Essentials : 長谷川昭雄

『HBX』よりローンチする〈NAUTICA JP〉とのコラボコレクションについて長谷川氏へインタビューを敢行

ファッション 
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シーンのキーパーソンたちの“必需品”に焦点を当てる『HYPEBEAST』の不定期企画 “Essentials”。その最新回は、7月29日(金)より『HBX』にて本格ローンチする〈NAUTICA JP(ノーティカ ジャパン)〉とのコラボコレクションを手掛けたスタイリスト/ファッションディレクター 長谷川昭雄が登場。

ローンチに先駆けて7月9日(土)〜19日(月)の会期で行われたポップアップ “NAUTICA JP for HBX in TOKYO”も大きな反響を得た本コレクションは、長谷川氏が全面的にディレクションを手掛けた日用品シリーズのほか、〈NAUTICA JP〉のスタンダードアイテムを『HBX』用に再編集したデイリーウェアを展開する。今回の“Essentials”では、日本だけでなく中国でも絶大な人気を誇る長谷川氏が日常的に使用しているアイテムの数々をご紹介。また、本稿では『HBX』とのコラボコレクションについてのスペシャルインタビューも敢行。コレクションの本格ローンチに備え、ぜひ全体を一読してほしい。

長谷川氏が普段から愛用している“Essentials”では、ベーシックながらも彼独自の審美眼で選び抜かれたこだわりのアイテムが並ぶ。〈Prada(プラダ)〉のバックパックは、定番のモデルを少しだけ変更したデザインに注目。時計は知る人だけがわかる高級時計として〈IWC(アイ・ダブリュー・シー)〉のPilot’s Watch Automatic(パイロット・ウォッチ・オートマティック)“Laureus Sport For Good(ローレウス・スポーツ・フォー・グッド)”を愛用。財布は、日本発のジッパーバッグブランド〈Pake®︎(パケ)〉と謎多き全天候型ブランド〈ALWAYTH(オルウェイズ)〉とのコラボウォレットというユニークなチョイスに。氏曰く「財布はその人らしさを示すから、個性が見えたほうがいい」とのこと。ハンカチは最大限柔らかく、汗をしっかり吸うことが大事なため、代々木上原にあるレストラン『sio』の今治タオルを常備。シューズはシンプルで美しいデザインが魅力の〈Reebok(リーボック)〉WORKOUT PLUS 2759。「夏は上から下まで、白で過ごしたい」との理由から、〈Polo Ralph Lauren(ポロ ラルフ ローレン)〉のキャップ、〈NAUTICA JP〉のチノショーツは共にクリーンなホワイトカラーをセレクト。長谷川氏がディレクションを手掛ける〈SNBYA.H〉のタンクトップは、「肌に最も触れる部分だからこそ、ウールであるべき」というこだわりから天然の機能素材であるメリノウールを採用している。〈A.H+CHICSTOCKS〉のウールソックスは左に“A”、右に“H”の文字が配されているのがポイント。氏曰く「ソックスは夏でもウール素材がベスト」。


HYPEBEAST:スタイリングのすべてが服の本質を伝えることを目的としていると仰いましたが、HBXでリリースされる予定のNAUTICAコレクションの本質は何ですか?

このプロジェクトにおいて、香港で発売する分の服のオーダーをしたのはHBXなので、こちらが一番おすすめしたい色やアイテムとは少し違うのですが、全てNAUTICA JPが制作しているアイテムであり、国外には絶対に出して来なかったものです。どれもスタンダードで、どんな人にも似合うであろうクラシックなアイテムだと思います。僕らの服を似せて作る人たちもいますが、これが本物のNAUTICA JPの服で、それを全世界に伝えることが本質的なテーマです。

スタイリングとダイレクションを通して、その本質をどのように引き出しますか?

服は人が着ないとよくわかりません。常にそこを大事にしています。

さまざまな雑誌やブランドでスタイリングを続けたいと思う理由は何ですか?

僕はスタイリングをすることが得意ですし、そこを求めてもらえて、自分でも興味を持てれば、仕事をします。他に理由はありません。仕事をいただいたら、自分が適任とされていると捉えて、精一杯やるだけです。ただ、今は時間の余裕はなくて、新規ブランドからの依頼は受けていません。何年も毎シーズンご依頼をいただいているブランドについては、ブランディングの一部を担わせていただいていると考え、精一杯やらせていただいています。

スタイリストとしてファッション界に入った最初と比べて、今のファッションやスタイリング、編集コミュニティーはどのように変化しましたか?その変化にどんな影響を与えましたか?

