二村毅と吉田恵理子を魅了する Wrangler 特別インタビューを公開

ファッションを熟知した両者のデニムスタイルから〈Wrangler〉の新たな魅力に迫る

ファッション 

創業100年以上が経つ現在でも、揺るぎない王道デニムブランドとして愛され続けている〈Wrangler(ラングラー)〉。ブランド創設時にハリウッドの衣装デザイナーであったRodeo Ben(ロデオ・ベン)を登用するなど、かつて作業着でしかなかったデニムにいち早くファッションとの関係性を模索してきたブランドとしても知られる。本稿では、そんな〈Wrangler〉の魅力をより深く知るため、スタイリスト 二村毅と、『roku(ロク)』のディレクター 吉田恵理子の特別インタビューをお届けする。ファッション、カルチャーに対して豊富な知識を持つ両者に、オリジナルなデニムスタイルの定義と〈Wrangler〉の愉しみ方について教えてもらった。

二村毅

数多のファッション雑誌や広告、俳優、ミュージシャンなど、スタイリストとして長年手腕を振るい続ける二村毅。ファッション以外でも音楽やアートを中心とした様々な文化への造詣が深く、その英知を自身の仕事へと落とし込む姿勢に業界内でも評価が高く、支持者が多い。そんな同氏と〈Wrangler〉の接点は、彼が敬愛するミュージシャン John Lennon(ジョン・レノン)であろう。音楽や考え方、ファッションスタイルにおいても、若い頃にJohn Lennonから影響を受けたことを公言する二村氏。〈Wrangler〉を着るきっかけもやはりJohn Lennonにあったようだ。

John Lennonを知り、Wranglerに興味を持ったきっかけを教えてください。

スタイリストとして働き出した20代の頃、The Beatles(ビートルズ)を聴き始め、中でもJohn Lennonの格好良さに影響を受けました。その後、『The Rolling Stones Rock and Roll Circus』(※1)を観て、出演していたJohnの格好がデニムのジャケットにパンツ。そのスタイルが格好良いなと思いましたね。デニムパンツはバックポケットが映像に映っていないこともあり、明確に何のブランドを履いていたかわからないのですが、ジャケットはWranglerの111M-Jというモデルということを後に知りました。

(※1
)1968年にThe Rolling stones(ローリングストーンズ)が企画し、John Lennon、Eric Clapton(エリック・クラプトン)、The Who(ザ・フー)といった面々が出演したTVショー。監督はThe Beatlesのドキュメンタリー映画『Let It Be』で知られるMichael Lindsay-Hogg(マイケル・リンゼイ・ホッグ)。しかし、出演者側の諸事情により1996年まで放映されずお蔵入りになっていたという伝説的な映像作品となっている。

John Lennonは晩年までWranglerを好んで着ていたようですね。

The Beatlesの歴史の中で、ご存知の通りアイドルっぽい格好の時期やサイケな時期など様々なスタイルがあるのですが、1968年にリリースした通称『ホワイト・アルバム』の頃は、Johnの格好もすごく渋くなってくるんですよね。“Instant Karma!”のPVでは、111M-Jを自分でリメイクしてパッチをつけていたり、70年代の写真では124M-Jに自分でファーをつけて着たりもしています。その『The Rolling Stones Rock and Roll Circus』は、30年近くお蔵入りになってしまうんですが、JohnがWranglerを着ている姿を確認できるのは、この時が一番最初なんじゃないかなと思います。人々の前に出る時だけではなく、レコーディングの風景写真にもWranglerを着たJohnが映っていたりもします。ヘンリーネックに白いパンツを履いてWranglerのGジャン。そんな格好もJohnの60年代後期に印象的でした。

John Lennonから影響を受けて、当時からデニムジャケットを着たりしましたか?

一番ハマっていた20代の時期は、デニムジャケットにフレアパンツといったコーディネートを好んで着ていました。ですがそれは、他のブランドでしたね。JohnのデニムがWranglerだったと知った時は、同じモデルを探していましたが、当時はヴィンテージも珍しく、良い1着に巡り会えないままでした。だから、今日着ている11M-J(Johnが『The Rolling Stones Rock and Roll Circus』で着ていた111M-Jのプロトタイプ)は、無駄なディテールがなくシンプルで気に入っていて、これから着込んで味を出していきたいと思います。また、Wranglerで思い出に残っているのは、いまだに大事に持っているウェスタンシャツ。これは、僕が25歳くらいの時、雑誌の企画でDennis Hopper(デニス・ホッパー)を撮影したことがあるんです。その時に着ていたのがこのシャツで、撮影後にDennisのサインを裏に書いてもらいました。その時の僕の写真も大切に残していますが、この頃は古着ばかりを着ていましたね。

二村さんとは長くお仕事をご一緒させて頂いているのでわかりますが、一度気分にハマった格好を毎日のようにしていますよね。

気分に合う格好に落ち着くと、ある程度の期間ずっとその格好ばかりしていますね。スタイリストなので、相手の服選びのことを考えていたら、どうしても自分の格好は後回しになってしまう。今の時代、本当はもっと前に出る格好をしても良いんでしょうけど、自分はどうしても後ろ向き。多分、人の服のことを考えている方が楽しい性分なんです。『ホワイト・アルバム』は、The Beatlesの中でも最も僕が影響を受けたアルバムですが、シンプルであることの重要さをここから学びました。シンプルだからこそ、小さな1つ1つがとても大切。それは僕の仕事もそうで、迷ったらたまに聴くようにしているんです。昔、兄から貰ったThe Beatlesの古本に、メンバーの好きなものがアンケートのように書いてあるページがあって、そこに好きな洋服について書く欄があったんです。そこにJohnは“地味なもの”って書いていた。そういった繊細な部分に僕は影響を受けてきましたね。

今だとどういうファッションスタイルが二村さんは気分ですか?

