Interviews: 異端の料理人クルー Ghetto Gastro に迫る

食を通じてさまざまカルチャーの橋渡しを務める

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東京・原宿の『Tokyo Burnside(トーキョーバーンサイド)』にて、12月24日(土)〜30日(金)の期間限定で開催された〈sacai(サカイ)〉と異端のシェフ集団 Ghetto Gastro(ゲットー・ガストロ)とのコラボレーションカフェ『sacai GASTRO(サカイ ガストロ)』。このカフェは両者に加えて〈Nike(ナイキ)〉『Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)』、Rocky Xu(ロッキー・スー)による『Rocky’s Matcha(ロッキーズ マッチャ)』をパートナーに迎えている。

2012年にアメリカ・ニューヨーク・ブロンクスで産声を上げたGhetto Gastro。食を通じてファッション、アート、ヒップホップなど、さまざまなカルチャーの橋渡しとして独自の活動に勤しむ。これまでに先述した〈Nike〉〈Cartier(カルティエ)〉「Beats by Dr. Dre(ビーツ・バイ・ドクタードレ)」と協業を果たし、その注目度は年々高まるばかり。10月には初の書籍『Black Power Kitchen(ブラック パワー キッチン)』も発表している。今回の『sacai GASTRO』の開催にあたり、共同ファウンダーのJon Gray(ジョン・グレイ)、Lester Walker(レスター・ウォーカー)、Pierre Serrao(ピエール・セラオ)が来日。中でもJonは先日アナウンスされた今年を代表する100名 “Hypebeast100 2022”にも選出されている。また「en one tokyo(エンワントウキョウ)」の手掛ける会場の『Tokyo Burnside』は、Ghetto Gastroプロデュースのもと、内装をノルウェーの建築事務所「Snøhetta(スノーヘッタ)」が担当している(Tokyo Burnsideついては下記の動画参照)。

本稿では『Tokyo Burnside』にて実施したファウンダー3名のミニインタビューをお届け。リラックスしたムードの中、クルーの成り立ちや『sacai GASTRO』について語ってくれた。

Hypebeast:Ghetto Gastroはどのようにスタートしたのですか?

Jon Gray(以下、J): 僕たちは確固たるビジョンを持ってスタートしました。ブロンクス出身で、文化的コネクターの1つであるフードを通して自分たちの文化を讃えるプラットフォームを作りたかったし、それが最も良いコミュニケーション方法だと感じたんです。いわゆるトラディッショナルな訓練を受けていないシェフですから。デザイン、アート、建築、起業のバックグラウンドを持つ僕が、ゆくゆく何か一緒にやろうと思っていたところ、Pierreが参加してくれたのをきっかけとして、その動きは加速し、結果的に世界中を飛び回ることになりました。素晴らしい人たちとコラボレーションして、新しいことを学び、カルチャー交流のため対話を重ねてきました。

Lester Walker(以下、L):これは僕たちにとっても、そして人々の身と心にとっても本当に満たされることが大切なことなのです。そして、ブランドとのパートナーシップや、同じような考えを持つ人たちに繋がり、それをまたその人のネットワークに渡して。コネクションを構築することで、架け橋となるのです。これはかなり個人的なことですが、それはまさに現代を生きる人々の糧となり、栄養となり、教育し、学ぶことなのです。

Pierre Serrao(以下、P):現代のロビン・フッドみたいなもんですね、金持ちから徴収して民にその施しを与えるという意味で。

今回のプロジェクト sacai GASTROについて教えてください。

J:2021年にNikeとサンプルを作ったのがきっかけだね。その年の10月にロサンゼルスで行われたファミリースタイルのフェスティバルのために、一緒にマーチを作って。NikeはWaffle Racer(ワッフルレーサー)の誕生を祝うタイミングでね、なぜなら、Nikeの名を世に知らしめた最初のスニーカーだからね。当時ワッフルの金型にヒントを得てソールを作ったんだよ。それで、sacaiが僕らお気に入りのWaffle Racerモデルのスニーカーを作ってるから、sacaiとコラボしようということになったんだ。ただ、闇雲に思いついただけなんだけどね。それで、スタッフとNikeのFraser Cooke(フレーザー・クック)が一緒になって、源馬さんとsacaiチームに紹介してくれて、実現することができたんだ。それが昨年のことで、私たちはアイデアを出し続け、どうすればそれを構築し、発展させることができるかを考え、パートナーシップを結び、このBurnsideでのイベントに漕ぎ着けたんだ。これは僕たちがSnøhettaと共にデザインした空間です。パンデミックの時にデザインして、オリンピックにも間に合わなかったけれど、今回クルーとして初めて参加できたプロジェクトなんだ。

L:そして、sacaiがデザインしたものがこうして形になるというのは、まさに天国のような組み合わせだね。ここにある全てがsacaiのデザインに影響を受けているのです。私たちの役目は私たちなりの料理の手法でそれに息を吹き込むことで、人々に発見される機会をもたらしているわけです。アート、音楽、ファッション、デザイン、全てを繋ぎ合わせて、Getto Gastroを創り上げているんだ。そしてsacaiは、ライフスタイルブランドとして、またデザインやシルエットに対するアーティスティックなアプローチで、それを実現しているように思います。

J:また、彼らの仕掛けるコラボパートナーも注目に値します。〈Cartier〉やDr. Woo(ドクター・ウー)とかね。Getto Gastroもそうだけど、Nikeでさえも予測できないような、そういうサプライズ的な要素も気に入っています。

日本のフードシーンについてはどう思われますか?

