不動の人気を誇る Chrome Hearts の進化を追う
「好きなようにカテゴライズしてくれればいいさ、俺にとってChrome Heartsは、Chrome Heartsだから」(リチャード・スターク)
〈Chrome Hearts(クロムハーツ)〉は、1988年にアメリカ・ロサンゼルスで、Richard Stark(リチャード・スターク)、故・Leonard Kamhout(レナード・カムホート)、John Bowman(ジョン・バウマン)によって設立された。創業当初は、Richardらが個人的に着たいと思えるバイカー用のファッションギアを生産していたが、現在では、〈COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)〉や〈Rick Owens(リック・オウエンス)〉などの名だたるブランドとのコラボピースから、家具、トレーニングギア、アイウェア、雑貨類までを手がけ、妻のLaurie Lynn(ローリー・リン)、長女のJesse Jo(ジェシー・ジョー)らと共にStark一家のファミリービジネスとなっている。
1992年に「CFDAファッションアワード」のアクセサリー部門最優秀賞を受賞するなど、設立後ほどなくして、その地位を不動のものとした〈Chrome Hearts〉。とりわけミュージシャンからの支持率が高く、Guns N’ Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)、Sex Pistols(セックス・ピストルズ)、Aerosmith(エアロスミス)といった伝説的ロックスターに愛された。また、時を同じくして、日本でもその人気が爆発した同ブランド。なかでも氷室京介はRichardと個人的に親交が深く、彼のステージ衣装は〈Chrome Hearts〉の特注によるものだった。昨今では、Travis Scott(トラヴィス・スコット)、Post Malone(ポスト・マーロン)、Offset(オフセット)ら数多くの若手アーティストがこぞって着用するなど、そのDNAは次世代に引き継がれている。
大きくブレることのないスタンスを貫く同ブランドであるが、時代の移り変わりと共に、近年はよりファッション性の高いアイテムにシフト。Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)やBella Hadid(ベラ・ハディッド)とのコラボレーションも記憶に新しく、『HYPEBEAST』で過去に行ったインタビューでは、Richardは以下のように語っている。「俺らは、なにもオジさんオバさんに囲まれてブランドの未来を考えているわけじゃない」。先述のVirgil率いる〈Off-White™️(オフホワイト)〉やBella以外にも、Jordan Barret(ジョーダン・バレット)、Matt DiGiacomo(マット・ディジャコモ)や〈GALLERY DEPT.(ギャラリー デプト)〉といった新進気鋭のアーティスト/ブランドを積極的に起用していく背景には、デザイナーであり、自身もミュージシャンの長女 Jesse Joの手腕が大きい。また、Laurie Lynnは「私たちは友人たちと取り組んだコレクションやコラボレーションを発表していますが、時には今までジュエリーを手がけたことのない人もいます。でも、センスさえあれば何でもできると信じています」と述べた。
トレンドに迎合した無理のあるコラボレーションが飽和する現状とは相反するように、オーガニックな形で変化を遂げてきた今日の〈Chrome Hearts〉。それは家族経営だからこそ成せる進化とも捉えられる。音声は英語となる『HYPEBEAST』が制作した映像を上のプレーヤーからチェックしてみよう。
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