最近また気分が、ヘリテージに戻ってきているんです。ここ数年は、テクニカルで軽い服を着ることも多かったのですが、しっかりとした作りの服が愛情を持てて良いなと再認識しているところです。携帯電話がない時代の服というか(笑)。人間味が出る服を求めていたり。なんかまたそういうものが良いと思っているんです。映画も最近昔のものを観ることが多くなったし、それを自分のビジュアル作りでも落とし込めたらと思っているところです。最近また、ヴィンテージのWranglerで124M-Jも手に入れました。基本的には濃い色のGジャンが好きなんですが、この薄い色も良いなと思ってます。デニムのセットアップって、テーラードスーツの反対側みたいなもの。これはこれでスーツを着るような格好良さがあると思うんです。

吉田恵理子

上品な大人に向けたカジュアルスタイルを提案するセレクトショップ『roku』。同店を構成する要素は、エスニック、スポーツ、ミリタリー、マリン、ワーク、スクール。その6つの要素が『roku』で陳列する服や提案するスタイルに表現される。そんな『roku』のディレクターを務める吉田恵理子は、長年、『UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)』でショップスタッフ、バイイングを手がけてきた人物だ。ドレスからカジュアル、古着までこれまで様々な服を見てきた彼女だからこそ表現できる、コアなスタイル提案に、ファッション好きな女性からの支持が高い。

まずはご自身のファッションスタイルに対してお話を聞かせてください。

UNITED ARROWSを通して、カジュアル、ドレス、デザイナーズクロージングと各セクションを経験してきました。セクションによって確立したスタイルがあるのですが、私はそのセクションをクロスオーバーしたいと思っていたんです。私の好きなファッションスタイルのルーツも昔からジャンルを分け隔てなく楽しむことだったので。例えば、Martin Margiela(マルタン・マルジェラ)に古着を合わせたりと、ハイファッションを崩していくような感覚が昔から好きでした。20代の頃は、週末に高円寺や町田によく行って古着屋を巡ったり。そういう中で、Wranglerに出会いいくつか買ってきたんです。

Wranglerはどういう部分に惹かれて買ってきたんですか?

素材感や色味、シルエットがほかのデニムブランドよりも、ハイファッションに合わせやすいと感じていました。特定の型を探すというよりも、Wranglerが持つブロークンデニムならではの色味に惹かれて買っていた気がします。今日着ているジャケットは60年代のものだと思うので、ブロークンデニムではないのですが、このアイテムたち(写真7枚目の物撮りした3型)はブロークンデニムですね。青くて乾いている感じが好きなんです。自分たちもデニム作りに携わることがあり、Wranglerのデザイン面も改めて見ると良いと思いました。(デニムパンツを指しながら)後ろのシームもほかのデニムブランドと違って、ステッチが逆ヨークになっている点が魅力です。それがとても女性らしく見えるというか。元々、Wranglerは、ハリウッドの映画のカスタムテイラーであったデザイナーがディレクションをしていたこともあって、ワークだけではない魅力があると思います。そういう部分がハイブランドと合わせやすかったりする理由かもしれないですね。

今日着ている11MJZは吉田さんにとってどういうアイテムですか?

メンズサイズの幅が気に入って着ています。最近は、青色の服、コーディネートにかなり惹かれていて、色としてブルー系のデニムを取り入れることが多くなりました。今日もブルーを着たいから色味でまとめた感じです。ジャケットのオーバーなサイズ感を活かして、パンツも大きいサイズ感なので中はタイトにしたり、70’sらしさを自分なりに崩して着ています。機能的にもアクションプリーツが入っていたり着やすいところも良いと思います。

お店でもデニムやWranglerのアイテムを置いていますね。これも6つのエレメントの1つ、“ワーク”を構成する為のものとしてですか?

私は、カジュアルでも社会性や品性を感じるコーディネートができるという思いがあるんです。白いTシャツでも輝けるんだという気持ちを持っていて、rokuのコンセプトを決める為のルールブックでも書いています。それには、Wranglerだったり、SAINT JAMES(セント ジェームス)やBrooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)にrokuのようなオーセンティックなアイテムにハイファッションを合わせたり、今の気分に合わせてスタイルをアップデートしていくということをお店でも提案しています。ファッションは、寝ることや食べることと同じくらい生活を豊かにできるということをお店で表現できたらと考えています。Wranglerも、ただのカジュアルなスタイルではなく、ちょっと捻りを効かせることで面白くなる。そういう提案をこれからもしていきたいと思っています。

オーセンティックなアイテムは最近また注目されている気がします。

ファッションは半年でサイクルが変わるので、半年前の服が古くなるというそのサイクルに世間的にも疲れてきていますよね。このWranglerたちも、50年以上受け継がれてきたアイテムたち。こういう普遍的なアイテムには、とてもロングライフな魅力があると思います。

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