A BATHING APE® による上海ランウェイショーの全貌
ニューヨーク、東京に続き、〈BAPE®️〉にとって3回目のビッグコレクション

ショーン・ウォザースプーン(Sean Wotherspoon)や〈©SAINT Mxxxxxx(セント マイケル)〉、はたまた〈GOD SELECTION XXX(ゴッド セレクション トリプルエックス)〉など、ストリート時代を象徴するアーティストやブランドと縦横無尽にコラボレーションを果たし、いっぽうで「APE HEAD」、「BAPE®️ CAMO」、「BABY MILO®」などのアイコンや柄は、時代や世代を超えて世界中で愛され続けてきた。〈BAPE®️(ベイプ)〉こと〈A BATHING APE®️(ア・ベイシング・エイプ)〉は2023年で創業30周年を迎え、“バスタブに浸った猿”と思いきや、飛ぶ鳥を落とす勢いどころか、飛んでいる鳥を掴んで捌くほどの勢いで、裏原新時代の台風の眼となる可能性が出てきた。
2024年6月6日、その〈A BATHING APE®〉は、ブランドにとっては中国では初となるランウェイショーを上海にて開催した。2023年6月にニューヨークで行い、2023年8月は東京で行い、それに続く世界戦略ショーの第3弾の場所がここ上海だ。東京での開催時は、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 S/S」の特別企画 “by R(バイアール)”のサポートのもとであったが、今回は上海ファッションウィーク中でもなく、まったく独立した日程での単独ショー。メインブランドの〈A BATHING APE®️〉を筆頭に、〈AAPE(エー・エイプ)〉、〈BAPE BLACK®(ベイプ ブラック)〉、〈BAPY®(ベイピー)〉、〈APEE〉、〈MR. BATHING APE®(ミスター.ベイシング エイプ)〉といったサブブランドのショーもラインアップに加えながら、合計6つのコレクション、総ルック数105体が発表された。会場には、40人の上海のファッション・インフルエンサーを含む400人のファッション関係者&クリエーターが世界中から来場。
開催場所は、歴史的名所ではなく、現代的な上海Expo-1パビリオン。エントランスを抜けると、4面全面の壁がLEDパネルで構成されており、シンプルでダイナミック。そして、そこには中国の伝統的な四方の中庭「四合院」が映し出されており、古代中国の伝統的な世界に不思議と没入できる。また来場者の多くは活気的。そこには、まるでファッションの楽しさを知ったばかりのような“期待感”が満ち溢れていた。上海で感じたこのグルーヴは、もしかしたらヨーロッパや東京では、失われたひとつかもしれない。
ショーのスタート予定時刻は19:30。それからたったの2分だけ遅れて、19:32に始まった(ミラノ・パリ・東京などはだいたい20分以上は遅れる)。
〈BAPE®️〉2024年秋冬コレクション
〈A BATHING APE®️〉のファーストルックは、レザーダウンだった。そこにはさりげなく猿のカモフラ柄がエンボスされていた。通常はナイロンのイメージのあるダウンを異素材であるレザーに乗せ替えるなど、このあたりのテクニックは〈BAPE®️〉の真骨頂であるが、今回はさらにシグネチャーを足している。レジェンドが去り、デザインチームで構成されたコレクションではあるものの、本来あるべき〈BAPE®️〉の本質は熟成され、アップデートされているぞ!とファーストルックから早速伝わってくる。このファーストルックのメンズに続いて、セカンドルックはレディスが登場。こちらは黒人女性が同じく茶色いダウンジャケットを身にまとうが、素材はコーデュロイで仕上がられた1着。同様に静かに猿のカモフラ柄だ。冒頭の2ポーズから、ストリートにおいても“リアル”で、ただ〈BAPE®️〉らしさは全開のコレクションだということが証明された。合計40ルックが登場し、迷彩の“猿”を筆頭に、お馴染みのアイコンから、ここ中国を意識した龍のモチーフなど、〈BAPE®️〉感と中国感とリアル感が凝縮されていた。
〈BAPE BLACK®️〉2024年秋冬コレクション
会場の全面LEDの壁が、黒と白で構成される水墨画風のタッチに切り替わる。ラグジュアリーなハイエンドライン、〈BAPE BLACK®️〉がバトンをつなぐ。“Black Rock Rider”をテーマに、ダブルブレステッドのジャケットからバイカージャケットまで、黒く逞しいアイテムが中心だが、すべてのルックにジュエリーの味付けがなされている。このジュエリーを“着る”ことによって、クラシックなトーンがモダンに化ける。東京でもきっと映えそうな雰囲気である。
〈BAPY®〉2024年秋冬コレクション
3番手として〈BAPY®〉のルックが登場。もともとは日本の伝統とパリのシックさが混ざり合うレディスラインだが、今回は中国文化における梅、蘭、竹、菊のエレガンスなテイストからも着想を得ているという。どフェミニンというより、ライダース型のベストなどメンズライクなデザインも多く登場し、エレガントだけれども逞しいスタイリングが目立った。
〈AAPE〉2024年秋冬コレクション
若々しく、ファッションのルールに縛られずその想像性を探求するデュフュージョンライン〈AAPE〉は、アイスホッケーカルチャーをテーマに攻めて来た。アイスホッケーのジャージやヘルメット、プロテクターからインスピレーションを受けたアイテムが散りばめられながら、ベースは程よくモダンなアメカジ。自由な服を自由に着る楽しみがある。
〈APEE〉2024年秋冬コレクション
甘くストレートなガーリー気質を表現するレディスライン〈APEE〉の今回は、ソフトピンクとアースカラーの色合いでソフトロックの美学を表現。ロックで屈託のない女性の精神が表れつつも、官能性を秘めているのが見事。ランウェイにモデルが4人ずつ登場したこともあり、このルックは、きっとみんなで着るとよりハッピーさが弾けそうだ。
〈MR. BATHING APE®〉2024年秋冬コレクション
ラストは、〈MR. BATHING APE®〉が飾った。プレッピーのテイストが爆発するような、カレッジ風のカジュアルウェアから西洋風のテーラードコートまでが軽妙にミックス。またアイウェアやスカーフ&マフラーでのニュアンス作りも巧妙で、全方位受けしそうな洒脱感がみなぎっていた。
さて、〈A BATHING APE®〉による上海ランウェイショーは、わずか30分で6ラインアップのコレクションを畳み掛けた。それぞれがブランドのキャラクターを確立しており、ときおり激しくも楽しいファッション感。そして2024年秋冬は上海フィルターを通した国際的エッセンスも加わっている。果たして次のショーの開催場所はどこになるのか。新たなるコラボレーション先は? ヨーロッパには本格進出するのか? 〈A BATHING APE®〉の次なる仕掛けまで“ワクワク”と楽しくなる、壮大なスペクタクルだった。