新しい甘い生活第2章!フェラーリ・ローマ・スパイダーに乗った!
イタリア・サルディーニャ島まで足を伸ばし、モータージャーナリストの大谷達也がフェラーリ・ローマ・スパイダーの国際試乗会に参加した







オトナの香り
木枯らしが吹きすさぶなか、薄手のジャケットを羽織っただけで肩をすくめながら歩く姿になんともいえない“色気”を覚えることがある。
最新素材を使った防寒着で身を固めるのはもちろんいいけれど、それとは対照的な薄着姿に、成熟したオトナの香りを感じてしまうのは私だけではないはずだ。
オープンカーにも、私はこれと似た「オトナの香り」を感じ取ることがある。それも最近はやりのメタルハードトップ・タイプではなく、昔ながらのキャンバス製ソフトトップだと、その印象はなおさら強まる。頑丈な金属でできたルーフであればどんなに強い雨でも、どんなに寒い日でも安心だろう。そこを敢えて、やや頼りない(感じがする)ソフトトップで押し通すところに、オトナの色気を感じてしまうのだ。
先ごろ「フェラーリ(Ferrari)」がリリースしたローマ・スパイダー(Roma Spider)は、そんなオトナの色気が強く漂う1台である。そもそも、ベースとなったクーペ版のローマからして、そのコンセプトは「LA NUOVA DOLCE VITA(新しい、甘い生活)」なのだ。「LA DOLCE VITA(甘い生活)」は鬼才フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)監督が1960年に公開した作品で、ローマに住まう上流階級の妖しくも洗練された生き方を描いた映画。そのイメージを現代流に再解釈したクルマがフェラーリ・ローマだから、往年のスポーツカーを髣髴とするシンプルで伸びやかなラインでスタイリングが構成されているのは当然のこと。
もっと言っちゃえば、頑丈な金属製ルーフを備えたクーペよりも、「薄手のジャケット」を思わせるソフトトップのほうがローマのコンセプトに似合うことは、最初からわかりきった話だったのだ。そしてキャンバス製トップを手に入れた待望のローマ・スパイダーが先ごろデビュー。その国際試乗会に参加するため、私はイタリア・サルディーニャ島まで足を伸ばしてきた。
スタイリングは、写真でおわかりのとおり、もともとエレガントだったローマのプロポーションに、なんともいえない“はかなさ”というか退廃的なムードが加わって、「オトナの色気」がプンプンと漂っている。これには、キャンパス地でデリケートな3D形状を表現したソフトトップのエレガントなデザインが多分に効を奏しているはず。それも、うしろにいくにつれて横幅がきゅっと狭められているところが、なんともセクシーだ。
乗り心地は驚くことにローマよりもソフト傾向で快適。優雅なスタイリングによくマッチした設定だ。それでも、ワインディングロードを思いのままに駆け抜けていけるハンドリングを手に入れているところは、いかにも「フェラーリ」らしい。
620psを生み出すV8ツインターボエンジンがパワフルなのはいうまでもないが、驚くべきはレスポンスが素直で扱いやすいうえ、「フェラーリ」らしい軽快で軽やかな音色を響かせること。この点でも、クーペ版のローマを上回っているかもしれない。
ソフトトップに改められたスタイリングが魅力的なだけでなく、乗り心地でも、そしてエンジン音の面でもクーペを凌ぐ洗練度を手に入れたローマ・スパイダーは、「これぞローマの完成形!」といいたくなる仕上がりだった。
ちなみに、ローマ・スパイダーのソフトトップは、イメージとは正反対のしっかりとした作りなので、ご安心いただきたい。