BEAMS CULTUART 注目のアーティスト、井田幸昌に迫る
「一期一会」をメインコンセプトに掲げて活動するアーティスト、井田幸昌。自身初となる国内美術館での展覧会“Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”にかける想いから、「BEAMS CULTUART」とのコラボレーションまで、『Hypebeast』が本人のアトリエに突撃してインタビューをおこなった



初の国内美術館での展覧会 “Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”が開催
井田幸昌は、いま日本でもっとも注目を集めるアーティストのひとりだ。鳥取県で生まれ、彫刻家の井田勝己を父にもつ井田は、2019年に東京藝術大学大学院油画を修了したばかりの若手作家でありながら、すでにパリ、北京、シカゴと世界各地で個展を開催し、自身のスタジオ「IDA STUDIO」を運営する経営者としての顔も持つ。ビッグメゾンとのコラボレーション経験があり、ファッション業界からの注目も熱い。
そんな井田幸昌にとって、自身初となる国内美術館での展覧会 “Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”が開催されている。期間は、彼の故郷にある米子市美術館で2023年7月22日(土)〜8月27日(日)まで、また彼が「第2の人生のスタート地点」と語る京都の『京都市京セラ美術館』で9月30日(土)~12月3日(日)まで開催される巡回展だ。
そしてこの展覧会に際して、井田幸昌と「BEAMS CULTUART(ビームス カルチャート)」がタッグを組んだコラボレーションアイテムが販売される。「BEAMS CULTUART」は『BEAMS(ビームス)』が2022年末に発表した、アートとカルチャーの事業領域を強化する新プロジェクト。『BEAMS』はこれまでもアートやデザイン、エンターテインメントなどといった異業種とのコラボレーションに力を入れていたが、それらの取り組みをひとつのプロジェクトとして発足した形だ。
そしてこのたび『Hypebeast』編集部は、井田幸昌のアトリエを訪れ、展覧会 “Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”に対する想いから、「BEAMS CULTUART」とのコラボレーション、そしてアートとファッションの関係についての考えに到るまでを訊いた。インタビューが始まる寸前まで、この展覧会のための作品を描いていたという井田の、リアルかつ最新の声をお届けする。
人生の集大成を見せる
Hypebeast:企画展のタイトル『“Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”の意味について教えてください。
古代ギリシアの哲学者のヘラクレイトスの言葉「パンタ・レイ(万物は流転する)」が由来です。「人間は同じ川に(2度)入ることはできない」という表現もされますね。川はいつも同じ形状をしているように見えても、実際はつねに流れ続けていて、同じ形をしていることはない、という意味です。僕が10年以上メインテーマに掲げている「一期一会」の概念としての意味を含んでいます。
開催地として米子と京都を選んだ理由は?
まず、米子は僕が生まれ育った街で、僕自身のルーツだということ。京都については、「画家を志した瞬間」を第二の人生の始まりとしたとき、そのスタート地点というのが京都市京セラ美術館なんです。僕が画家になるのを決意したのは、10代のときに京都市京セラ美術館で見たある展覧会がきっかけで。それが選んだ理由ですね。今回、この2カ所で開催できることは非常に光栄ですし、万感の思いがあります。
“Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”は井田さんにとってどんなものですか?
米子は先月に会期を終えて、とにかく大きな愛情を感じました。自分の作品を自然と受け入れてくれているような感じ。京都に関しては現在絶賛制作中で(笑)、蓋をあけるまではまだわかりませんが、そういう意味では、僕が画家を目指してから展覧会が始まる瞬間までの、生の自分をお見せできると思います。いままで開いた展覧会のなかでも、最上級のものになることは間違いありません。また、これまでのキャリアの集大成であるとともに、新しいなにかの始まりになるとも感じています。
作品を見た人たちに、どんなことを感じてほしいですか?
究極、誰にどう思われてもいいんです。もちろん称賛されれば嬉しいですが、反感を買ってもいい。ただ「僕はこう生きてきました」という積み重ねのすべてをお見せする場だと考えています。
今回の展覧会では、「BEAMS CULTUART」とコラボして制作したオリジナルグッズも大きな見所かと思います。協業に至った経緯や理由を教えてください。
もともとBEAMSではよく服を買っていて、ファッションだけでなくアートやデザインなど、色々なジャンルとコラボレーションをおこなっている印象がありました。トム・サックス(Tom Sachs)やオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)といった、著名なアーティストとのプロジェクトについても知っていましたし、ファッションを軸に現代アートを広く知らせようとする姿勢にリスペクトを持っています。そんななかで、この個展に合わせたコラボレーションのご縁を繋いでいただいたので、ふたつ返事で手を組ませていただきました。
アートとファッションが交わることについてはどう捉えていますか?
