Timberland 誕生50周年記念プロジェクト “Future 73” 発表イベントに Hypebeast が独占潜入
世界的なクリエーター6名を招聘したプロジェクトの全貌とその背景に迫る





アメリカ発のアウトドアライフスタイルブランド〈Timberland(ティンバーランド)〉は2月7日(現地時間)、ブランドの誕生50周年を記念したプロジェクト “Future 73(フューチャー 73)”をニューハンプシャー州にある本社で発表した。本プロジェクトでは、世界のストリートファッションを牽引するクリエーター6名を招聘し、彼らとのコラボレーションでアイテムを製作することで、長年ファッション界を魅了してきた“Timberlandの定番品”の新たな可能性を模索していく。このたび『Hypebeast』では、〈Timberland〉の本社で行われた“Future 73”のローンチイベントに潜入し、本プロジェクトの仕掛人であるDrieke Leenknegtへのインタビューを敢行。本稿では〈Timberland〉とさまざまなクリエーターとの交配の歴史を振り返りながら、“Future 73”プロジェクト発足へと至るまでの背景を深堀りしたい。
過去半世紀にわたって、〈Timberland〉はさまざまなジャンルの領域を超え、一種の“文化的な記号”として認知されている。特にブランドを象徴する6-Inch Boot(*通称:イエローブーツ)は、1980年代にイタリア・ミラノで生まれたファッション “Paninaro(パニナリ)”や、今や世界中で共通言語として浸透している“Hip Hop(ヒップホップ)”といったサブカルチャー・ムーブメントにおけるアイコニックなアイテムとして、ユースたちの間で愛用されてきた。今回の“Future 73”プロジェクトでは、そんな6-Inch Bootを6名のクリエーターがそれぞれ新たに解釈したフットウェアとアパレルのコレクションを展開する。
参加クリエーターとして名を連ねるのは、〈A-COLD-WALL*(ア・コールド・ウォール)〉のSamuel Ross(サミュエル・ロス)を筆頭に、〈CLOT(クロット)〉主宰のEdison Chen(エディソン・チェン)、オランダ発のニットウェアブランド〈Knit in Motion(ニット イン モーション、KiM)〉のデザイナー Suzanne Oude Hengel(スザンヌ・アウデ・ヘンゲル)、米ニューヨークを拠点とするアフリカ系アメリカ人アーティスト Nina Chanel Abney(ニーナ・シャネル・アブニー)、『OPENING CEREMONY(オープニングセレモニー)』の創設者 Humberto Leon(ウンベルト・レオン)、イギリスを代表するファッションデザイナー Christopher Raeburn(クリストファー・レイバーン)といった錚々たる面々。
彼らは独自の視点で〈Timberland〉のアイコン 6-Inch Bootに新たな生命を吹き込み、独創的なディテールと大胆な視覚効果をもたらした。さらに、関連するデザインコードを散りばめたアパレルコレクションも制作。今回のローンチイベントでお披露目されたアイテムからは、異なる分野のクリエーター間で交わされた対話の成果とブランドの野心的なビジョンを読み取ることができる。
“Future 73”プロジェクトのビジョンとキーパーソン
〈Timberland〉というブランドは、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)やMobb Deep(モブ・ディープ)、“Biggie”ことThe Notorious B.I.G.(ザ・ノトーリアス・B.I.G.)といった1990年代のヒップホップ・スターから、近年ファッション業界で大きな影響力を持つG-DRAGON(ジードラゴン)やA$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)などの2000年代以降に台頭したアーティスト/クリエーターに至るまで、長年ストリート・カルチャーとファッショニスタへの求心力が弱まることは決してなかった。本来はアウトドアブランドとして設立されたものの、〈Supreme(シュプリーム)〉や〈STÜSSY(ステューシー)〉といったブランドとのコラボレーションを重ねることで、ストリートファッション界においても独自のポジションを確立。また、英国人デザイナーのChristopher Raeburnをブランドのグローバル・クリエイティブディレクターとして迎え入れたり、〈Jimmy Choo(ジミー チュウ)〉と共同でプロダクトを開発するなどの実験的な試みを取り入れ、そうして生まれたアイテムは爆発的なヒットを記録した。このような動きを通じて、〈Timberland〉の一般的なイメージはさらに更新されていくことになる。
