レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画 “サルバトール・ムンディ” のパロディ作品が “NFT” アートとして出品された意図とは?
札束を持つイエス・キリストの肖像画が意味する昨今のアート業界への風刺を紐解く
美術史家であり作家のBen Lewis(ベン・ルイス)が、イタリア・ルネサンス期を代表する芸術家 Leonardo da Vinci(レオナルド・ダ・ヴィンチ)の有名な絵画 “Salvator Mundi(サルバトール・ムンディ)”のパロディ作品を話題のブロックチェーン技術の1つである“NFT(Non-Fungible Token)”を使ったアートとして製作。同作品はオンラインマーケットプレイス『OpenSea(オープンシー)』にて、オリジナルの絵画とほぼ同額の4億5,000万ドル(約490億円)での落札を目指して出品された。オークション自体はすでに終了しているが、本稿ではこの作品が製作された意図や経緯についてお伝えしたい。
オリジナルの“Salvator Mundi”は、1500年ごろにLeonardo da Vinciによって製作された油彩作品。タイトルはラテン語で“世界の救世主”を意味し、青いローブを纏ったJesus Christ(イエス・キリスト)が右手の指で十字を切り、左手に水晶玉を持っているのが特徴だ。一方、Benが製作したパロディ作品 “Salvator Metaversi”は、大まかなディテールはオリジナルと同じだが、Christの左手には水晶玉の代わりに札束が握られている。彼がこのような作品を製作した理由として、昨今のディーラーやオークションハウスがアート市場の仕組みを利用して億単位の利益を得る方法と、彼らが後に残す犠牲者に注目してほしいという、アートシーンへの批判が込められているそうだ。
というのもBenの調査で“Salvator Mundi”は、2005年に作品を所有していたアメリカ・ルイジアナ州のHendry(ヘンドリー)一家が匿名の購入者に1,175ドル(約13万円)で売却したところ、手数料等が差し引かれた結果700ドル(約76,000円)しか得られなかったという。同年、ベテランアートディーラーのRobert Simon(ロバート・サイモン)とAlexander Parrish(アレクサンダー・パリッシュ)はこの作品をエステートセール(故人の遺品を整理して売ること)で10,000ドル(約110万円)で購入。そして2013年、彼らはこの作品をスイスのディーラー Yves Bouvier(イヴ・ブヴィエ)に7,500万ドル(約82億円)以上で売却し、その後すぐにロシアのコレクター Dmitry Rybolovlev(ドミトリー・リボロブレフ)に1億2,750万ドル(約140億円)で転売。さらにその4年後にDmitryは同作品をオークションハウス「Christie’s(クリスティーズ)」に委託し、少なくとも4億ドル(約440億円)を手にしている。この金額はHendryー家が手にした額の約57万1,000倍にあたり、Benはこの一連の事態に対して以下のように発言している。「これらの出来事は公平ではありません。ディーラーたちは皆、数千万ドル以上の利益を得ています。彼らがHendryー家に少しでもお金を送ってくれれば最高なのに。それを実現するために、この作品をNFTアートに変えたいと思ったのです」
結果としてBenが製作した“Salvator Metaversi”は、3,723.95ドル(約41万円)という当初の目的額には遠く及ばない金額で落札されたが、収益の半分はHendryー家に送られるそうだ。今回の出来事がきっかけとなり、昨今のアートバブルとも言える異常な状況が少しでも改善されることを願いたい。
Offers now surpassing $3700 for the Salvator Metaversi NFT. 50% of profits to go to the family who owned the painting for 50 years and only got $700 when they sold it in 2005 @TheArtNewspaper @decryptmedia @metapurse @guardian @phil_maynard @jerrysaltz https://t.co/oGoCuFreQJ
— Ben Lewis (@theuniversalben) April 6, 2021
















