Interviews : 藤原ヒロシが語る Loro Piana の新たな魅力を引き出した珠玉のコラボコレクションの裏側

長いキャリアにおいて個人名を単体で冠した初のコレクションに

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Travis Scott(トラヴィス・スコット)とのコラボレーションや「Rhizomatiks(ライゾマティクス)」とのNFTマーケットプレイス『FRGMTRZM NFT』も記憶に新しい藤原ヒロシが、「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)」傘下の〈Loro Piana(ロロ・ピアーナ)〉とタッグを組んだ。

1924年にPietro Loro Piana(ピエトロ・ロロ・ピアーナ)によって創業されたイタリア発の〈Loro Piana〉。同ブランドをあまりご存知ない方もいるかもしれないが、これまでに藤原氏の手掛けてきたプロダクトやその趣向を考えると、両者の相性は最高レベルと言えるだろう。

“Loro Piana featuring Hiroshi Fujiwara”と題された今回のコレクション。〈fragment design(フラグメント デザイン)〉ではなく、藤原ヒロシの個人名が使用されている。HFファンは記憶を辿ってみてほしいが、ライン名やコレクション名で“Hiroshi Fujiwara”が単体で使われているのは極めて珍しい。それもそのはずで、彼の長いキャリアにおいて、本コレクションが初とのこと(その理由も下記のインタビューで触れている)。さらに〈Loro Piana〉にとっても(別注を除くと)コラボレーション自体が初めての試みとなる。

そんな異例づくしの“Loro Piana featuring Hiroshi Fujiwara”では、藤原氏のシグネチャーとも言える要素やアイテムを見事に〈Loro Piana〉クオリティに落とし込んだ全21型が並ぶ。〈fragment design〉を長年追いかけている方にとっては、“ザ・藤原ヒロシ”的なコレクションに仕上がっているが、逆に〈Loro Piana〉ファンには、かなりの衝撃かもしれない。グラフィック使いから素材選びや加工まで従来の〈Loro Piana〉では実現し得なかったどころか想像すらできなかった内容であろう。

そんな〈Loro Piana〉の常識を根底から覆す珠玉のコレクションを記念して、『HYPEBEAST』では藤原氏に直撃インタビューを敢行。コラボレーションの成り立ちなどについて伺った。


HYPEBEAST:fragmentではなく藤原さん名義でのコラボレーションは、今回が初めてと伺ったのですが、そうなった経緯をお伺いできますでしょうか
自分でもあまり意識したことはなかったのですが、初めてみたいですね。理由は特にないのですが、最初に打ち合わせした時に、みんなfragmentのマークを欲しがるのですが、Loro Pianaはロゴなしで藤原さんの純粋なデザインで言ってくれたので。ロゴロゴうるさいので(笑)、それじゃないところを認めてもらえたのは嬉しかったですね。

藤原さんの個人名義ということで、fragmentとの差別化などは意識されましたか?それともいつも通りですか?
fragmentのロゴを使わずに、どちらかというとLoro Pianaのロゴやアイデンティティの重きを置けたので、他のコラボとは少し違う感じだったかもしれないですね。

コレクション全体を通じてのテーマはございますか?
僕のアーカイブで出せるものをLoro Pianaのアイテムに落とし込むって感じだったんですけど。Loro Pianaっぽい素材とかは僕自身もそれを使ってやりたかったので。Loro Pianaの素材だったり形の中で遊べる工夫というか。そういうものを入れ込んだ感じですね。

Loro Pianaのアイテムは普段から着用されているのでしょうか?
ニットが好きで買ってたのですが、毎年買える金額でもないので、何年かに1回とか(笑)。

コラボのお話が来た時どう思われましたか?
実は前にも1回お話があって、その時は他のしがらみもあってできなかったのですが。今回もお話がきて嬉しかった反面、さすがに僕じゃ無理なんじゃないかと最初は思いました。「こういうことはやっていいんですか?これはどうですか?」と探り探り聞きながら確認していって、割と自由にやらせてくれる感じが見えたので、それがトリガーとなったというか。やってみようという気持ちになりました。

一般の人が見たら「穴空いてるニットなんてどこにでもあるじゃん」って思うかもしれないですが、僕的にはこのタイミングでLoro Pianaでできることに意味があるというか

セーターなどに使われている和柄がとても印象的ですが、この柄を使用された背景などをお聞かせください。藤原さんの手掛けるアイテムで柄ものは珍しいと思うのですが。
和コラボみたいなのは本当は苦手なのですが、これは和って言われなければイタリアのチェーンステッチっぽい感じの柄でもありますよね。あるバンドが初来日の際に飛行機から降りてきた時に着ていたハッピの柄なんですけど。その写真を鮮明に覚えていて、いつかのタイミングで使ってやろうと思っていたところなんですね(笑)。それでイタリアの会社だし、ニットに落とし込んだら面白いんじゃないかなと。

長年温めていたんですね。Loro Pianaさんが既成品を作り始めたのは1980年代と比較的歴史は浅いですが、コレクションに取り組む際にアーカイブなどは参照されましたか?
昔着ていたニットを打ち合わせの際に持っていって、このニットの素材が好きだったとか言って。Loro Pianaってずっと同じものを作り続けているから、僕が20年前に着ていたニットもすぐわかってくれるというか。

