼が描いていたワードだからね。意図的にBoys of Summerという会社を作りたかったわけじゃなくて、友達みんなを集めてビデオを作りたかっただけ。そこにアレクシスが手伝ってくれた感じかな。彼はスケートのことは一切わからないけど、Boys of Summerに関係するアートワークやビジュアルに関することは全てやってくれてるよ。僕はビデオに出演するスケーターを決めるところから編集までを全てやっている。
アレクシスがスケートをしない唯一のメンバーですか?
J:いや、スケーターじゃないメンバーは何人かいる。Kun(野村)もそうだしね。Boys of Summerも最初期メンバーだよ。彼もビデオに出演しているだろう。Boys of Summerのメンバーになりたければ、僕らのビデオに映らないといけない。それが唯一の方法。
野村訓市(以下、N):俺のMild Bunchと一緒だね。スウェットを買いたがる人はたくさんいるけど、DJをやらないともらえない。Boys of Summerのビデオは他のスケートビデオと違って、笑える内容だけど、コンセプトは何?
J:Boys of Summerの最初のビデオを作った時は、フルレングスを作ったことがなかったんだ。古い映画のシーンを使って、とにかく笑える内容にしたかったんだ。アレクシスも僕の編集したビデオを見たことなかったので、どんな映画を使うのか?どんな音楽を使うのか?って聞かれたよ。でも、全く新しいものを作ったとは思わないね。以前にも、古い映画を使ったfunnyなスケートビデオは存在してた。ConsolidatedやPlanet Earthだったり、僕の好きなスケートビデオは既に古い映画を使ってたね。Boys of Summerは、音楽、映画、スタイルなど、自分の好きな要素を拝借して詰め込んでる。アレクシスのアートディレクションもそう。クールだと思う企業ロゴを勝手に使ってるよ。僕らは“盗んだ”もので、無料の作品を作っている。全てのビデオをフリーダウンロードにしているよ。だから、Boys of Summerはブランドじゃない。だって、お金のためにやってないからね。今回は、大金を使って日本に22人も連れてきて、遊んでるだけ。会社全体がKunのライフスタイルをモデルにしてるよ(笑)。
N : スケートボードは、大きくなり過ぎてシリアスになり過ぎたと思わない?今やオリンピック競技だし、スケーターがアスリートになった感じ。X Gamesを見てても、相当練習しないとあんなトリックはできないだろう。ビールを飲みながら、ただ楽しくやってる君らとは違う(笑)。
J:僕が思うに、いまだにユーモアを忘れてないのは、PALACE SKATEBOARDS(パレス スケートボード)ぐらいじゃないかな。だから、いつも彼らのことは注目してるね。他のところは、とても金銭的な面で左右されるようになったと思う。僕らの最初のビデオなんて、大体の素材をiPhoneで撮ってるんだよ。魚眼レンズを付けて。そこに使われなかった残り物の映像も組み合わせて、ビデオ全体を制作したんだ。それをマジな映画館でマジに上映したわけ。当時はInstagram(インスタグラム)のアカウントも持ってなかった。エリック・コストン(Eric Koston)、ジェイソン・ディル(Jason Dill)、ジノ・イアヌッチ(Gino Iannucci)とかたくさんの人に出てもらったけど、誰もお金なんてもらってない。僕らは楽しむことが全てなんだ。だから、いつの日かそれがつまらないと思って、誰もやりたがらなくなったら、もうやらなくなるだろう。永遠だとは思わないけど、できる限り長くやりたいね。
N:季節的なものでしょ。“夏”が終われば終わる(笑)。でも永遠を模索してるわけだよね?
J:おっしゃる通り。
N:こうやって大勢で日本に来たわけだけど、Boys of Summerに出たいってスケーターがいたとして、君にクリップを送ってもいいわけ?
J:うーん、そういうのを受け付けてるわけじゃないんだよね。出演者は僕が全部決めているけど、自分が気に入った人たちだね。古いスケートビデオの映像も勝手に使ってたりするから、出演者を募集することはないけど、もし僕がどこかで見て気に入れば、勝手に映像を使わせてもらう(笑)。
これまでに2本のフルレングスのビデオをリリースしてますが、3本目は?
