なぜ ZOZO CHAMPIONSHIP は日本最高峰のゴルフトーナメントなのか? 現地レポートから、その中身を紐解く
日本最大級のゴルフトーナメント 「ZOZO CHAMPIONSHIP」を、自動車評論家でありながらもゴルフ好きの塩見智が特別レポート










プロゴルフトーナメントの「ZOZO CHAMPIONSHIP(ゾゾ チャンピオンシップ)」が10月19日(木)〜22日(日)、千葉・印西の『アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ』で開催され、ワールドクラスの選手たちによる4日間の戦いが繰り広げられた。本試合は国内で開催されているが、れっきとした米「PGAツアー」最高峰の「FedExカップ」の一戦で、選手、コースセッティング、運営にいたるまで、まるごとアメリカからやってきたイベントだ。『Hypegolf Japan(ハイプゴルフ ジャパン)』は試合が始まる前の16日(月)よりコースへと足を運び、普段からツアーに帯同するスポーツメディアとは違った、ゴルフ好きのやじうま目線で一部始終を見て回った。
ゴルフファンが目にするトーナメントは19日(木)のファーストラウンドからだが、イベント準備は16日(月)に始まる。設営班によって、観客席、観客の動線を決めるコースロープ、メディアセンターなど、普段のコースにはない設備が手際よく設営されていく。もちろん、コースのセッティングはもう少し早くから始まり、会場は一般営業日とはまるで異なる状態に仕上げられる。
本試合が行われた『アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ』は、キングコース18ホール、クイーンホール18ホールの計36ホールをもつコースだが、「ZOZO CHAMPIONSHIP」では、贅沢にも両コースから選んだオリジナルの18ホールを形成して試合が行われる。また本来パー5のホール(クイーンの16番)を、パー4(ZOZOの4番)として難易度を上げたりもしている。同ホールは、一流プロでもバーディー数よりもボギー数のほうが多く、結果的に最大の難関ホールとなっていた。
また、前述の通り「ZOZO CHAMPIONSHIP」は「FedExカップ フォール」という秋のシーズンの一戦であり、選手たちの多くはアメリカ・ネバダ州で開催された前戦終了後、「PGA」がチャーターした航空機で来日し、今回のトーナメントに臨む。17日(火)には選手がちらほらを姿を見せ、練習を始める。18日(水)はプロとスポンサーらによって招待されたアマチュアが、彼らと一緒にラウンドする“プロアマ”が開催され、19日(木)に本番となるファーストラウンドが行われる。20日(金)のセカンドラウンドでは、強い風に悩まされてスコアを崩す選手が多かった。一流の選手が表情を曇らせる姿を観ることは(選手には申し訳ないが)ゴルフファンとしては見応えがある。
そして、週末となる21日(土)。トーナメントの盛り上がりは本格化した。まず、観客の数が違う。選手のナイスショットに対する大きな歓声と拍手が、あちこちのホールから聞こえてきた。これぞゴルフトーナメントだ! 20日(金)までは、人気選手でも比較的簡単によいポジションから観ることができたが、この日はかなり先回りして待っていなければならなかった。
それにしても、「PGA」のファンの楽しませ方は絶妙だ。チケットとは別に料金を支払うと、前方の専用ゾーンから見られるエキサイティングゾーンや、ティーショットを間近で座って見られるフロントローシートも設定されるなど、きめ細かいサービスが用意されていた。身長130cm以下の子供と保護者1名が入れるキッズエリアは、子供たちのためだけでなく、将来のプロゴルファーを生み出す「PGA」のサステナビリティのためかもしれない。
さらに、「ZOZO CHAMPIONSHIP」は、限られたホールの限られたゾーンでしか写真撮影が許されていない。この理由は、日本のスマートフォンはシャッター音が鳴るからだとされている。だが、動画撮影は意外にもすべてのエリアで可能(選手がショットのルーティーンに入ってからの音が鳴る動作は禁止)で、そこら中で何度も教科書のようなスイングが繰り広げられるわけで、貴重な機会を逃すまいと多くのアマチュアゴルファーがスマートフォンで動画撮影していた。SNS上には、トーナメント中の数々のナイスショットが公開されているのではないだろうか。
プロゴルフトーナメントは、ホール間を移動するプロがギャラリーのすぐ近くを通過するのも楽しみの1つだ。「ZOZO CHAMPIONSHIP」でもそれは同じで、普段はテレビでしか見ることの出来ない松山英樹や、コリン・モリカワ(Collin Morikawa)、リッキー・ファウラー(Rickie Fowler)らが、すぐそばを歩くのだ。何度か思わずメディアという立場を忘れ、いちアマチュアゴルファーとなって声援を送りそうになった。
最終日の22日(日)、サードラウンド終了時点で5位に付けた小平智が、2018年以来の「PGAツアー」優勝を目指し、10:16にスタート! 大勢のギャラリーが注目するなかで放ったティーショットは見事フェアウェイに。小平選手には、先日インタビューをさせていただいたこともあり、今大会、我々は彼への思い入れをたっぷりに追いかけた。
結果は、サードラウンド終盤にスコアを伸ばし、4位で最終日をスタートしたコリン・モリカワが63で回り、通算14アンダーで2位に6打差をつけて圧勝した。8位スタートの石川遼が67で回り、通算7アンダーで日本人最上位の4位タイに食い込んだ。注目の小平選手は、終盤にスコアを落として惜しくも12位タイ。
「ZOZO CHAMPIONSHIP」の1週間、プロゴルフトーナメントをインサイドから見て、一流プロの異次元のプレーに何度も度肝を抜かれた。当たり前だが、画面越しに大会を観たときとは迫力が違った。個人的に最も違いを感じたのは、ショット音だ。プレーだけでなく、スコアが上がらない選手がイラつく様子や、緊張感のなかにも選手同士が談笑する姿などを見られるのも、現地にいてこそ楽しめる光景だった。他にも、一流の選手がプレーしているすぐ近くの芝生に座って、唐揚げ丼やボロネーゼパスタを食べているギャラリーを見かけたが、それもまた、贅沢なトーナメントの楽しみ方だと感じた。
早くも来年の「ZOZO CHAMPIONSHIP」が待ち遠しい。