型数は元から決まっていたのですか?
ある程度ですね、やりながら減ったり増えたり。

シューズも1から作られたのですか?
イタリアのシューズって爪先がシャープなものが多いので、それを全部変えてもらって。丸い形にしてもらいました。

ダメージニットやグラフィックTシャツなど、Loro Pianaさん初の試みが盛り込まれていると思うのですが、今回最もチャレンジングだった点は?
「まさか穴空いたニットなんかできないだろうな」とか「まさかLoro Pianaって文字をグラフィックにしたらダメなんだろうな」とか思いながら「これはさすがにできないですよね?」って聞いたら、全然大丈夫な感じでした。その2つは割とハードルが高いと思ってたので、そこが大きいですかね。一般の人が見たら「穴空いてるニットなんてどこにでもあるじゃん」って思うかもしれないですが、僕的にはこのタイミングでLoro Pianaでできることに意味があるというか。他のブランドだったら10年前からできてるかもしれないですけど、まさかLoro Pianaでこれができるんだっていう喜びがだったりとか、同じ穴空きでもLoro Pianaがやったら、こんなにクオリティ高くできるんだとか、わかる人には感じてもらえると思います。

破れ具合とかも確認されたのですか?
サンプルで来たのを見て、みんなで「すごいね」って言ってました(笑)。

生地選びからスタートしたのですか?
生地はなんとなくリクエストして、そこからいっぱい送られてきて、その中からピックアップする感じでしたね。みんなで「これ生地めっちゃ高いですよ」とか言いながら、サンプルを作っていました(笑)。1番最初のサンプル作りは僕のチームでやって、それをLoro Pianaの日本オフィスに持って来て検証しながら、本国に送って、そちらでちゃんとしたサンプルを作るという流れでした。

Loro Pianaの生産の方たちも驚かれたんじゃないですか?
どう思ってたんですかね(笑)。リモート会議をやる限りは楽しそうでしたけど。もしコロナじゃなかったら、向こうで1からサンプルを作ることになってたと思いますが、今回は日本で自分たちでプロトタイプサンプルみたいなのを作れたのが逆に良かったです。ディテールをそのままちゃんと伝えられるというか。サンプル上がってくると、想像していたものと全然違うというが結構あるんですよ。そうすると1からやり直しじゃないですけど、もう1回説明しないといけないじゃないですか。説明も結構難しいし。今回はとてもやりやすかったですね。

年齢を重ねて洋服に無頓着になっていた人にもファッションの楽しさを思い出してもらえるといいなと。そういう可能性のあるコレクションだと思っています

ビーニーの“Loro P”っていうグラフィックが可愛いですよね。
僕がいつも「ロロピ、ロロピ」って呼んでたので(笑)。よく許してくれましたよね(笑)。

ジェンダーレスなコレクションということで、ルックブックでの女性モデルの着こなしがとても素敵でした。スカートやドレスなどもありますが、そういったアイテムを手掛けるのは初めてですか?
ちょっとはありますね。ウィメンズって言っても丈を長くしてワンピースにしようとか、そのぐらいな感じなので。僕も割と小柄なので、ウィメンズのニットとかたまに買ったりするんですよ。ウィメンズの方が良い柄があったりするので。そういう意味では自然とジェンダーレスというか。

そんなに意識せずということですね。個人的に一番気に入ってる(ご自身で一番着る)アイテムは?
やっぱりニットになりますね。穴空いたのもそうだし、普通のもそうだし。あとはMA-1も。あれはずっと別のブランドでやってたものなんですが、偶然そのブランドも同タイミングでLoro Pianaの生地を使って作ってたんですよ。「それできるんだ」と思って、そちらは日本国内だけなので、海外向けでも面白いんじゃないかと。しかもLoro Pianaは絶対そういうことしなそうだし。僕はドレスコードジャケットって呼んでるんですけど。

普段ジャケットを着られないからですよね
そう。レストランでなんか言われたら裏返す(笑)。イタリアとかああいうアイテムはないから面白い提案なんじゃないかなと。

海外のマーケットから見たら、すごい新鮮に映りますよね。藤原さんらしいアイテムも多くありますが、往年のファンの方にはどういった点に注目してほしいですか?
いわゆるみんなが求めているストリートストリートではないかもしれませんね。パンツやニットのシェイプとかも。僕の基本的な好きなものって、そういうモードっぽいものが多いので。「好きそうだな~」と思ってくれるんじゃないかなと。初めて見る若い人にも買ってほしいけど、年齢を重ねて洋服に無頓着になっていた人にもファッションの楽しさを思い出してもらえるといいなと。そういう可能性のあるコレクションだと思っています。


“Loro Piana featuring Hiroshi Fujiwara”コレクションは、10月13日(水)ローンチ。『ロロ・ピアーナ銀座店』および公式オンラインストアに加えて、10月13日(水)から19日(火)の期間で開催される『伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージ』でのポップアップストアにて展開予定となる。さらなる詳細は特設サイトからご確認を。
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