J:今まさに制作中。Vans(ヴァンズ)がスポンサーのツアービデオで、ツアー中の映像のみで構成される。だからいろいろな都市へスケートトリップしないといけない。最初はカナダ・トロントで、去年の話。それから日本に来てるけど、時間かかったね。20人以上を連れてくるのはお金がかかるから。
N:ちゃんと来れたのには感心したよ(笑)。
J:僕も同じ(笑)。さっきの繰り返しになるけど、誰も僕らのスケートトリップに参加しなくなったら潮時だと思う。だって、彼らの多くはスケートをすることでお金を稼いでいて、忙しいわけだから、毎回フリーで出てくれっていうの難しい話だと思うよ。
N:お金じゃなくて思い出を作ってるわけだね。
J:そうだね、とても良い思い出を作ってるよ。1つ面白い話がある。LAでのプレミア後に、オーストラリア・シドニーで、Oakley(オークリー)とSupply Store(サプライ ストア)のサポートのもと、上映したんだ。それが僕らの最初のトリップなんだけど、その時にグループチャットを作って。2015年だったけど、そのグループチャットが今の今まで続いてるんだよね。そのグループに加わるには、僕らのトリップに参加しないといけない。もし誰もグループチャットを使わなくなって、個別にDMするようになった時が、Boys of Summerの終わりだね。そしたら、そのグループチャットから本を作るよ(笑)。10年分全てあるからね。
そもそも2人はどうやって知り合ったのですか?
J:アレクシスを通してだったと思うけど……、いや違うSupremeのストアで会ったんだ。すごい前だけど、Kunはディルのインタビューとかをしに来てたよね。
N:もしかしたら最初に会ったのは、Vans Syndicateだったかもだけど、ジェフはまだ若くてフレッシュだったね。2006年とか2007年かな。東京で遊ぶぞ!って来たけど、時差ぼけで毎晩寝ちゃってたよね(笑)。
J:本当に懐かしいね。
次のアパレルが出るのはいつ頃ですか?
J:11月にフルラインアップで販売する予定。自分らのサイトでも売るし、日本でもいつくかのお店で取り扱われるよ。
年に何回リリースしてます?
J:多分2回ぐらいかな……そんなに多くない。
N:マーチャンダイズも映像と同じコンセプトだろ?基本、いろいろなものを勝手に取ってくる的な(笑)。
J:そうだね(笑)。次のビデオについては、あと1回大きなトリップをして、来年にはリリースできると思う。恐らく上海になると思うけど。
最後に今回のポップアップについて教えてください。
仲良しのShuがRon Hermanの人たちと知り合いで。Shuは僕らが日本に行きたがっていることを知っていたから、このスペースを使って何かできるように、Ron Hermanチームと繋げてくれたんだ。そこから、僕ら全員で日本に行くための費用を捻出するには何がベストだろう?って考えた。Boys of Summerのメンバーはみんな才能豊かだから、ヌージュ(Nuge)、コーディー・シモンズ(Cody Simmons)、スティーブ・リー(Steve Lee)のやっているBurger She Wroteと、ティノ、アコ・ジェファーソン(Ako Jefferson)、ヌージュのやっているOpen Beerを持ってくることにした。今回来日している全員が3つのうちどれかと縁がある。あとは、友人の河村康輔に缶のデザインしてもらったり、カリ・デウィット(Cali DeWitt)もアートを作ってくれた。もちろんアレクシスが全体のアートディレクションやってるよ。グッズを作ったり、楽しいイベントを作ったり、それによって、みんなが日本でスケートボードができるだろう。楽しむことが僕たちの最も重要な目的だから。パーティをするために何をやるべきだろうって感じかな。
BOYS OF SUMMER/OPEN BEER/Burger She Wrote ポップアップ
会期:6月15日(土)〜16日(日)、6月21日(金)〜6月23日(日)、6月28日(金)〜6月30日(日)
時間:11:00-17:00
会場:UNDER R
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-6-3 1F