Interviews: sacai デザイナー 阿部千登勢に訊くCartier との出会いによって誕生した限定ジュエリーコレクションについて
阿部千登勢にとって思い入れのある〈Cartier〉のアイコン Trinityを再構築した限定コレクションの成り立ちに迫る


Interviews: sacai デザイナー 阿部千登勢に訊くCartier との出会いによって誕生した限定ジュエリーコレクションについて
阿部千登勢にとって思い入れのある〈Cartier〉のアイコン Trinityを再構築した限定コレクションの成り立ちに迫る
7月7日に日本先行ローンチとなった〈sacai(サカイ)〉のデザイナー 阿部千登勢と〈Cartier(カルティエ)〉がTrinity(トリニティ)リングに対するそれぞれのビジョンを融合した限定ジュエリーコレクション “CARTIER TRINITY FOR CHITOSE ABE OF sacai”。誕生からまもなく100年を迎える〈Cartier〉のアイコン Trinityが、阿部千登勢と〈Cartier〉のクリエイティブスタジオによって再構築され、新たなデザインとして全6型(リング、ネックレス、ブレスレット、シングルイヤリング)がラインアップする。
〈sacai〉といえば、メインラインのアパレルや『HYPEBEAST』読者にとってはお馴染みであろう〈Nike(ナイキ)〉とのコラボフットウェアなどで見られるハイブリッドの手法が代名詞。見慣れたベーシックなアイテムを唯一無二のピースに昇華させる“安心と裏切りのバランス”という阿部千登勢の理念を今コレクションのテーマにも掲げている。ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールドという3色の組み合わせは健在だが、多様な着用方法、リングのシェイプとねじれ、肌の上でのポジションなど、完成された〈Cartier〉の名品の新たな可能性・進化を探究するアイテムに。
このたび『HYPEBEAST』では、東京・表参道で開催中の“CARTIER TRINITY FOR CHITOSE ABE OF sacai”のポップアップ会場にて、阿部千登勢へのインタビューを実施。ポップアップ開催前という多忙な期間にも関わらず、我々の質問に丁寧に答えてくれた。
HYPEBEAST:まず最初に、今回の取り組みが実現に至ったきっかけ/経緯を改めて教えていただけますでしょうか。
私どもが一緒にお仕事をさせていただく場合は、自分が欲しいものや、スタッフから声が上がったりということが多く、今回は私がCartierを好きなので「一緒に何かできませんか?」というところからスタートしました。
コレクションにTrinityを用いるというのは、どのようにして決まったのでしょうか。
まもなくTrinity100周年ということもあるのですが、sacaiでは、みんなが知ってるジャケットやシャツを、誰も知らないものに再構築するという手法をよく使うので、Cariterの中で最も歴史のある誰もが知ってるTrinityを全く知らないものにできたら面白いのではないか、という発想から出発しています。
制作から発表までは、コロナ禍を挟んでいたかと思いますが、どのような形で進行していったのでしょうか?ご苦労された点とかありましたか?
このプロジェクトは、4年ほど前から始まっています。リモートでミーティングも重ねましたが、これだけ時間がかかったのは、洋服もそうですが、実際に着けてみたり、デザインだけではなく着け心地も含めて大切にしました。大変だったというよりも、時間はかかってもいいので、お互い納得のいくものを作ろう・探ろうと制作を進めました。
“安心”と“裏切り”というのは、sacaiでも実践されているテーマかと思いますが、100年の歴史を持つTrinityに落とし込む上で、どこまでどうアレンジできるなど、Cartier側の制限はあったりしたのでしょうか。
そのような制限は全くありませんでした。これは今回のCartierに限った話ではないのですが、1番良い仕事ができるときはそのような時なんです。
デザインのポイントを教えていただけますでしょうか。
Trinityは、3色のゴールドリングが同じバランスでできていますが、今回の取り組みでは、そのバランスを変え、あとは着け方もいくつかのパターンができるように意識しました。
阿部さん自身がTrinityを以前からお好きだったとお伺いしましたが、Trinityにまつわるエピソードや思い入れなどございましたら教えてください。
社会人になって自分で初めて買ったCartierがTrinityのリングでした。それを話すと「どこで買ったのですか?」など、色々と質問されるのですが、昔のこと過ぎてあまり覚えていません。ですが、いわゆるリアルジュエリーを買ったのが初めてだったので、良い思い出です。
今回6モデル発表されますが、あえてこの中から1つを……
選べません!こういう場ではたくさん着けさせていただいてますが、その時の洋服に合わせて単体で着けることが多いですね。選んだ方がいいですか?(笑)
選ぶのはやめましょう(笑)。では着用率が高いのは?
着用率が高いのは、リングやブレスレットかもしれません。ブレスレットはいつもしてます。他のCartierのブレスレットも20年ぐらいずっとしていて、外していません。リングだとデザインでペンを持つ時などは外していまして。
阿部さんから見たCartierの魅力は?
歴史のあるジュエラーとしての魅力は、もちろんたくさんあると思うのですが、私がいつも考えている「仕事をルーティンにしない」や「面白いことをやる」など、既成概念に囚われずにやっていこうという意識があり。制限があると思ったのですが、全くそうではなく。「一緒に何かできませんか?」と言われて、やってくださることに魅力を感じました。本当に自分がやりたいものは、何の繋がりもなくてもアプローチしたりします。それがこのような形で実現するのは、皆さん驚いたかもしれません。
この流れでお聞きしたいのですが、これまでに多くのブランドやアーティストと取り組みをされてますよね、その相手を選ぶポイントやタイミングを教えていただけますか。
自分が好きかだけで、それ以外の基準はありません。有名無名/条件が良い悪いなどは関係なく、私にとってsacaiにとって興味のあるもの、私やスタッフが着けたい・体験したいなど、基準はそれぐらいですね。CartierのTrinityの3つの要素にも通じるのですが、私たちは人との関わりを大事にして仕事をしています。私たちはファミリーと呼んでるのですが、他との取り組みはそういった関係性の中で生まれることが多いですね。良い意味で全然仕事ぽくないです。それはCartierも同じで、私も含めてスタッフも楽しくやらせていただきました。そういう時は必ず成功しています。
それが理想的な気がしますね。sacaiとCartierの共通点など感じることはありますか?
Cartierは本当に長い歴史があって、それに比べると私たちはそこまで長くありません。先程もお伝えしましたが、既成概念がなく、こういうことにトライしてくださるところや、私たちもそれを意識してずっと仕事してきてるので、お互いとても柔軟なところは共通点なのかと思います。
先日、別件でCartierとお仕事させていただいたのですが、尖っているのが本来のCartierの姿だと教えていただいて、それが今回のような取り組みを通じて、それが世の中に伝わる良い機会な気がします。
それが伝わるとすごく嬉しいです。本来は革新的で既成概念がないということが。
宇多田ヒカルさんのキャンペーン映像も素敵ですね。今回はありがとうございました。

Cartier