Interviews:松山智一が東京の新たなアイコンとなるJR新宿駅東口のパブリックアート広場について語る

乗降客数世界一を誇る新宿に、現代版“太陽の塔”を思わせる文化アイコンが誕生

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アート 

明治神宮の創建100年を記念した“神宮の杜芸術祝祭”でのモニュメント彫刻も記憶に新しい、アメリカ・ニューヨークを拠点に活動する現代美術家・松山智一。そんな世界的アーティストの手によって、東京のJR新宿駅東口広場が生まれ変わった。

松山氏は、ニューヨークの名門美術大学 Pratt Institute(プラット・インスティテュート)を首席で卒業後、世界各地のギャラリー、美術館、大学施設などで個展/展覧会を多数開催してきた経歴を持つ。2019年には、Keith Haring(キース・ヘリング)、Banksy(バンクシー)、JRも作品を描いてきたマンハッタンのバワリー・ミューラルを手がけたことでも広く知られている。松山氏が今回プロデュースするのは、JR新宿駅東口の広場。新宿を訪れたことのある方ならわかると思うが、中央東口から東口にかけてのロータリー内敷地は、傍から見れば、いまいち存在意義の見出しにくい場所であった。

今回のプロジェクトでは、乗降客数世界一を誇る新宿において、デッドスペースと化していた東口広場を東京のアイコンとなる空間へと変貌させるべく、都市と自然の融合を意味する造語“Metro Be Wilder”をテーマに、“花尾”と題されたステンレス製彫刻作品の設置と色鮮やかなランドアートを施した。

『HYPEBEAST』編集部は、建設作業真っ只中のこの新たなコミュニティスペースへいち早く足を運び、松山氏に今回のプロジェクトに込めた想いや制作までの道のりについて伺った。

“Metro Be Wilder”というテーマについて、ご説明いただけますでしょうか。

Metro=都会、Wild=自然、Bewilder=当惑させる/びっくりさせるという3つの英単語を組み合わせた造語になるのですが、東京の中でも特に喧騒感のある新宿という街で、真逆のものを掛け合わせたかったんですね。ここって人工/人口的で雑多感あふれる文化が重なりあい喧騒感満点ですが、その対局に全て“自然”というキーワードが出てくるんですよ。それで“自然”を一つのポイントとして持ってきたかったんですけど、企業体が都市開発の一部として緑地化を行なっている例はたくさん見てきたのですが、僕の観点から各国見渡しても、あまり成功している事例がないんですよ。アスファルトの上に緑を持ってきても、それってやっぱりアスファルトの上にただ置いた自然なんですよ。僕は、そこに“文化”っていうキーワードを使って都市と自然を繋げばそこに可能性を見出せると思ったんですね。“当惑させる”っていうのは、アートをツールに都市と自然を繋いで、文化体験を作るっていうのを僕のひとつの方向性にしたんです。今回の場合は、地面にランドアート、カラーフィールドのような鮮やかなランドスケープがあるんですが、日本のもつ季節的情緒感の感じれるエッセンスを掻い摘んで、そこに植栽だったり、巨大な円卓の上に緑を置いて、本物の自然と人工物と、人工物でありアートで作った自然を融合させるのをテーマとしました。

今回のプロジェクトはいつからスタートしたのでしょうか?

もう2年以上前です。紆余曲折あり、ハードルが高かったです。今回のプロジェクトって日本では前例がなかったような規模と内容のプロジェクトだったので、そこにどういう風に道筋を立てるのかっていうことは、すごく必要なことで、それをできるのが、アーティストにしかできない役目だと思いました。海外で身につけたグローバルな感覚をもって、日本という母国の土壌で、どうアートと公共を融合させて、コンセプトにするかが課題となりました。

花尾のインスピレーション源を教えてください。

今回、彫刻を作る時に、ただただ自分のスタジオでの制作の延長戦の作品を設置するより、その場所の持つ(新宿)の個性を活かしつつ、自分たちのアイデンティティを表現できる作品にしたいと思いました。彫刻作品はまず、具象か抽象という選択をすることから始まるのですが、重層的な文化側面をもつ場所だからこそ、両方はらんでいるものにしたいと思って。花を持っている人物が、ここに暮らす人=ローカル、海外から来るグローバルな人たち両方ともウェルカムするアイコニックな存在にしたくて。新宿という場所を見た時に、雑多なカルチャーがレイヤードされて出来てるじゃないですか。東京の中でも結構濃厚な場所で、色んな価値観が凝縮されていて、飲食でもファッションでも、ハイエンドなものもあれば、真逆なものもある。それらの対極性が交錯する場所だからこそ、それを作品でも内包したかったんです。いろんな国、土地、時代からそれぞれの帰属性を象徴できるような装飾柄を織り込んで、人物像を作ったんですよ。そうした新宿だったり東京だったりっていう現在の文化形相を断片的に取り込むことによって、それを象徴できる作品を作ったんですよ。この抽象化された概念の人物象の背面に花の尾っぽを造形的に付け足したことで、名前を“花尾”にして、英語では“Hanao-san”にしました。外国人がよく日本人に「〜〜San」って言うみたいに(笑)。外からみる東京、すくなからずのグローバル目線も意識してみました。

花尾という名前はすぐ決まったのですか?

