20歳の若きポップスター、ザ・キッド・ラロイの素顔 | Interviews
本日デビュー・アルバム『ザ・ファースト・タイム』をリリースした早熟の天才ラッパーに『Hypebeast』が独占インタビュー

本日11月10日(金)、全世界が待ち望んでいたザ・キッド・ラロイ(The Kid Laroi)のデビュー・アルバム『ザ・ファースト・タイム(原題:THE FIRST TIME)』が、ついにリリースされた。今年初頭に制作がアナウンスされてから数カ月を経て、ようやくその全貌が明らかになった本アルバムは、BTS ジョングク(Jungkook)と新進気鋭の英ラッパー セントラル・シー(Central Cee)とのコラボ曲 “TOO MUCH”を筆頭に、昨年春に行われた「End of The Word」ツアーからライブで何度も披露されていたアンセム “WHAT JUST HAPPENED”、Future(フューチャー)& Baby Drill(ベイビー・ドリル)をゲストに迎えた“WHAT’S THE MOVE?”、YoungBoy Never Broke Again(ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン)とロバート・グラスパー(Robert Glasper)といった実力派をフィーチャーした“CALL ME INSTEAD”など全20曲が収録されており、彼のこれまでの人生とアーティストとしてのキャリアを集約した大作となっている。
本アルバムの制作が佳境に入った今年8月、ラロイは東京と大阪で開催された「SUMMER SONIC 2023(サマーソニック 2023)」のメインステージで圧巻のパフォーマンスを魅せてくれた。幸運なことに我々『Hypebeast』は、この東京公演の翌日に短い時間ながら対面インタビューの機会に恵まれたのだが、本稿を読み進めていただく前に、改めてこのオーストラリア出身の青年についてご紹介したい。
ザ・キッド・ラロイことチャールトン・ケネス・ジェフリー・ハワード(Charlton Kenneth Jeffery Howard)の両親は、彼が4歳の時に別居し、7歳で離婚。その後、移住先で母親は裏稼業などで生計を立て、余所者の彼は学校でいじめに遭い、2015年には父親代わりだった叔父が殺害されるという、順風満帆どころか波瀾万丈の人生を歩んでいる。
そんな泥沼の状況の彼を支え、奮い立たせたものこそが音楽であり、13歳の頃から韻を踏み始めると、母親のスマートフォンで録音した音源を夜な夜な『SoundCloud(サウンドクラウド)』にアップロード。また、アルバイトの傍ら自らの足で築いたコネクションから地元でもファンを獲得し、2017年に豪「Sony Music Australia(ソニーミュージック オーストラリア)」との契約を勝ち取ったのだ。翌年にはデビューEP『14 with a Dream』をリリースし、同時期にオーストラリアの新鋭アーティストの登竜門とも言うべき「triple j Unearthed(トリプル・j・アンアースド)」のコンペティションでも決勝に進出。そうしているうちにラッパー Lil Bibby(リル・ビビー)の目に留まり、彼のレコードレーベル「Grade A Productions(グレード・A・プロダクション)」と「Columbia Records(コロンビア・レコード)」とパートナーシップ契約を締結すると、2019年当時「Grade A Productions」に所属していた故・Juice WRLD(ジュース・ワールド)のオーストラリア・ツアーのサポートアクトに抜擢──これが人生の転機だった。
彼らは寝食を共にしたことで、ラロイにとってJuiceは公私にわたるメンターとなり飛躍的に成長していったのだ。しかし同年、Juiceがオーバードーズのため死去。深い悲しみが彼を襲うも、これを乗り越えて制作した1stミックステープ『F*ck Love』は国内外で高く評価され、さらにその翌年にリリースしたジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)との“STAY”は2021年を代表するヒットソングとなり、若干18歳にして長らく不在だったオーストラリア発のスターラッパーの座を掴んだのである。
前置きが少し長くなってしまったが、以下のインタビューは「SUMMER SONIC 2023」でのステージの翌日早朝に行われたものの、嫌な顔ひとつせず時に真摯に、時に活き活きと受け答えしてくれた会話の記憶である。なお、途中に差し込まれている写真の中の数枚は、本人が使い捨てカメラ(写ルンです)で東京滞在の日々を撮影してくれた『Hypebeast』の恒例企画 “Back To Film”も兼ねているので、文字も写真も余すことなく目を通していただければ幸いだ。
Hypebeast:昨日のSUMMER SONICはお疲れ様でした。率直に、初出演かつ約10カ月ぶりの来日公演の感想を教えてください。
自分が思っていた以上にオーディエンスがすごく反応してくれて、俺の音楽を聴いてくれているファンが日本にも大勢いることが実感できたね。本当に最高だったよ。
暑さは大丈夫でしたか?(*当日は最高気温 34.3°Cを記録)
いや、ステージ上で気を失いかけた。マジで(笑)。
SUMMER SONICが2度目の来日公演でしたが、来日は何度目になりますか?
来日は2回目。だけど、日本が世界で一番好きな国なんだよ。理由? だって街も風景も綺麗で、楽しめることも場所も信じられないくらいあって、これ以上の国はあるのかって話。信じてくれていい、日本が世界で最高の国だ。
それはありがとうございます。今回は、どれくらい滞在するんですか?
一週間くらいかな。本当は日本に引っ越したいくらいだよ。
滞在中は何かしましたか? また、これからの予定はありますか?
