Tiger Gallery™ で個展開催中のアーティスト 加藤泉に、美術大学生3人がインタビュー
〈Onitsuka Tiger〉による、英ロンドンのアートギャラリー『Tiger Gallery™』にて、ただいま日本人アーティスト 加藤泉の個展 “PARASITIC : ONITSUKA”が開催中だ。『Hypebeast』では、改めて、ロンドンで無料でアートを開放する意味を倉敷芸術科大学准教授の川上幸之介氏に伺いつつ、将来ロンドンでのアート活動を目指す彼の生徒3人による、加藤氏への素朴なインタビューも行った










まず、『Tiger Gallery™』とは?
『Tiger Gallery™(タイガーギャラリー)』は、ファッションブランドの旗艦店が立ち並ぶロンドンの中心街、南北約2キロにわたるリージェントストリートにて、〈Onitsuka Tiger(オニツカタイガー)〉によって運営されるアートギャラリープロジェクトである。ロンドンにある〈Onitsuka Tiger〉旗艦店の地下1階にあり、2022年に設立された。同ギャラリーの趣旨は、「多様なコンテンポラリーアーティストを支援し、アート、イノベーション、 スタイルの会話のきっかけを生み出す」こと。また、アーティスト・キュレーターに「Art Intelligence Global」の寺瀬由紀氏を迎えている。
ただいま、加藤泉の個展が開催中
現在『Tiger Gallery™』で個展を開催しているのが、日本と香港を拠点に活動するアーティストの加藤泉だ。加藤曰く、「今回、『Tiger Gallery™』からオファーをいただいて、〈Onitsuka Tiger〉のスニーカーのファンだったので、すぐにOKの返事をさせていただきました」とのこと。加藤は、絵画、彫刻、インスタレーションによって「誰でもなく、どこでもない」世界を、抽象と具象の中間で表現している。加藤の作風の核となっているのが、胎児や妖怪を彷彿させる人物像である。これまでの具象画の歴史を振り返っても際立つ加藤の独創性は、大胆な色彩で画筆を使わず直接手で描かれたものだ。このスタイルで空間に描かれるインスタレーションは、チグハグな身体がコラージュされ、原始・未開社会での超自然観である、日本固有の精神文化的な雰囲気を醸し出している。『Tiger Gallery™』では、この加藤のシンボルともいえる不気味でコミカルで、孤独な人物像が〈Onitsuka Tiger〉のレトロなスニーカーに鎮座する。作品群はプリミティブと現代性とが交差した世界の中、鑑賞者を出迎える。
このような世界的に重要な展覧会を無料で見ることができるのがロンドンの魅力
『Tiger Gallery™』を含め、なぜイギリスでは多くの美術館が一般に無料開放されているのだろうか。ロンドン芸術大学を卒業し、現在、倉敷芸術科大学准教授である川上幸之介に伺うと「この制度を振り返ると、1990年代の後半、トニー・ブレア、ゴードン・ブラウンの指揮のもと始動した New Labour, New Life for Britain を掲げる新しい労働党の時代に遡ります。当時の文化相、ジェレミー・ハントは『私たちの無料の博物館や美術館は、文化が運良く選ばれた少数の人だけでなく、誰にでも開かれていることを保証しています。とくに、現在の財政状況にも関わらず、無料の博物館の未来を守ることができたことを誇りに思います』とその意義を語っています」とのことだ。
この画期的な制度によってイギリスの博物館、美術館の入場者数は150パーセント増加し、年間10億ポンド(1,900億円)の収益を上げ、国外からの多くの観光客を引き寄せたという。また、ロンドンはコマーシャルアートの中心地ともなり、上述した加藤の所属するスティーブン・フリードマン、ホワイトキューブ、ビクトリア・ミロ、ガゴシアンに続き、多くの若手コマシャールギャラリーが続々と誕生している。
『Hypebeast』では、今回、このようなコーマシャルギャラリーの聖地であるロンドンに憧れる学生たちから、世界から評価を受ける加藤泉に質問を募り、インタビューを行った。
東海林生楽さんからの質問
今回、シューズとアートをドッキングしたアートワークに度肝を抜かれました。加藤さんのイメージソースはなんなのでしょうか?
ソースとかはとくにないんです。むしろ真逆で、アートはこうでなければいけない、こうしなければならないという思考に陥らないようにしています。ただ、アートが難しいのは、なんでもありではない。バランスを考えながら、そのあたりの判断を同時にしているのです。
王淼兒さんからの質問
普段は、東京と香港を行き来されていると聞きます。今回の舞台はロンドンでしたが、加藤さんのロンドンのイメージはどのようなものですか?
街がハリーポッターみたい、というのが率直な感想です。それから、ロンドンは食べ物がまずいと言われがちでしたが、僕にとっては意外と美味しい。また、レコードショップが充実しているのも好印象。
美羽さんからの質問
作品のアイディアはどのようなタイミングで思い浮かぶのですか?
日々、作品のことばかり考えているんです。実現するかどうかは別にして、いつも浮かんでます。
東海林生楽さんからの質問
アーティストとしてではなく、人間加藤泉として大切にしているライフワークはありますか?
趣味の釣りと音楽とサッカーですね。あと、なるべく調子に乗らないようにしています(笑)。
王淼兒さんからの質問
アートの世界でもジェンダーバランスが多く語られるようになりました。これまで女性アーティストがあまり取り上げられてこなかったことやハラスメントが取り沙汰されています。このような問題をどう考えますか?
アートに限らず、世の中には流行り廃りがしょっちゅうあり、そんなもんなんだろうと思ってます。そういう問題や流行は誰かが作っているので、自分で実感しない限り、それに迎合することはないです。
美羽さんからの質問
最後にアーティストになろうと思ったきっかけと、アーティストとして大変なこと、よかったことを教えてください。
若い頃には、サッカー選手やミュージシャンになりたかった。いろんな職種のアルバイトもしましたが、アートの世界が自分に一番向いていると思ったから、勝負してダメなら人生もういいやくらいの感じで、30歳くらいからアートの道に進んでみました。消去法で選んだと思います。35歳から40歳くらいまでが本当に貧乏で辛かった。でも、良かったことは、自分のペースで仕事ができて、組織のなかで仕事しなくていいとこでした。アーティストの道は茨の道ではありますが、みなさんも頑張ってください。
倉敷芸術科学大学芸術学部の皆さん
今回、ご執筆いただいたのが、まん中の川上幸之介准教授。生徒は右から、東海林生楽さん、王 淼兒さん、美羽さん。(撮影:西田幸司)
Izumi Kato Exhibition “PARASITIC : ONITSUKA”
June 17- September 22
Monday–Sunday 11:30AM–6:00PM
Tiger Gallery™
Onitsuka Tiger Regent Street, London Flagship
249-251 Regent St.
London UK
Official Site