気をつけないと、広告代理店が付けたような名前になってしまうので、アートとして機能させるために、日本語で書く時は花尾だけで、英語で書く時はHanao-sanにしようと。新宿ってカウンターカルチャーも盛んじゃないですか、LGBTQだったりのジェンダーのことにしても。なので、花男とか花夫とか、性別を特定させるような表記にしてしまうと、新宿や現代のグローバルカルチャーから外れてしまうと思ったんです。花の尾っぽにすることで、日本語だとアートっぽすぎない名前になるし、英語にした時は整合性がつくので、それで英語の表記だけHanao-sanにしたんですよ。

苗字か名前かもわからないですもんね(笑)。

そう、そこがポイントなんですよ。えっ苗字?下の名前?みたいな(笑)。それぐらい曖昧な方が、今の僕らの時代感を掴めるかなと思って。

松山智一が東京の新たなアイコンとなるJR新宿駅東口のパブリックアート広場について語る インタビュー

Riku Ogawa/Hypebeast

今回のプロジェクトは数多くのチャレンジをされたかと思いますが、最も難しかったことを教えてください。

構造上、8mの高さがあって、彫刻だけで7m、台座入れると8mあるんですね。普通、彫刻って中身に芯部があって、そこの周りに肉付けする造形で作られます。本作品は、板状に溶接されたプレートが互いに構造的に支え合うだけなので、そうした内部構造がほとんどないんですよ。かなり複雑な構造となり、それには設計士以外に構造建築士にも依頼しないといけなくて。逆に日本ではこれを作れる工房がひとつもなくて、設計図は日本語で作って、それを海外の工房で作らないといけなくて。今、コロナの影響で国交も制限されていているので、それが1番の挑戦でした。ただ、世界最高峰の工房と作業したので、物凄いクオリティのものにはなりました。

当初は世界中の人たちが訪れる想定で作られたと思いますが、コロナがあって、より内向きというか東京の人たちに向けた作品になった気もします。そういう点では、作品の持つ意味合いも変わりましたか?

人間ってものを見る時に短期・中期・長期でものを見るのですが、アーティストってその先にある“普遍”っていうテーマも入れないといけないんですよ。100年200年残る前提でつくるのが作品です。今コロナの時期になって、もう1回ローカルに焦点を当てるタイミングになってきた。グローバルっていう感覚でのハイブリッド感が若干飽和してきた時に、ローカライズがもう1回推奨されるのは悪いことじゃないって、みんなが考えているのは、ひとつユニークな観点だと思います。物づくりにおいても。長い目で見れば、いつか現在のような状況も緩和されるだろうし、こういうプロジェクトって短期的なものであれば、各国・各都市たくさんあるんですが、有り難いことに今回のプロジェクトは恒久的にここに置けるという前提で作らせてもらっているので。今後、国交が開いて人の出入りが自由になった際に、東京っていうローカライズのカルチャーが象徴できてればいいなと思います。

作品を制作するにあたって、新宿という街をどのように捉えましたか?

僕は作品を作る時にミクロとマクロっていう見方をするのですが、今回は新宿っていうよりはここのロケーションを見たんですよ。みんながよく知っている、用途のない、少し複雑な背景のもつ場所。でもアングルを変えて見ると、ここって非常に東京らしさ、新宿らしさがあるっていうか。各方面の出口を繋ぐし、ロータリーなので人がループで回るっていう、ここは実は新宿のキャラクターを映し出しているっていうことに気がついて、そのポテンシャルに僕は魅力を感じて、ここでモニュメンタルな作品を作りたいと思った。グローバルな観点で東京を捉えられるってことは、アイコンのない東京にとってとても重要だと感じ続けたきたので。東京って、今は外的な発信力の方がはるかに強い。僕はニューヨークに19年にいるので、世界に発信しだした日本のカルチャーにある時から触発されて、日本を活動の場の一つとし戻ってきたのですが、同時にファッションとかカルチャー以外にコンテンツがあまりないとも気付いたんです。マクロの観点で、中にも外にも発することができるものがつくりたく思いました。

外から日本を見れる松山さんならではの観点かもしれませんね。

そうであるとすごく嬉しいです。

日に日に変化する世界で、僕らメディアも含めて、様々な業種の人たちが自分のできることを模索していると思います。そんな中、アートの役割やアートの持つ力について、どのように考えていますか?

アートって気持ちの集合体のようなものだと思うんです。その方向性が偏るとプロパガンダになったり、逆にピュアに人の心を揺さぶることもできる。BLM運動を捉えるにしても、それを可視化して非言語だからこそできる強力なポテンシャルを持っているんですね。この時期にどういう風に僕らが作品化してアートを発信するかは非常に求められているタイミングだと思います。世界がある一定方向に向いている時に、そこのブレイクスルーになるきっかけを作る。良い悪いじゃなくて、今の状況の全てがネガティブだとも思わないし。ポジティブでは確実にないですけど。アートは人の意識の起爆剤やカンフル剤になるようなことができるから、そこは作家として模索し続けたいなって感じています。

アートは視覚的なものなので、他の芸術分野と比べても訴える力は一際強い気がしますね。

プライベートスペースっていう自宅空間がこれまで以上に大事になっているじゃないですか、そうした時だから、個人でのアートの消費が高まってきているんだとおもいます。それも素晴らしいことだと思いますし。SNSを使ってメッセージを送ることができるのがアーティストだとしたら、例えばBanksyのようなメッセージの送り方もあるだろうし、僕のようにローカルのカルチャーが活気づくために、パプリックアートっていう社会を彫刻する行為はメッセージ性のあることだと思っているので。やり方はたくさんあって、僕らは今そこに各自できることに専念するタイミングだと思っています。社会との関わり方がこれまで以上に個に向かい、ローカル化が推奨され、半ば強引にシャットダウンさせられたから、そうした時って、やっぱり転換期なので、そういった時期に何をするかというか。少しでも影響源になれば嬉しいです。

松山智一が東京の新たなアイコンとなるJR新宿駅東口のパブリックアート広場について語る インタビュー

Riku Ogawa/Hypebeast

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