TSTS 2024年春夏コレクション
アントワープ出身の日本人デュオによる新鋭ブランドのセカンドコレクションは、クリスチャン・ボルタンスキーの作品から着想を得て光沢感のあるアウターやゴーストの目のグラフィックを用いたアイテムを展開












デザイナー 佐々木拓也とパタンナー 井指友里惠の手掛ける〈TSTS(ティーエスティーエス)〉が、2024年春夏コレクション “DEPARTURE”を発表した。
〈TSTS〉は2023年秋冬シーズンより始動したばかりの新鋭ブランドであり、正式名称は〈TAKUYA SASAKI TEST SAMPLES〉。ブランド名に含まれる“TEST SAMPLES”とは、兵士への正式支給前に試験的に開発/テスト使用されていた “Experimental Test Sample”製品に由来しており、〈TSTS〉の先駆的な服作りの姿勢を意味している。ブランドコンセプトは、“二面性”。デザイナー/パタンナー共に東京とアントワープで経験を積んだ経歴から、東京的な日常性の中にアントワープ的なシュールレアリスティックな空気感を織り交ぜた、ユーモアと社会批評性をもったコレクションを展開していく。
デザイナーの佐々木氏は1990年に青森県に生まれ、文化服装学院卒業後、アントワープ王立芸術アカデミーに進学し、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)らに師事する。2016年の帰国以降は〈sacai(サカイ)〉でのインターンや、〈Taiga Takahashi(タイガ タカハシ)〉のブランド立ち上げに携わった。パタンナーの井指氏は、1990年生まれの東京都出身。文化服装学院卒業後に企業パタンナーとして経験を積む。その後アントワープに渡り、佐々木氏のコレクション製作アシスタントを行う傍ら、アントワープ王立芸術アカデミーの教授兼モデリストの元で勤務。帰国後は〈kolor(カラー)〉でメンズパタンナーを務め、2023年秋冬シーズンより佐々木氏とともに〈TSTS〉を立ち上げた。
デビューシーズンである2023年秋冬コレクションは“TSTS PROPAGANDA”をテーマに掲げ、1940年に公開された映画『独裁者(原題:The Great Dictator)』および同作の監督/製作/主演を務めたチャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)をモチーフに据えた全11型のアイテムを展開。チャップリンとの公式コラボレーションによるグラフィックを用いたジャケット/シャツのほか、新潟県のファクトリーブランド〈G.F.G.S.(ジーエフジーエス)〉と共同制作したピュアオーガニックコットン100%のボーダーカットソー、ギンガムチェックのキルティングジャケットやパンツなど、ベーシックなワードローブにどこか幼児性を感じさせるようなモチーフを落とし込み、このコントラストによって“緊張と緩和”そしてブランドコンセプトである“二面性”を表現した。
今回の2024年春夏シーズンでは、デザイナー自身が家族や親しい友人との死別を経て、その経験を元にコレクションを制作。“死”と“生”、“記憶”をテーマにしたインスタレーションや映像、絵画、彫刻などを数多く遺したアーティスト クリスチャン・ボルタンスキー(Christian Boltanski)にインスパイアされ、彼の作品のイメージを洋服へと昇華した。光ファイバーの装飾が施された“ゴースト・トップス”は、今季を象徴するアートピースのような1着。その他にはガラスの粒子を吹き付けたポリエステルタフタ生地を用いたコートやコーチジャケット、ショーツなどの光沢感のあるアイテム、ゴーストの目のグラフィックをプリントしたシェルコートやコーチジャケット、半袖シャツ、カットソー、Tシャツなどがラインアップ。また、ギンガムチェックのモチーフや〈G.F.G.S.〉とのコラボレーションも先シーズンより継続し、さらにアップデートしたアイテムが登場。重いテーマを扱いながらもポップな色使いとデザイナーのバランス感覚によって、着た人が自由に楽しめるコレクションに仕上がっている。
ブランド:TSTS
シーズン:2024年春夏