ピート・モンドリアンの絵画が75年以上逆さまに吊るされていたことが判明
1941年の作品“New York City I”は壊れやすさを考慮して、今後も上下逆のまま展示される


抽象絵画の先駆者とされるオランダ出身の画家 Piet Mondrian(ピート・モンドリアン)の作品は、おそらく多くの人が目にした覚えがある絵画のひとつだろう。彼は初期には風景、樹木などを描いていたが、キュビスムの作品に影響され、やがて完全な抽象へ移行し1921年にMondrianの代表作である水平・垂直の直線と三原色から成る“Composition(コンポジション)”の作風を確立。その後第二次世界大戦によるヨーロッパでの戦火の拡大を避けて米・ニューヨークに移住し、以降一貫して自らの到達した“Composition”の作品を描き続けたと言われている。
彼の1941年の作品 “New York City I”は、生成りのキャンバスを背景に、黄色、赤、青の線が幾何学的に重なり合い、下部付近から線が太くなり、抽象化された輪郭線のような構成になっている。『Kunstsammlung Nordrhein Westfalen(ノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館)』でこれから開催される“モンドリアン展”の準備で本作品の調査をしていたキュレーターのSusanne Meyer-Büser(スザンネ・マイヤー=ビュザー)によると、この作品は同美術館内の施設『K20(近代美術館)』でその当時に開催された展覧会のために制作されたという。Susanneは、「太いグリッドは、実際には暗い空のように上部にあるべきなのです」と声明で述べている。
彼女をはじめとする数人の研究者は、パリの『Le Centre Pompidou(ポンピドゥー・センター)』に展示されている1942年の同名の作品“New York City”とこの絵を比較することによって、先述の結論を導き出したのだが、この作品にはキャンバスの上部に向かって格子が太くなっているのが顕著に表れているのだという。「私が他の学芸員に指摘したところ、非常に明白であることがわかりました。100%間違いなく、絵の向きが違うんです」とSusanneは付け加えた。
この絵がそもそもどのように、そしてなぜ逆さに吊るされたのかは不明だが、Susanneは「New York City Iの粘着テープはすでに非常に緩んでいて、糸でぶら下がっている状態です。今から元の向きにすると、重力で別の方向に引っ張られてしまうでしょう。そして、この上下逆の展示は今や作品のストーリーの一部なのです」と説明している。75年以上逆さまに吊るされていた作品は壊れやすさを考慮して、今後もそのまま展示されるようだ。