メンズファッションというジャンルが、多くの男性に受け入れられるようになったと思います。一方で、デジタルの進化によって、今はファッション雑誌を買う時代ではなくなったと感じます。それは、雑誌を買う場所がなくなったことが大きな問題であって、本質的には今もっとも必要な存在だと感じます。特に日本という国はデジタルよりも雑誌の方が向いています。狭い国ですし、壁があまりない国です。なので、ファッションカルチャーを広げることはファッション雑誌にしかできないと思います。
僕個人は、今、当時POPEYE(ポパイ)を作っていた時のメンバーと、ブランドのビジュアル制作やAH.Hの仕事をしていますが、ウェブマガジンや各ブランドの自社媒体には、ファッションをファンに深く伝えることはできても、浅く広げることはできないと感じます。でもそこが、これからのファッションには一番大事だと僕はいます。

ブランドやコレクションとコラボレーションするには、レーベルとのつながりが必要ですか?それともクリエイティブディレクションを取り入れた後可能性を見出しますか?

以前は何も知らないブランドとコラボレーションしたこともあります。相手がどんなブランドであろうと関係ないし、かっこよくて面白ければそれでいいと思っていました。でも今は、そういうことはやめました。面倒が増えるだけです。今は知り合い以外と仕事をするつもりはありません。

HBXとコラボレーションすることを決めた理由は何ですか?

まず、中国の方が僕の仕事を気にかけてくれているという話を聞いたことです。シティボーイという自分らが作った世界観を、たくさんの中国の方が気にかけてくださっていることはとてもエキサイティングで嬉しいことです。また、今回の企画は、渡辺くんが持って来てくれました。彼の仕事なら信頼できると思いました。ただ、彼らが作ったアイテムを横に並べて、新しいレーベルとして展開しているようです。そうなってしまうと、僕らが作った世界観が、違うイメージで中国内に広まっていってしまうと感じました。僕は完璧主義者なので、僕の作った完璧な世界観を1ミリも変えずに伝えたいのです。そこをきちんと示すためにも、Hypebeastの力をお借りして、全世界に僕らの世界観を確実に明確に伝えたいと思ったのです。

ファッションスタイリングに関係のない、やってみたいことは何ですか?スタイリングや撮影ディレクション以外に、何をなさっていますか?

服のディレクション、お店のディレクションなどをやっています。基本的にはファッションにまつわることです。今後は、家やホテルや飲食店などもやってみたいです。

作品でよく見る“Ivy(アイビー)”と“Nature(ネイチャー)”のモチーフとの関係性を教えてください。“City(シティ)”と“Nature(ネイチャー)”、どちらを選びますか?

シティというのは自分がいつも過ごす日常です。アイビーの人たちが使っていたスタンダードなアイテムはとても重要です。既製品の文化はアメリカで作られたと思います。なので、いま、全世界に広がっているファッションの一番ベーシックな部分はアメリカで作られたと思っています。その最もプリミティブで、シンプルな服というのが、アイビーのアイテムに多いと思っています。
ネイチャーというのは森や山、海などの自然という認識でいいのでしょうか。都会が自分の暮らす日常の場所だとすると、たまに自然のある空間に出かけることは楽しいと感じます。僕は東京生まれなので、自然の中だけで生きていくことには今は興味はありません。

NAUTICAと言えば、1980年代後半から90年代のニューヨーク、そしてもちろんセーリングを思い浮かべます。ルーツは東海岸アメリカの感じがします。ブランドのクリエイティブディレクターを務めたとき、ブランドの歴史を念頭に置いておくことはどれほど重要でしたか?

ルーツは重要ですが、当時と似たようないアイテムを作ろうとは思いませんでした。僕は日本人ですし、今は2022年ですし、売る場所は日本です。自分が経験して血や肉となったことしか、表現にならないので、サンプリングすることには興味はありませんでした。ただ、ルーツを意識しすぎても違うと思います。ここは日本ですから、マリンとか言われてもみんなよくわからないです。一方で、アメリカントラッド、アイビーやプレッピーカルチャーの延長にNAUTICAの目指す何かがあったには間違いないです。そう思うと、アイビーやプレッピーなどのメンズファッションのプリミティブなアイテムを丁寧に作って行くことが最も大事なことだと思っています。

新しいブランドを立ち上げるよりも、歴史を持ったブランドと連携するほうがプレッシャーを感じますか?

新しいブランドを作る方が大変です。NAUTICAをはじめる時にプレッシャーを感じるということはあまりなかったです。それよりも、やるからには成し遂げる以外に道はないので、結果をいい感じにしたいということしか考えていないです。だから、一緒に働くチームのみんなは大変だと思います。それに歴史がある分、たたき台があるわけですから、ある意味、楽です。物事はルールがある方が、決定がしやすいことが多いんじゃないですかね。

コロナ禍で注目を集めるアウトドアやゴープコア(gorpcore)が、人々のファッション観を変えました。このトレンドは、ファッションサイクルのほんの一部である、短期間のトレンドになると思いますか?

どうなんでしょう。先のことは誰も分かりません。

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