“Future 73”プロジェクトを統括するDrieke Leenknegtは、2020年にCMO(Chief Marketing Officer)として〈Timberland〉に入社。過去に〈Nike(ナイキ)〉で20年ほど務めていたというDriekeは、マーケティングについての豊富な経験を持っており、世界規模でストリートカルチャーとスニーカーカルチャーに大きな影響力を持つ“Energy Market”を創り出した人物の一人でもある。具体的には2000年以降の数年間で〈Nike〉と他ブランドやクリエーターとのコラボレーションを幾つも実現させ、スニーカーカルチャーにおける“Hype(ハイプ)”現象を生み出した。昨今のストリートファッションにおいて注目されている“Tier 0”や“Quick Strike”、“Energy”といったコンセプトは、十数年前にDriekeが〈Nike〉在籍時に発想/提案したものだという。
彼女はこれまで〈Nike〉を通してTom Sachs(トム・サックス)やVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)といった名だたるクリエーターともコラボレーションを果たしている。2020年に『Hypebeast RADIO』にゲストとして出演したDriekeは、コラボレーションの本質は「お互いの関係性を模索すること」と語り、「お互いが相手の世界に入ることで新たな商品が開発され、最終的に『1+1=3』の効果が生まれる。それこそがコラボレーションの成功と言えるでしょう」と付け加えた。
そして今回の“Future 73”のローンチイベントに登壇したDriekeに対し、我々『Hypebeast』からいくつか質問を投げかけてみた。まず「どのような独自性のある手法でTimberlandの位置づけを明確し、消費者にリーチするのか」という問いに対し、彼女は以下のように答えてくれた。「“Glocal(グローカル)”という概念はご存知でしょうか?これは“Global(グローバル)”と“Local(ローカル)”を組み合わせた造語なんですが、異なる市場においては化学反応が発生するような組み合わせを考え、各ローカルと連携して現地に向けたプロジェクトを提案します。Timberlandのストーリーをそれぞれの国や地域に合わせて、人々の心に届くように伝えていくんです。また、現在ではオンラインや実店舗、さらにWeb3の世界まで、既に消費においても多元的なサークルが形成されています。私たちは消費者やTimberlandのファンの方々に、実店舗でもオンラインやARの世界と同質の体験を提供したいと考えています。これは近い将来には実現できるでしょう」
次に「ファッション市場とブランドを理解するために、過去の経験はマーケティングの次元においてどのように生かせるのか」という疑問に対し、彼女はある方程式を示してくれた。「それは料理と同じようなもので、事前にレシピがあります。私にとって、マーケティングコミュニケーションの秘密は大まかに3つのステップにまとめることができます。まずは、自分自身を徹底的に理解すること。自らの短所と長所を徹底的に分析して理解すれば、自分に自信が持てるようになります。次は、他者のエネルギーが必要です。あなたのイノベーションとアイデアを実現するために、適切な人やチームに助言を求めてください。理想的なチームと協力することが、成功への第一歩です。最後に、限られた範囲で究極を追求しながら、少しずつ限界を押し広げていってください」
スニーカーカルチャーとストリートファッションの歴史に目を向ければ、どんなブランドやアイテムにとっても、50年という歴史を積み上げてきた事実は、大きな意味を持つ。さまざまなカルチャーにおいてアイコンとなった〈Timberland〉の6-Inch Bootは、多様な文化を象徴する唯一無二のファッションアイテム。“Future 73”プロジェクトは、6-Inch Bootを“未来のクラシック”として確立する方法だけでなく、異なるコミュニティーやクリエーターがこのブーツを基盤として生み出した、クリエーションの新たな可能性を示唆していると言えるだろう。
“Future 73”プロジェクトで展開される6名のクリエーターのコレクションは、今年中に7段階に分けて〈Timberland〉の公式サイトや一部の店舗、厳選されたリテーラーにて販売予定。第1弾となるEdison Chenによるコレクションは、3月末にデリバリーされるとのこと。本プロジェクトの詳細については、特設ページでご確認を。