Massive Attack のメンバー 3D が英国フットボールリーグの試合中に環境問題への警鐘を鳴らすメッセージを発信
“世界で最も環境に優しいフットボールクラブ”と称されるフォレストグリーン・ローヴァーズからのメッセージとは?
「FIFA(国際フットボール連盟)」から“世界で最も環境に優しいフットボールクラブ”として評価されているフォレストグリーン・ローヴァーズが、先日行われたスウィンドン・タウンとの試合において、ピッチサイドに並べられたデジタルサイネージ(広告看板)に化石燃料の残余量やプラスチックごみの廃棄量などの数字をリアルタイムで表示するという前例のない試みを行なった。この気候変動がもたらす危機や生態系への影響についての警告と言えるようなインスタレーションが『Sky Sports』を通して世界120カ国に放送され、試合の内容よりも大きな話題に。そしてこのインスタレーションを手掛けたのは、同チームのアーティスティックディレクターを務めるMassive Attack(マッシヴ・アタック)のメンバー “3D”ことRobert Del Naja(ロバート・デル・ナジャ)であることが報道によって明らかになった。
フォレストグリーン・ローヴァーズは、イングランド・グロスターシャー州ネイルスワースを本拠地とする1889年創業の老舗フットボールクラブ。同チームはイングランドのプロサッカーリーグのディビジョンの1つであるEFLリーグ2(最上位のプレミアリーグの3つ下のディビジョン、つまり実質4部)に所属しており、一般的な知名度はそれほど高くない。また、チームとしての実績は特筆すべきものはなく、スター選手を輩出しているわけでもないが、このクラブは近年世界中から注目を集めている。その理由は、ローヴァーズが環境問題に対する取り組みを積極的に行なっているからだ。2010年、グリーン電力を提供する電力会社「Ecotricity(エコトリシティ)」の創業者であるDale Vince(デール・ビンス)が、ローヴァーズの会長に就任。以来Vinceは、ホームスタジアムに太陽光パネルを設置し、ピッチの芝生も農薬を一切使わない有機栽培に変更、EV車(電気自動車)用の充電スタンドも備え、スタジアム内のプラスチック使用量の減少、さらには選手や観客にヴィーガンメニューを提供するなど、環境に配慮した取り組みを実践してきた。その活動が評価され、ローヴァーズは2018年に国際連合から“世界初のカーボンニュートラルなフットボールクラブ”に認定されている。
一方、3DがメンバーであるMassive Attackもツアー中の二酸化炭素排出量を削減するための取り組みを行うなど、近年積極的に環境問題にコミットしてきた。このような両者の理念が一致し、3Dは昨年よりローヴァーズのアーティスティックディレクターに就任。今回の“Pitchside Intervention”と称されたインスタレーションは、彼とVinceが共同で企画したものだという。先述の試合ではゲーム開始4分後から、当日に(地球上の)何トンの氷河が溶けたか、キックオフから何本のペットボトルが消費されたか、食用として屠殺された動物の数、化石燃料が尽きるまでの残り時間などを示す具体的な数字がリアルタイムでデジタルサイネージに表示された。3Dはこれらの数字については意見や議論の余地はなく、今日の世界における現実だと強調。彼はチームとして「ギャンブルのオッズ、ファーストフード、消費者への後押し」以外の情報をサポーターに伝えることが重要だと述べている。また、Vinceも以下のようなコメントを発表。「私たちはピッチサイドのデジタルサイネージに新しいメッセージを導入しました。私たち1人1人の決定が、現在直面している気候や生態系などに関するさまざまな危機を引き起こしているのです。このメッセージに不快感を感じる方もいるかもしれませんが、これは広告ではなく、ただの事実です。どうしても嫌だと思うなら、あなたが生き方を変えればいいのです」
ローヴァーズの今後のプロジェクトとして、『Eco Park(エコパーク)』と呼ばれる新スタジアムの建設を計画中。同スタジアムは「Zaha Hadid Architects(ザハ・ハディド・アーキテクツ)」が設計を担当し、5,000人を収容する“世界初の完全木製のスタジアム”になる予定だ。
Forest Green Rovers – now sponsored by the facts 😎💚https://t.co/LyIIW9wCNb
— Dale Vince (@DaleVince) October 9, 2021