プロゴルファー 小平智が語る日米のゴルフファンの試合の楽しみ方の違い | Interviews
日米のゴルフトーナメントで優勝し、両国のゴルフをよく知る小平智プロに『Hypegolf Japan』がインタビューを敢行





プロゴルファー 小平智が語る日米のゴルフファンの試合の楽しみ方の違い | Interviews
日米のゴルフトーナメントで優勝し、両国のゴルフをよく知る小平智プロに『Hypegolf Japan』がインタビューを敢行
10月19日(木)〜22日(日)の期間、千葉・印西の『習志野カントリークラブ』にて開催される「ZOZO CHAMPIONSHIP(ゾゾ チャンピオンシップ)」。本大会は、日本で開催される唯一の“PGAツアー”のトーナメントで、世界のトッププロが多数出場し、4日間の戦いに火花を散らす。2019年の第1回大会はタイガー・ウッズ(Tiger Woods)が、2021年の第3回大会は松山英樹が優勝を飾り、盛り上がりをみせた。本稿では、そんな毎年多くのギャラリーを集める本大会で長年日本のトッププロとして活躍し、スポット参戦した2018年の「RBCヘリテージ」で優勝してその権利を得て以来、アメリカツアーにも本格参戦している小平智プロに、日米のゴルフカルチャーの違いについてなどを語ってもらった。
Hypegolf:まずは、日米両方のトップカテゴリーを知る小平さんが感じた、日米のギャラリーの楽しみ方の違いを教えてください。
小平智:多くの違いがあると思います。日本では、ひいきのプロを追いかける方たちもいますが、我々選手のプレーをじっくりと観察し、ご自分のプレーの参考にしようとしている方が多いように思います。その中には、まるでレッスンを受けにきているかのように真剣な表情の方もいらっしゃいます(笑)。
自分のプレーの参考にしようと観戦を?
そうです。例えば、日本で女子プロの試合のほうが人気がある理由の1つは、アマチュアゴルファーにとって、男子プロよりも参考になるからではないでしょうか。男子プロのプレーはとても真似できないけれど、女子プロのプレーなら参考にできると。※1
※1:女子プロのスイングのヘッドスピードは男性アマチュアゴルファーのヘッドスピードに近いということもあり、アマチュアゴルファーは女子プロをより参考にする傾向が高い。
一方で、アメリカのギャラリーはどういった楽しみ方をするのでしょうか?
アメリカのギャラリーは、地域で開かれるお祭りを見にきているような感覚に近いでしょうか。毎年来場し、おいしいものを食べ、おいしいお酒を飲みながら、選手たちの異次元のプレーを見て楽しんでくれているように思います。
異次元のプレー!
あくまで僕の考えなのですが、プロスポーツは真似できるようではダメです。我々は、ギャラリーの皆さんが到底真似できないレベルのプレーをしなければならない。PGAだけでなく、NBAでも、NHLでも、MLBでも、アメリカのギャラリーはそういったレベルのプレーを観るためにお金を払っているように感じます。
小平さんからみた日米のギャラリーのファッションに違いはありますか?
うーん。PGAのギャラリーにおしゃれをしてきている人はあまり見かけないですね。大抵、Tシャツに短パンですもん(笑)。ドレスアップしている女性も稀にいますけど。日本のギャラリーのほうがフォーマルな服装の方が多いという印象です。
ご自身が試合で身に着けるウェアは、日米のギャラリーにあわせてセレクトすることはありますか?
それはないですね。僕は、明るく目立つ色のウェアだと自分のプレーが落ち着かないような気がするので、シンプルな色を選ぶことが多いです。
最終日はこの色のウェアと決めているプロもいますが、小平さんはそのような決めごともないのでしょうか?
ないです。常にその日の朝の気分で選びます。
PGAツアーと日本のツアーのコースセッティングで根本的に異なるのは、どういうところですか?
なかなか表現が難しいのですが、例えばプロの試合では、アマチュアが普段ロングホール(PAR5)としてプレーしているホールをミドルホール(PAR4)として設定することがあります。当然それだとプロにとっても長くて難しいミドルホールになるのですが、それにアゲンストの風という条件が加わると、トッププロでもセカンドでグリーンに載せるのが難しいわけです。そういう場合、PGAだと臨機応変にティー位置を前に出します。試合がよりドラマティックになるように、いろいろと手を打つという印象ですね。
それに対して、日本ツアーはどうでしょうか?
日本のツアーは、難しいホールは難しいホールとして、あまりセッティングを変えません。どちらが良い悪いという話ではないのですが、PGAのセッティングのほうが、良いプレーにはきちんと褒美があり、悪いプレーにはちゃんと罰があるという印象で、やる気が出るとは思います。
グリーンなどの違いも教えてください。
アメリカは東西南北に広いので、地域によって気候が違い、芝の種類や特徴がさまざまです。バミューダ芝の中にティフトン芝があるだとか。なので、とにかく適応能力が求められます。日本でベント芝でしかプレーしたことがない選手がPGAで1年間プレーをすると、グリーンの芝の種類を覚えるのに苦労し、1年目はそれで終わってしまうという感じですね。僕も数年アメリカで戦って、ようやく各地のグリーンの芝に対応できるようになってきたところです。
小平さんは、2018年にPGAツアーで優勝し、年間を通じてPGAツアーに参戦する権利を得たわけですが、毎年のように優勝していた日本ツアーを離れ、PGAへ行くことに迷いはなかったのでしょうか?
僕がゴルフを始めたのは、タイガー・ウッズのプレーに憧れたからです。子供の頃から、テレビで日本の試合よりもアメリカの試合を観ることが多くて。なので、日本の賞金王などをイメージしてプロを目指したわけではなく、アメリカでゴルフをすることを夢見てプロを目指しました。そこで、幸運にも何試合かPGAの試合に出られたうちの1戦で優勝することができ、年間を通じてプレーするチャンスを得たのです。もしかしたら、日本にいたほうが勝利数は稼げたのかもしれませんが、当時の僕にとって迷う要素はなにもありませんでしたね。チャンスだと思ったとき、すぐにアメリカに家を買いました。そして現在、このZOZO CHAMPIONSHIPをはじめとしたPGAツアーを全力で戦っているところです。
ゴルフを始めるきっかけになったタイガー・ウッズと試合でラウンドする機会はありましたか?
まさに、このZOZO CHAMPIONSHIPの第1回大会の予選ラウンド2日間に、初めて一緒にラウンドすることができたんです。1つの夢が叶った瞬間でした。憧れの選手とのラウンドで、いいプレーができたのも嬉しかったですね。ラウンド中に、タイガーからサトシと呼ばれたときには、とても興奮しました!
そういう意味では、ZOZO CHAMPIONSHIPは小平プロにとって特別な試合の1つというわけですね。
夢がかなった初回を始め、毎年何か自分のターニングポイントになっている大会ですね。この試合をきっかけに感覚がよくなったりと……。
今年はどんなターニングポイントになるかが楽しみですね。小平さんの活躍に、4日間注目しています。
ありがとうございます。頑張ります!