FACETASM x COIN PARKING DELIVERY のコラボの裏側 | Interviews

デザイナー 落合宏理と覆面現代アーティストに直接聞いてみた

ファッション 
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落合宏理の手掛ける〈FACETASM(ファセッタズム)〉が、青い獣の覆面現代アーティスト COIN PARKING DELIVERY(コイン・パーキング・デリバリー)とのコラボレートコレクションを発売した。テーマは“カレッジ”。〈FACETASM〉のブランドカラーであるスモークブルーを基調とした全9型のアイテムに、COIN PARKING DELIVERYのアイコン“白井さん”が違和感なく描かれている。そもそもこの“白井さん”という不思議なキャラクター、恐竜と宇宙人のハーフなのだとか。過去の象徴である恐竜と、未来の象徴である宇宙人が組み合わさり、現在を象徴するのが“白井さん”だ。落合とCOIN PARKING DELIVERYは、どんな思いでコレクションを作ったのか。過去から未来へと繋がるコラボレーションの裏側を2人に聞いた。

アイテムには“カレッジ”らしい“無駄”を入れています。
周りから見ると無駄なことも
僕らにとっては大事だったりする

Hypebeast:おふたりの出会いを教えてください。

落合宏理(以下、O):5年くらい前かな。FACETASMとJORDANのコラボレーションを発表するタイミングで、NIKE側から東京の若いアーティストにメインビジュアルを作ってもらいたいから探してほしいって頼まれたんです。それで、僕の信頼している原宿の古着屋さん『PORTRATION』のタク君(オーナー兼バイヤーの野中卓也)にLINEしたら、すぐにコインパの名前が挙がって。それですぐにタク君からコインパに連絡を取ってもらって、会ったのが最初ですね。

COIN PARKING DELIVERY(以下、C):まだデビューして1年くらいのときでした。でも実はタクさんとはお互い連絡先を知らなくて、オーストラリアに住む共通の友だちから夜中に電話がかかってきて、カタコトの日本語で「ジョーダン」「バスケットコート」「ファセッタズム」っていうワードだけが聞こえたんです。よくわからないからとりあえずメールくれって伝えて。そしたらまさかの落合さんだったという(笑)。

今回のコラボレーションはどのような経緯で始まったんですか?

O:JORDANとのコラボがきっかけでコインパと出会えて、(NBA選手の)ラッセル・ウェストブルック(Russell Westbrook)が履いたビジュアルを作れたのは自分の中でも大きな出来事でした。コイン君はどんどんいろんなことをやってメジャーなシーンにもいるんだけど、アウトサイダーな部分もすごく持っていて、そういう雰囲気が、自分がやっていることに近いと感じていました。友だちだからちょくちょく連絡は取っていましたが、いつものようにふとコインパと何かやりたいなと思って連絡した感じです。

コラボレーションのテーマ“カレッジ”にはどのような思いがあるのですか?

O:自分たちがリアルに好きなものや着ているものに“カレッジ”があって、コインパのグラフィックが上手くはめられるかなと。何かのスタイルじゃなくて、幅広いカテゴリーをテーマにする方がコインパのクリエイティブとFACETASMのクリエーションがうまく混ざり合うと思ったんです。

C:今回は分業に徹して、デザイナーである落合さんのデザインと、アーティストである私のデザインがどう化学変化を起こすのか、すごく楽しみなプロジェクトでした。落合さんから“カレッジ”というテーマをいただいてグラフィックを作り、それを渡して以降は全部落合さんに組み立ててもらっています。モチーフには一つ一つ意味があって、例えば今、落合さんが着ているハイネックスウェットに書いた「Sorry for the long sentence I didn’t have time today.」というフレーズは、直訳すると「時間がなくて長文でごめん」という意味。学生時代はダラダラしている時間はあるのに、なぜか時間がない。時間があるからこそ本気で突き詰めなければ完結な言葉を作れないっていう皮肉が入り混じっていて、それを見てキャラクターの“白井さん”が笑っているんです。ハートも最近よく使うモチーフで、アートと商業性の繋がりを表しています。

O:コインパの作品でワッペンを作れたり、プリントしたり、単純に楽しかったですね。色合いだったりバランスだったり、FACETASMとすごくリズムが合うなと思いました。本当にいいコラボレーションなんじゃないかなと思いながら、終始ニコニコやれました。

6着限定のスタジャンもあるとか。

C:私のライフスタイルブランドCPD HOOMEに「LOVE Patch Pants」というシリーズがあって、ハートと目、商業を意味するCマークをパッチで縫っているんです。現代アートとアパレルの距離感に対する挑戦的な意図でやっているパンツで、ピースが少なくて限定的ではあるけど、ファッションには、そういうハイピースへの憧れもあるという話を落合さんとして、その文脈からFACETASMのシグネチャーであるスタジャンにパッチを付けさせていただきました。CPD HOOMEはジャケットを出したことがなかったので、これが初めてのジャケットになります。もともとは、パンツがメインのブランドだったので。

パンツをメインにした理由はなんですか?