前提として、アートはアートとして扱われるべきものだと思っています。BEAMSは90年代後半からギャラリースペースを持ち続けていますし、新プロジェクト「BEAMS CULTUART」は、なかでも現代アートにフォーカスしているということで、アートの価値を正しく扱えるならば、と考えてコラボさせていただきました。「BEAMS CULTUART」はアートに触れる機会を作るために、アーティストや周囲のアートプレイヤーたちが活動を継続できるような事業化を考えているそうなので期待しています。
ファッションとアートの関係について、どう捉えていますか?
少し前までは「アートはアート、ファッションはファッション」だと思っていたんですが、最近、わからなくなってきました。宗教絵画の時代、あるいはもっと以前からファッションは存在していて、さまざまな階級、職業によって服装が異なり、それが絵に描かれている。僕はそれらのアートを見てインスピレーションを受けるし、単純に服が好きなので、ファッションに関する本や雑誌をいろいろ買って、そこで得た刺激を自分の作品に取り入れたりするんですよね。なので、アートとファッションは別軸の存在ではなくて、相互に関係しあっている感覚があります。ひとつの輪の中の一部、というイメージです。
逆に違いがあるとすると?
違いがあるとすれば、ファッションは衣食住の「衣」であり、よりエッセンシャルですよね。人々にとって必要不可欠なものだし、基本的に誰もが服を着るじゃないですか。その点、芸術がどうかはわからないですよね。服と一体化することもあるし、「住」、つまり建物のなかに飾られることもあるし。いろんな形で人々に寄り添っていて、それは人間が本質的に必要としていることで、大別できることではないと思っています。
コラボを通してアートをもっと身近に感じてほしい
井田幸昌と「BEAMS CULTUART」のコラボレーションアイテムは、長袖Tシャツ、タートルネックスウェット、ハイネックスウェットの3商品が展開される。取材の日に、井田はコラボレーションアイテムのサンプルを初めて手に取った。
「完成品を見たのは今日が初めてなんですが、かわいいですね。着たいと思いました」
そう言って満足げに眺める井田に、各アイテムのポイントを訊いた。
「この総柄のロングスリーブTシャツは、僕の作品の一部をプリントしています。ロンTは僕の希望で、抽象画をプリントしたら合うんじゃないか、というアイデアがあったから。格子柄は僕の苗字(井田)をひたすら紙に書いていったらだんだん格子状になっていった、というのが着想源で、展覧会に合わせたコラボということで、まだ僕のことを知らない人へのちょっとしたユーモアになれば、という気持ちで選びました(笑)」
「スウェットシャツは、木彫作品 “Bull”をモチーフにしたワッペンを使用しています。個人的にテニスウェアのデザインが好きで、胸元や袖元など、ワンポイントで作品のモチーフを取り入れました。結果として日常着として使いやすく、自分も着たくなるようなコラボができたと思います。商品を手に取った人がアートに興味を持つきっかけになってくれれば嬉しいですね」
YUKIMASA IDA x「BEAMS CULTUART」のコラボアイテムは、『京都市京セラ美術館』と一部『BEAMS』店舗で購入が可能だ。
YUKIMASA IDA × BEAMS CULTUART 販売概要
【先行販売】
日程:2023年9月22日(金)〜10月1日(日)
展開店舗:
ビームス 六本木ヒルズ
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F・3F
TEL:03-5775-1620(2F・ウィメンズ)、03-5775-1623(3F・メンズ)
ビームス ニューズ
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目24-55 ニュウマン新宿2F エキナカ(JR新宿駅改札内)
TEL:03-3351-3090
ビームス ジャパン 京都
住所:京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2 新風館 1F
TEL:075-708-6848
【展覧会 会場内特設ショップ】
日程:2023年9月30日(土) 〜 12月3日(日)
場所:井田幸昌展 “Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り”特設ショップ(京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階)
*井田幸昌展『Panta Rhei|パンタ・レイ -世界が存在する限り』での販売に関しては、公式サイトにてご確認ください。
井田幸昌展 “Panta Rhei|パンタ・レイ – 世界が存在する限り” 展覧会概要
会期:2023年9月30日(土)〜12月3日(日)
会場:京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
時間:10:00-18:00(*入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(*祝日の場合は開館)
お問い合わせ:展覧会公式サイト
観覧料:一般 1,800円(1,600円)、大高生1,500 円(1,300円)、中学生以下無料
*金額はいずれも税込表記 *( )内は前売・団体料金、団体は20名以上
*障害者手帳等ご提示の⽅は本人及び介護者1名無料
(学生証、障害者手帳等確認できるものをご持参ください)
*そのほか企画チケットあり
井田幸昌 アーティスト
1990年、鳥取県生まれ。「一期一会」をメインコンセプトに掲げる。2019年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。2016年、現代芸術振興財団主催「CAF 賞」で審査員特別賞を受賞。2017年、レオナルド・ディカプリオファンデーションオークションに参加。