Beef Kitchen(ビーフキッチン)って行ったことある? 20歳の誕生日(8月17日)に連れて行ってもらったんだけど、最高の焼肉屋だった!アーティストとして成功しない限り、日本で20歳の誕生日を迎えることなんてなかっただろうし、すごく幸せだよ。あと、モスバーガーに毎日行っていて、来世で生まれ変わるくらいチキンナゲットを食べているね。今日、チキンナゲットの姿でインタビューに応じることにならなくて良かった(笑)。
ちなみに、フレッシュネスバーガーのチキンナゲットも美味しいですよ(笑)。日本では20歳が成人のタイミングで、アルコールやタバコなどが解禁されるんですけど、自分の中でこれを機に解禁やチャレンジしたいことはありますか?
毎日のハイキングかな。ちゃんと体調にも気を使わないと。だって、歳をとってきたから(笑)。
もともと自然が好きなんですか?
大好きだよ。いろんなところに行ったけど、ロサンゼルスにあるラニヨン・キャニオン・パークはお気に入りだね。東京でおすすめのスポットはある?
東京の西の方にある高尾山は、車でも電車でも渋谷から1〜2時間ほどで着きますよ。ただ、今の時期は蒸し暑すぎるので……。
蒸し暑いならちょっと(笑)。
少し話を戻すんですが、SUMMER SONICの大阪公演では©SAINT Mxxxxxx(セントマイケル)とのコラボとおぼしきTシャツを着用していましたよね?
実は、11月に発売予定のコラボTシャツなんだ。©SAINT Mxxxxxxは一番好きなストリートブランドで、コラボが決まった時はワクワクが止まらなかったよ。11月9日(木)に原宿のGR8でポップアップをやる予定だから、ファンのみんなにはぜひ来て欲しいね。(*ポップアップは既に開催済み)
ファッションの話を広げると、こだわりなどはありますか?
ヴィンテージとスリフトストアで売っているような洋服が好きで、人が着こんだアイテムに味を感じるんだ。それに、デザイナーブランドのTシャツ1枚の値段で10枚くらい買えちゃうこともあって、節約になる(笑)。クールだろ?
では、今日着ているフーディも?
もちろん!原宿のLABORATORY®︎(ラボラトリーアール)で買ったんだけど、今まで訪れた古着屋の中でもトップクラスのひとつだったね。CASANOVA VINTAGE(カサノバビンテージ)にも行って、Goyard(ゴヤール)のヴィンテージバッグも買ったよ。
インタビューの時間が終わりに近づいているので、デビューアルバムについて教えてください。
俺が好きな音楽をギュッと詰めた作品で、明確なテーマはないけど毎日の日々の人生というのを反映していて、車の中で聴いてきた楽曲に影響を受けた仕上がりなんだ。誰もが何かしら好きな楽曲を見つけられる、そんなアルバムになっていると思うよ。
“車の中で聴いてきた楽曲”というのは、具体的に教えていただけますか?
なんでも聴くし、日によって全然変わるけど、この6カ月間どんなプレイリストにも必ず入っているのはエリオット・スミス(Elliott Smith)だね。気持ちが落ち込んだりしている時に彼の楽曲を聴くと、自然と落ち着くしパワーをもらえるんだ。
自身のライフスタイルでは、音楽を聴くシチュエーションは車の中が多いんでしょうか?
拠点としているロサンゼルスは、車がないとどこにも行けないから、毎日ずっとドライブしてるからね。それに、どれだけボリュームを上げて聴いても迷惑にならないし。
東京に住んでいると、車に乗る機会はそこまで多くないんです。
そうだろうね。じゃあ、音楽はイヤフォンとかヘッドフォンで聴くことが多いってこと? 俺は24時間音楽を聴き続けていないとダメな中毒者だから、東京で生き抜くためにはヘッドホンが必要っぽいね。
最後に、日本のファンと読者に一言お願いします。
またすぐに日本に戻って来れたら嬉しいけど、どうだろう? とにかく、いつもサポートしてくれてありがとう。愛しているよ。
The Kid Laroi『THE FIRST TIME』
発売元:Sony Music
リリース日:2023年11月10日
フォーマット:配信(購入・再生リンクはこちら)
公式サイト
トラックリスト:
1. SORRY | ソーリー
2. BLEED | ブリード
3. I THOUGHT THAT I NEEDED YOU | アイ・ソート・ザット・アイ・ニーデット・ユー
4. WHERE DO YOU SLEEP? | ウェアー・ドゥー・ユー・スリープ?
5. TOO MUCH (feat. Jung Kook & Central Cee) | トゥー・マッチ(feat. ジョングク&セントラル・シー)
6. TEAR ME APART | ティアー・ミー・アパート
7. STRANGERS (Interlude) | ストレンジャーズ(インタールード)
8. NIGHTS LIKE THIS | ナイツ・ライク・ディス
9. WHAT’S THE MOVE? (feat. Future & Baby Drill) | ワッツ・ザ・ムーヴ?(feat. フューチャー&ベイビー・ドリル)
10. STRANGERS PT 2 (Interlude) | ストレンジャーズ パート2 (インタールード)
11. CALL ME INSTEAD (feat. YoungBoy Never Broke Again & Robert Glasper) | コール・ミー・インステッド(feat. ヤングボーイ・ネヴァ―・ブローク・アゲイン&ロバート・グラスパー)
12. DESERVE YOU | ディザーヴ・ユー
13. WHAT WENT WRONG??? | ワット・ウェント・ロング???
14. THE LINE (feat. D4VD) | ザ・ライン(feat.デイヴィッド)
15. WHAT JUST HAPPENED | ワット・ジャスト・ハプン
16. YOU | ユー
17. LOVE AGAIN | ラブ・アゲイン
18. WHERE DOES YOUR SPIRIT GO? | ウェアー・ダズ・ユア・スピリット・ゴー?
19. YOU NEVER FORGET YOUR FIRST TIME… | ユー・ネヴァ―・フォゲット・ユア・ファースト・タイム
20. KIDS ARE GROWING UP | キッズ・アー・グローイング・アップ