adidas の CEO が YEEZY モデルの在庫処分について現状を語る
「売れないし、壊せないなら、どうする?」
先日の決算報告会で、〈adidas(アディダス)〉CEOのBjørn Gulden(ビョルン・グルデン)が、同社が回収した大量の〈YEEZY(イージー)〉モデルの在庫問題について、現状を語った。
昨年10月に正式にパートナーシップを解消した〈adidas〉とKanye West(カニエ・ウェスト)および〈YEEZY〉。これにより、同社は各店舗から回収した大量の〈YEEZY〉モデルの在庫を抱えることとなり、本件をどう対処するかが課題となっていた。
Bjørn Guldenは解決方法として、在庫の破棄、第三者へ〈YEEZY〉株式を売却すること、先月シリアとトルコで発生した地震の被災者への寄付などを挙げ、それぞれリスクについて述べた。
在庫の破棄は、〈adidas〉の2023年の見通し発表の声明内で「今後、YEEZYの既存プロダクトを一切再利用しないことを決定した場合、それらの在庫を評価損として計上することになり、同社の営業利益は今年度さらに5億ユーロ減少することになる」としており、ブランドの評価を落としかねない。
また、寄付については「もし靴が寄付されたなら、また戻ってくるでしょう。YEEZYは、パートナーシップの歴史から、一般的なスニーカーよりも価値が高いと言われています」と発言。加えて、現在『StockX』や『Goat』で〈YEZZY〉の二次市場価格が上昇していることから「製品の価値は、材料の物理的な価値ではありません。高値で取引されるブランドや商品なのです」と、転売のリスクが高いことを説明。
続けて、株式売却については「私がここに来てから言えることは、在庫を買いたいという人たちから、おそらく500種類のビジネス提案を受けたということです。しかし、繰り返しになりますが、それは必ずしも正しいこととは言えないでしょう」と、何百人もの人から残った在庫を買いたいという申し出があったことを認めつつも、現時点では実現の見込みがないことを明かした。
続けて彼は「adidasは今後、会社にとって最もダメージの少ない選択肢を選ぶだろう」と言い、別の場所では「2023年が移行年になると予想している」と発表。現在、2023年の為替レートを考慮した同社の売上高は1桁台後半の減少が見込まれており、営業利益は7億5000万ドルの打撃を受ける可能性があるため、慎重になるのも当然のことだ。
Bjørn Guldenは、ここまでのことから「売れないし、壊せないなら、どうする?」と問いかけ、「それが非常に複雑な問題であるため、決定を下していない理由です」と説明した。
一方で、彼は「そのビジネスを見れば、Yeが地球上で最もクリエイティブな人物の1人であることは間違いありません。YEEZYが市場に参入したことは、おそらくどのブランドが行った中でも最高の市場投入だと思います。これが崩壊してしまったことは、非常に悲しいことです」と、Yeの創造性がブランドの成功につながったと称賛。
最後に、今後の〈adidas〉の戦略について「現在、市場で最もホットなシューズ、それがadidasのSambaです」と始め、「それはしばらく前から、ファッションショーや、実際に自分で靴を購入したセレブリティたちからも確認することが出来ます。アジアでも、ラテンアメリカでも、ヨーロッパでも、そしてアメリカでも流行っていて、最後に見たのはいつだったか思い出せません。SambaやGazelle、皮肉なことにSPEZIALも私が使っていたハンドボールシューズでした。おそらく、私が何歳なのかが分かると思います」と、Sambaを中心に、GazelleやSPEZIALといった同社のクラシックシューズを打ち出していく意向を示した。