P:私が思うに、日本の料理は世界で最も素晴らしい、言い換えれば最も奥深い食のシーンのひとつだと思います。食のあらゆる側面、あらゆるレベルにおいてです。世界のいろいろなレストランと比較して、その国のレストランに入ると、その国ならではのいろんなメニューが出てきます。例えば、イタリアンレストランに行けば、パスタ・ピザとかね。しかし、日本では、寿司、そば、うどん、天ぷら、カレー、トンカツなど、日本料理といっても細かく分かれていて、そしてそれら専門のところに行くと何が出てくるかはっきりしていて、その店で毎日それを作ることに集中して働いているわけです。それが、料理の技量や完成度を高めてくれるのだと感じています。

J:「人生最後の日に食べたい食事は何?」とか「どこの国の食べ物は1番好きですか?」とかよく聞かれるんだけど、僕の場合は、日本は常にトップ3に入ります。日本の好きなものは、Pierreが言ったように、寿司、うどん、そしてヌードルです。でも、日本人が作るイタリア料理も素晴らしいよ。日本人が作るフランス菓子は素晴らしい。ピザもすごい。どれも素晴らしいです。このまま自分を日本に置いていってほしいよ、好きものなんでも食べれるから(笑)。Savoyのピザやソルベもやばかったな。あとはPred PRの(大川)博子の関わっている銀座の和牛レストランもおいしかった。実は私たちは普段の生活の中でそれほど肉は食べないんだけど、日本に来ると別。何でもありになるんですよ。

P:今日は牛丼を食べるために、築地市場の“きつねや”に行ってきました。ミシュランの星の店も行ってみたけど、こういう市場のストリートフードも、300円でこんな美味しいものが食べれるんだから本当に素晴らしいと思う。

L:日本人は餃子も大好きですよね。しかもそれを別次元のレベルに持っていく。外はカリッと、中はしっとりとした食感で。皮は噛みごたえがあるから、いつも口の中で冒険しているような感じなんだ。口の中で様々な景色や匂い、バイブスそして聴くことそれは色んな感情を引き起こします。

J:そしてNARISAWAです。これは藤原ヒロシさんに謝辞を述べたいと思います。というのも、私が初めて東京に行ったときですから、このメンバーの中で私が最初にこの国へ来たと思うんです。2017年の最初の旅行から1年後に来たんです。ミラノから飛行機に乗っていた時、ファーストクラスに忍び込もうとしていたんですが、偶然Frazer Cookeに会いました。当然ファーストクラス席には入れてもらえなかったんだけど、通路で会って話たんだ。彼は「ヒロシは本当に食べ物が好きなんだ、会ってみよう」と言ってくれ、私はヒロシさんに会いNARISAWAに行きたい事を伝えたところ、彼から「予約はしたの?」と聞かれ、私は「ない」と答えたら、彼は「そりゃ無理だよ」と言われたんです。それで彼がすぐにNARISAWAに電話をかけてくれて繋げてくれました。今は成澤さんは大切な友人なんですが、本当に寛大で、食のシーンを切り開いてくれて、そのおかげで私たちはTOKYOを愛するようになったんです。そして、実際に本が出版され、コラボレーションが実現したのです。

ファッションと食の共通点は何でしょうか?

P:ファッションと食の間には多くの共通点があると思います。それは、どちらも芸術的な表現の方法であり、形態であると思います。自分のスタイルや生き方、洋服の重ね着などを通してね。sacaiは、異なる種類の質感やカットの生地を1枚、また1枚、そしてまた1枚と重ねていくのがとても上手です。食とファッションは、生活の中でそれぞれ異なる場所で活動しています。でも、どちらも日常生活で目にするものです。そして私たちは食べ物で同じような表現をしています。私たちのストーリー上にある味覚に関して言えば、行ったことのあるさまざまな場所のさまざまなフレーバーを試食して、新しい言語を作り出します。sacaiはファッションで同じことをしているので、私たちは共鳴しあっているようなものなのです。私たちはそれぞれ異なる場所で活動していますが、どちらも日々の生活で目にすることが出来ますからね。

L:とりあえずsacaiを着てればイケてる保証があるだろ(笑)。

J:でも、何を着ているかということは、何を気にしているか、何を食べているかということを表していると思うんだ。パンを食べるということは、スタイルやファッションだけでなく、料理にも自分の仲間を見つけることができるのです。だから、ファッションも食も、共に文化に触れる窓のようなものだと思うんだ。

料理をする時は、どんなスニーカーを履いてますか?

P:Tom Sachs(トム・サックス)のMars Yard 2.0だったり、僕らのコラボしたAir Jordan 1とか。それとsacaiのWaffleスニーカー。その3つが好きです。本当にその日次第なんだけど、個人的にはこの3つがローテーションで愛用してるんだ。

L:Air Jordanかな。2020年にJordan Brandと一緒にコラボレーションを行い、プロモーションをやったんだ。それ以来ルーティーンとしてキッチンで私のマストのスニーカーだね。それとsacaiだ。イケてるからね。

J:最新のCortezだ、絶対そうだろ。Cortezに決まってる(笑)

P:sacaiの最新のシューズならなんでも(笑)。

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テキスト
翻訳
Seijiro Eda / Hypebeast
インタビュアー
Yuki Abe / Hypebeast
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