東京・青山で開催されたカニエ・ウェスト初のフードイベントに潜入
カニエの新たな試みとなる「YZY Food Division」に込められたコンセプトとは?
6月24日(土)、カニエ・ウェスト(Kanye West)改めイェ(Ye)の主宰する「YZY Food Division(イージー フード ディビジョン)」による試食会が、東京・青山で密かに行われた。本イベントは「YZY」の食品衣料品シェルター(Food clothing shelter)の大きな取り組みの一環であり、東京での開催がその記念すべき第1回目にあたる。なお、カニエにとって公共のフードイベントは、今回が初めての試みである。
急遽開催が決定したという本イベントの会場となったのは、南青山のイベントスペース『LA COLLEZIONE(ラ コレッツィオーネ)』。ちなみに、この建物はカニエが以前よりファンだと公言している建築家・安藤忠雄の設計によるものだ。今回のイベントにはカニエ本人とパートナーのビアンカ・センソリ(Bianca Censori)、愛娘 ノース(North)はもちろん、〈SEEKINGS(シーキングス)〉を主宰するファッションデザイナー マーク・シーキングス(Mark Seekings)、〈MOWALOLA(モワローラ)〉を手掛けるナイジェリア出身のファッションデザイナー モワローラ・オグンレシ(Mowalola Ogunlesi)、韓国人ラッパー CL、日本を代表するコラージュアーティスト 河村康輔、ファッションキュレーター 小木“Poggy(ポギー)”基史など、豪華ゲストも多数来場。会場内にはイギリスの音響機材メーカー「VOID Acoustics(ヴォイド・アコースティックス)」のスピーカー Point Oneが設置され、カニエの代表曲の数々が大音量で流された。
肝心の料理はというと、会場内に置かれたステンレス製のテーブルに肉(和牛、チキンなど)、魚(鮭、マグロなど)、野菜(キュウリ、ニンジン、サツマイモなど)、漬物(ガリ、ラッキョウなど)、果物(スイカ、パイナップル、メロン、みかん、マンゴーなど)、飲み物(水、シナモンミルクなど)が並べられ、来場者はその間を自由に歩きまわってテーブル上の料理を食べることができた。容器やカトラリー類は使用せず(*飲み物のみステンレス製のカップを使用)、直接手掴みで食べるスタイルだ。また、汚れた手はテーブルに置かれたタオルで拭くことになる。環境への負荷が大きいプラスチックやガラス、使用後にすぐゴミになるようなペーパータオルは一切ない。これはカニエの“サステナビリティ(持続可能性)”に対する長期的な考えに基づいているとのこと。
カニエおよび「YZY」チームはこのプロジェクトのために4年ほど前から準備を進めてきたという。東京での試食会の3日前、「YZY」のキッチンチームは18の異なる地域から食材を集め、さまざまな味付けで調理したものをカニエに披露。彼はそれら全てを味見し、その中から好みのものをセレクトして、試食会当日に来場者に提供した。カニエ曰く、このイベントは“食のインスタレーション”のようなもの。メニューがなくてもテーブルを見れば自分が何を食べているのかは一目瞭然であり、席がないのは、来場者が会場内を自由に歩き回り、他者とのコミュニケーションを促すことを意図している。
カニエの考えでは1000年前の人類はこのようにただ火や水を用いてシンプルに食事をしていたはずであり、1000年後の未来の人々もきっと同じような方法で食事を楽しんでいるという。したがって、このインスタレーションは“未来の私たちの姿”を表しているとのこと。食事の場では日本であろうと、アメリカであろうと、他のどの国でも言葉は必要なく、誰でもハッピーになれる。このイベントは「いかにしてみんなをひとつにするか、いかにして世界中の人たちに美味しい食事を楽しんでもらうか」をコンセプトに、今後毎週末にさまざまな国・都市での開催を計画しており、毎回異なるメニューを提供していく。カニエおよび「YZY」チームの壮大な試みに、これからもぜひ注目してほしい。