Interviews: OAMC ルーク・メイヤーに訊く3年ぶりの日本滞在とブランドを象徴する PEACEMAKER について

〈WTAPS〉との取り組みからコラボレーションに対する哲学までを掘り下げる

ファッション 
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去る10月11日に入国者数の上限が撤廃されたことも手伝い、世界各国からデザイナーやアーティストらの来日ラッシュが続く。そんな中〈OAMC(オーエーエムシー)〉を率いるLuke Meier(ルーク・メイヤー)とArnaud Faeh(アルノー・ファー)も久方ぶりに日本の地を踏んだ。というわけで本稿では、2018年以来約4年ぶりとなる貴重なLuke Meierのインタビューをお届けしたい(前回の内容はこちらから)。

『Hypebeast』読者には、周知の事実かもしれないが、あえて説明しておくと、カナダ・バンクーバー出身のLuke Meierは、ストリート業界の中心でキャリアを積みながら、同時期にニューヨーク州立ファッション工科大学でテーラリングなどデザインを専門的に学んでいる。その経験を活かして2014年に〈OAMC〉をスタート。現在はイタリア・ミラノを拠点としている。

インタビュー中にLukeに「OAMCについてどう思うか?」と逆に質問されて、改めて振り返ってみたのだが、ブランドが設立された2014年は、(すっかりチープな響きになってしまった)“ラグジュアリーストリート”がファッション業界の流行語になり始めた時期で、以後数年間は、右も左もストリート、ストリート、ストリート。もちろんネガティブなことばかりではないが、本質を失ったストリートが独り歩きしていた過渡期と言えるだろう。そんな中〈OAMC〉は、本来の“ラグジュアリーストリート”のあるべき姿を体現していたブランドであると考える。

話が脱線してしまったが、今回のインタビューでは、先日リリースされた〈WTAPS(ダブルタップス)〉とのコラボレーション、ブランドのシグネチャーとして確立されたPEACEMAKER(ピースメイカー)、コロナ禍以来初となる日本滞在の感想、2022年春夏からスタートしている新プロジェクト “RE:WORK”を中心に話を聞いた。
Interviews: OAMC ルーク・メイヤーに訊く3年ぶりの日本滞在とブランドを象徴する PEACEMAKER について
Hypebeast:まずはお帰りなさい。日本に最後に来たのはいつですか?

3年以上前だと思う、いや3年半以上かな?でも変な感じで、そんなに経っているとは思えないです。同じようにアメリカにも長い期間行くことができなくて、ちょうど先月ニューヨークにも行ったんですけど、それも3年ぶりくらいで。でもニューヨークでも全く同じ感じで、ずいぶん久しぶりだったのに、最近までいたような気分にもなって。コロナ禍の時間の経過は不思議で、タイムワープでもしているかのように感じてしまいます。

来日の主な目的はなんですか?

ずっと東京に戻ってきたいと思ってて、いざ帰って来れるってなったのが数カ月前かな。行けるってわかったタイミングで、これはもう行くしかない!とプランを練って。もちろんビジネスっていう理由があるけど、ただ東京にいるのが一番大切だって思っているんだ、東京の空気を感じることがね。それにいつまた戻って来れるかわかんないっていう期間があったからね。2度と来れないってわけじゃないだろうけど、いつになるかわからない。だからビジネスだろうか、なんだろうが、行けるんだったら行こう、ただそれだけさ。東京の美味しいもの食べたいし(笑)。ニューヨークに行っても感じたけど、以前はなんて役得だったんだと気付いたよ。どれくらい自分はラッキーだったのかと。すごく忙しかったりして嫌だったこともあるけど、でも今は眠れないとか気にしないし、時差ボケとかどうでもいいよ、戻って来れて本当にハッピーだ。

東京の街を回って変化を感じましたか?

昨日は原宿とかをウロウロしてみたけど、子供がすごく多かった気がする。休日だったからかな、家族連れが多かったね。バイブスは以前と似ていて、昼間はそれほど変わってないね、夜に出ている人が前より少ないとは感じたけど。

WTAPSとのコラボレーションが出ましたね。西山徹さんとはどうやって知り合ったのですか?

最初は確か徹さんがニューヨークに来ていた時に私も現地で働いていて。それで何かのきっかけで会うことになって以来、東京やパリの“Tenjikai”でもたまに会うようになり、Supremeとかの仕事を通して関わりが出てくるようになったんだ。彼のことをすごくよく知ってるかと言われれば、そこまでじゃないかもしれないけど、WTAPSやNEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)のクルーも含めとても尊敬しているし、何よりも徹さんの持っている哲学的な部分にものすごく興味を持ったんだ。

徹さんの哲学とは具体的には?