C:私はパンツが一番シティボーイの要だと考えています。地方でも派手なジャケットは着られるけど、派手なパンツだけはコンクリートジャングルじゃないとパンツのクオリティーが生かせない。だからか先進国に行くと、コンクリートの街の中で派手なパンツをおしゃれにはいている人が多い気がします。スニーカーを履いたときに裾が溜まるようにしたのも、それが都会的だって思ったから。パンツは、都会への憧れから作ったものなんです。

今回のコラボレーションでもデニムパンツがありますね。

O:はい。コインパの大切にしているデザインの要素をデニムでやらせてもらいました。ロールアップしたときに目のグラフィックが現れるように裏側にプリントしています。そういう部分に、“カレッジ”らしい“無駄”を取り入れました。

確かに“カレッジ”って無駄だらけですよね。

O:周りから見ると無駄なことなんだけど、当時の僕らにとっては大事なことだったりするんですよね。無駄だけど、必要みたいな。

ちなみにおふたりが学生だった頃は、何を考えて生きていましたか?

C:実は、地元の『ARKWAX』ってセレクトショップがFACETASMを取り扱っていて、それでブランドを知ったんです。だけど、学生時代は高くてなかなか買えなくて。しかもバレー部で年間5日間くらいしか休みがなかったのでバイトもできず。それでも洋服は好きだったので、お小遣いを貯めて、ある年の年末に3万円のFACETASMの洋服を買いました。当時の私にとっては、心臓が止まるかと思うくらいの大金。だから今回これだけのコレクションを一緒に作り込めて、落合さんにお礼が言いたいです。

O:(感動して)ちょっと午前中に聞く話じゃないですね(笑)。僕は文化服装学院に通っていました。3年間、洋服が好きな人しか集まっていない状況ってよく考えたら異常なんですけど、でもそれがすごく楽しかったし、東京出身だから逆に、地方から上京してきている子たちのハングリーさも感じた。自分はちょっと冷めていたかもしれないけど、コインパの当時の熱い気持ちみたいなのと同じようなコたちに刺激されて、もっと頑張らなきゃと思っていました。

今回は『ROYAL FLASH神宮前店』でポップアップイベントを開催しました。COIN PARKING DELIVERYといえば売り方もユニークですが、マーケティングに対しては、どう考えていますか?

C:マーケティングが形式化され過ぎて、こうしたら売れる、こうしたらインスタが回るみたいな形の上積みに、本当に重要な部分が見えなくなっていると感じています。私がファッション業界に惚れた1番の理由が、ファッションはどこまでいってもやっぱりコミュニケーションツールだったこと。自分が何者かになれるコミュニティであるなと感じたんです。だからマーケティングでいえば、私はモノ作りする上で、ファン同士で何かが起こることをずっと期待しています。最近だと古参のファンたちが連絡を取り合って、デートみたいにポップアップイベントに来てくれる。ある意味CPD HOOMEがマッチングアプリの役割を果たしているのは、私が学生時代、同世代のイケてる友だちや同じ思想を持った人たちに会うために、好きな古着屋さんに通っていたのと似た感覚なんですよね。

最後に、おふたりで今後やりたいことを教えてください。

O:コインパと自然な形で、また何か一緒に新しいことができたらいいなと思います。

C:また〈JORDAN〉を一緒にやれたらうれしいですね。それが落合さんとの原点なので。あと、私の夢は遊園地を作ることで、そのときに物販やいろんなものを落合さんに作ってもらいたいです。

O:遊園地を作りたいって言葉をちゃんと出せるって、素敵ですよね。本当に楽しみにしています。

落合宏理
1977年東京都生まれ。99年に文化服装学院を卒業し、テキスタイル会社に勤務。その後、2007年に自身のブランド〈FACETASM〉をスタート。16年に第34回 毎日ファッション大賞受賞。21年よりクリエイティブディレクターとしてファミリーマートによるブランド〈Convenience Wear〉も手掛けている。

COIN PARKING DELIVERY
2018年、電車での移動時間にスマートフォンを使い、指で絵を描きだしたことからクリエーション活動をスタート。「今」というこの時代ならではの疑問や理想を落とし込んだ作品を制作し、国内外で高い評価を得ている。

ポップアップストア
会場:ROYAL FLASH神宮前店
住所:東京都渋谷区神宮前6-18-8
会期:10月19日(土)〜10月25日(金)

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テキスト
フォトグラファー
Genya
Writer
Yuki Koike
エディター
Noriaki Moriguchi / Hypebeast
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