Sole-Searching : New Balance 991 特集

誕生20周年を迎えた900番台の縁の下の力持ちをピックアップ

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2月よりスタートした、毎月1足、歴代の名作スニーカーの歴史を紐解く新企画 “Sole-Searching”。第3回目は名作揃いの〈New Balance(ニューバランス)〉900番台における縁の下の力持ち的存在で、今年で誕生20周年を迎えた991にフォーカスする。

991について深掘りする前に、〈New Balance〉900番台について改めておさらいしたい。900番台とは、1982年に発表された初代 990をオリジナルとするブランドのフラッグシップシリーズだ。初代 990が生まれた当時のアメリカは、ベトナム戦争(1965〜1975年)の煽りを受けて衣料産業の生産拠点がコスト削減のために国外へと移転していた時期の反動から、「国内生産の製品を見直そう!」という労働組合らによるキャンペーン “Crafted with pride made in USA”の真っ只中にあった。このため初代 990は、“MADE in USA”で質のよい製品には出費を惜しまない消費者をターゲットとしたランニングシューズとして開発。当時の最高峰の技術の髄を詰め込んだ究極の1足は、“1000点満点中990点”という広告を打ち出し、一般常識をはるかに超える100ドル(1ドル=280円)という高価格で販売したにもかかわらず時流に乗り、わずか1モデルにしてステーテスシンボルの地位を築き上げた。ちなみにこれを象徴する1つの例として、ダウンタウンのドラッグディーラーの間でも好まれたという逸話をご存知だろうか。端的に説明すると、“990を履いているディーラー=お金持ち=信頼出来る=質のよいドラッグを売ってくれる”という図式である。また、路上を売り場とする彼らにとって長時間着用しても疲れない履き心地のよさも選ばれる理由だったに違いない。

初代 990が世間に衝撃を与えてから4年後、1986年に第2弾モデルとして995が登場。それから1989年に996、1991年に997、1993年に998、1996年に999と、数年に1度のペースで新モデルがリリースされるようになる。一般的なスニーカーであれば1年に1度リモデルするのが常識であるが、900番台のリモデルはあくまでデザインチェンジのためではなく機能性向上のためであり、フラッグシップシリーズとして会長 Jim Davis(ジム・デイビス)の承諾なくして開発を進めることができなかったそうだ。そして、1998年には品番が1周し、再び990の名を冠した990v2が誕生。これにて16年にも及んだ900番台の歴史が終了したかと思いきや、2001年、第8弾モデルかつ21世紀最初の900番台として991が発表された。

991は、高い衝撃吸収性と安定性を誇るクッショニング素材 ABZORBが900番台で初めてビジブル仕様かつ前後に搭載され、アウトソールには耐久性の高いカーボン素材を含有したラバーコンパウンドを採用。サイドの“N”ロゴやヒールタブには、「3M」社の再帰反射素材 スコッチライト™を使用することで夜間走行時の安全性を確保したのだが、異素材を巧みに組み合わせたアッパーや強調されたトゥボックスなど、991の誕生を機に900番台がライフスタイルシューズとして支持されるようになったと言っても過言ではないほど、デザイン面でシリーズに大きな変化をもたらしたのである。

このイナたさとアスレチックな美しさを併せ持つデザインは、のちに世界的ファッショントレンドとなるノームコア(究極の普通)の先駆けとして、若き日のKanye West(カニエ・ウェスト)をはじめとする敏感なトレンドセッターの心を鷲掴むことに成功。だがなによりも991の人気を手伝ったのは、「Apple」の故 Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)の存在である。991が発売された2001年は「Apple」がiPodを世界に初披露した年でもあり、Jobsは時代の寵児として一挙手一投足が注目され、ユニフォームと称されるほど決まった服装を好んだファッションスタイルにもスポットライトが浴びるように。その際、〈ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)〉のタートルネックと〈Levi’s®(リーバイス®)〉のデニムに合わせていたスニーカーが991であり、彼が図らずも世界的な広告塔の役割を担ったのだ。

990や996などに比べて派手さはないものの、900番台では珍しい“MADE in USA”ではなく“MADE in UK”ということもあり、根強いファンを抱える991。今年は誕生20周年ということもあり、コラボモデルや人気カラーの復刻の噂が絶えないが、はたして〈New Balance〉はわれわれにどんなサプライズをもたらしてくれるのだろうか。ちなみに991の誕生後、900番台として2006年に992、2009年に993、2012年に990v3、2016年に990v4、2019年に990v5が生まれており、早ければ来年にも990v6が姿を現わすのではないかと噂されている。

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