徹はオーセンティックな部分にとことんこだわるのだと思う。ミュージック、カルチャー、スケートボード、デザイン、それと機能性だね、そういう部分のオーセンティックな部分をすごくこだわって、それを正しく理解する能力があるんだと思う。

今回のコラボレーションでも用いられたPEACEMAKERは、現在ではブランドを象徴するピースになっていますが、背景などを教えていただけますか。

最初は2016年のコレクションだったかな。そのコレクションは“フライト”をベースにアイデアを作ったんだ、そこにはいろんな種類の要素を取り込んでいるけど、特にミリタリー、エアフォースの機能的な要素をデザインに落とし込んでいた。それにそのPEACEMAKERという言葉の意味する部分が気に入ってて、2つの意味を持つんだけど、1つは誰かと誰かの間のいざこざを止める仲裁者という意味と、もう1は銃という意味も持つんだ、これは強制的に争いを止めるという権威主義的なアプローチだけどね。その言葉に両面の意味があることに興味が湧いて、アグレッシブでいてポジティブに何か行動を起こすというような。そのステートメントが気に入ったわけだけど、それからトントン拍子に話が膨らんで、今となってはPEACEMAKER自体のコレクションを楽しみにしている人も多くいるし。今回の徹や藤原ヒロシさん、Supreme(シュプリーム)のJames Jebbia(ジェームス・ジェビア)らとのプロジェクトに発展していったわけさ。

今のお話にも出ましたが、fragment design(フラグメント デザイン)や森山大道さんなど、さまざまなブランドやアーティストとのコラボされていますが、特に気に入っているもの印象に残っているもののはありますか?

これが特に、というものは自分でも分からないけど、コラボレーション自体は興味深いプロジェクトでありアイデアだと思う。もし正しい物を作れば、言葉で説明する以上のものが得られるということだと思う。例えば、OAMCはどういったアーティスト、フォトグラファー、ブランドと、どういったプロジェクトをやっているかの全体像をきちんと見ると我々のやっていることが理解できると思う。ただ単にモノを売るためにコラボレーションをやってるわけじゃないってこと。2つのブランドが何かやろうとする時、それが正しいという視点を説明する必要があるんだ。論理的に正しいということを裏付ける理由だったり。例えばWTAPSと一緒にやることの意味、それは長い間のリレーションシップに基づくものだったりするわけなんだ。20年間付き合ってきて、似た部分があるから分かることで、インディペンデントであること、オーセンティックであること、デザインの好みが一致すること、そしてお互いが対話によるセッションでモノができ上がって、結果としてコラボレーションが成立するわけさ。

新しく始められた“Re-Work”プロジェクトについて、お聞きしてもいいですか。

まず基本的に、ヴィンテージのミリタリー物を探しに行って、それをどのようにアレンジできるかを考えることから始めるんだ。形や色をどう変えるかといった具合にね。それから、ものづくりに対する哲学というかアプローチになっていく。なぜなら、それぞれのピースは本当に個性的であり、また工業的でもあるからね。古いヴィンテージの素材を見つけたりして、それをリフレッシュして、今っぽいにディテールしながらOAMCの世界観に昇華していくような感じね。私はM-65ジャケットが大好きだけど、クラシックで、ほぼ完璧なデザインなんだ。でも、どうやってそれをOAMC色にできるか、本物のM65からスタートしたとして、どうやってOAMCのスタイルにするかということを考えて作っている。同じサイズのものは1つもないし、ヴィンテージショップでLサイズのM65ジャケットを100着見つけたとしても、どれもほんの少し、色でさえも少しずつ違うから、個性的で、とても特別なピースになるんだ。それに勉強にもなる。特にメンズウェアは、機能的なデザインという考え方が、デザインに対する正しいアプローチとして認識されていると思うんだ。つまり、イメージ先行ではなく、機能で遊ぶ、機能をリフレッシュさせるということ。例えば、この2つのピースはパラシュートの生地で作られているんだけど、軍の放出品の白いパラシュートを探すことから始まり、すべてが真っ直ぐではなくカーブしてる。そういった1つ1つバラバラなものをどうやって配置するか、このオレンジのパーツはここに付けるけど、あっちのガーメントには別の場所に付けるみたいな。そうやってユニークで、クラフトマンシップが感じられつつ、オーセンティックなデザインへと昇華していくんだ。そしてもうひとつ大切なのは、このパラシュートはもう誰も使わないので、いつかゴミになってしまう。このように忘れ去られたものを目の前にして、それに命を吹き返させる作業は本当に素晴らしいことなんだ。

どうやってヴィンテージのパーツを見つけてくるんですか?

ヨーロッパに古着のネットワークを持っていて、その中の倉庫に行って見つけてきたり、時々オンラインでも見つけている。例えばあなたがシェフだったら、4人分のディナーを作るのは簡単だけど、100人分となったら大変だろ?すごく状態に良いミリタリージャケットが1枚オークションサイトで見つかったとしても全く足りない、それが100枚、いや20枚でも大変だ。まさにハンティングだね、宝探しみたいな難しさだ。もし良いヴィンテージ物がたくさん眠ってるっていう情報があったら教えてくれよ(笑)。まあとにかく、少しでも使えるものが見つかって救い出せればそれは環境にとっても良いことだからね。

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テキスト
インタビュアー
Yuki Abe / Hypebeast
翻訳
Seijiro Eda
フォトグラファー
Yuji Kaneko / Hypebeast
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