エディ・スリマンによる CELINE 2024年冬コレクションはサイケデリックシンフォニーに乗せて
天才作曲家エクトル・ベルリオーズが作った『幻想交響曲』(1830年作)にインスピレーションを得た豪華なコレクションで退任の噂を打ち砕く!?
エディ・スリマン(Hedi Slimane)は自身の意図を明らかにした。「LVMH」との契約交渉のさなかで〈CELINE(セリーヌ)〉離脱の噂が飛び交うなか、ここに留まることを証明したのかもしれない。エディは、またも壮大でダイナミックでロマンティックなアイディアで、〈CELINE〉の2024年冬メンズウェアコレクションを映像で初披露した。
エディは、11歳の頃に作曲家 エクトル・ベルリオーズ(Hector Berlioz)を知り、その型破りな音楽作品に熱狂したという。今回は、ベルリオーズのなかでも、もっとも有名な『幻想交響曲』(1830年作曲)からインスピレーションを得ながら、この名曲にさらなる幻想的演出を加えた。荒野のなかの滑走路というランウェイに、空から漆黒のヘリコプターがジュークボックスを配置し、1960年代のテイルフィンを備えた漆黒のアメ車が駆け抜ける。
続けて闊歩するモデルたちは、エディの純粋なサルトリアの伝統に則ったテーラリングをまとっている。細く、とにかく細く仕立てられ、「I」ラインと名付けられ、ザッツ・エディ・シルエットでありつつも、19世紀のアングロマニアにインスパイアされた1960年代のテーラリングの特徴も落とし込まれている。フロックコート、3つボタンのスーツ、手刺繍が施されたウエストコートらは、シルク、カシミア、ビキューナなど、最高級のラグジュアリーな素材から作られており、その仕立ての良さとあいまって洗練の極みのスタイルに。いっぽうで、〈Dior Homme(ディオール オム)〉時代からのエディのシグネチャーであるモーターサイクルジャケットが、1970年代の空気を帯びたフレアボトムとマッチしているのも印象的だ。
このコレクションでは、12ルックの最先端オートクチュールアンサンブルを含む、全43のルックが登場。エディのピュアなクリエイティブが全体を覆っていたが、ひとつ気になるのは映像の最後のシーン。ジュークボックスが燃えているのは、何かの終焉を告げるメッセージではないことを願う。