ラフ・シモンズは Prada にとって本当に必要な存在なのか?

経営は順調で十分過ぎる地位もあるブランドが、ラフの起用で狙うさらなる高みとは?

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噂はあくまで噂であっても、〈Miu Miu(ミュウミュウ)〉のメンズウェアラインが生まれ変わると聞けば興奮せずにはいられないだろう。予想は概ね的中といったところで、Raf Simons(ラフ・シモンズ)が〈Prada(プラダ)〉に加入した。もう少し詳しく説明すると、現在ブランドを率いている創業家のMiuccia Prada(ミウッチャ・プラダ)と提携する形で、共同クリエイティブディレクターに就任するとのこと。Simonsのキャリアにとって素晴らしい1ページとなるのは必至で、特に〈Calvin Klein(カルバン クライン)〉での苦悩の日々から返り咲くという意味で、非常に重要な人事といえるだろう。しかしながら、〈Prada〉の意図はいまいちはっきりしないのも事実である。すでにブランドを引っ張る著名なディレクターがいるにも関わらず、このイタリアのブランドはベルギーが生んだ至宝から何を得ようとしているのだろうか?

〈Prada〉によるSimonsの共同クリエイティブディレクター就任の発表は、52歳のデザイナーのキャリアを追っかけていた人であれば、それほどサプライズではなかったかもしれない。Simonsは大の〈Prada〉ファンであり、ファッション誌『System』のIssue 8ではMiucci Prada本人と対談もしている。そこで彼は、こう語っていた。「私がPradaを着るのは、もちろん洋服が好きだからさ。でもそれだけではなく、何よりMiucciaの考え方に共感するんだ」と。周知の事実ではあるが、2人はお互いをよく知る仲であり、デザインに対する信念を認め合う関係である。共にトレンドを生み出すだけの独創性と現代的思考を持ち合わせている。少なくとも理論上では、2人のパートナーシップに違和感を感じることはない。

Simonsは〈Prada〉のメンズウェアや様々なサブコレクションを見るだけでなく、自身のブランドでも成功を収めたウィメンズウェアも手掛ける模様。「Prada Group」のCEOでありMiucciaの夫でもあるPatrizio Bertelli(パトリッツィオ・ベルテッリ)の働きもあり、2005年からの7年間、Simonsは〈Jil Sander(ジル・サンダー)〉のメンズ&ウィメンズコレクションをディレクションした。その後、3年にわたって手掛けた〈DIOR(ディオール)〉のウィメンズコレクションも〈Jil Sander〉同様に高い評価を得たのは記憶に新しいだろう。そして、2016年から2018年にかけてSimonsが携わった〈Calvin Klein〉での手腕も、業界や評論家たちの間では高い評価を得ていた。しかしながら、そういった賞賛が売り上げに直結するとは限らない。〈Calvin Klein〉の親会社である「PVH Corp.(フィリップス・バン・ヒューゼン)」は、Simonsの在任期間にそう感じざるを得なかっただろう。

Simonsの在任中、〈Calvin Klein〉の収益はごくわずかの成長に留まり、その結果は「PVH」の2018年第3四半期事業報告からも見て取ることができた。その報告書によると、ブランドは2%成長の9億6,300万USドルで、CEOのEmanuel Chirico(エマニュエル・キリコ)は、「Calvin Klein 205W39NYCへの投資に見合うだけのリターンがなかった」ことを強調した。

ラフ・シモンズはプラダにとって本当に必要な存在なのか? Miuccia Prada Raf Simons co-creative directors company brand Partnership benefits menswear womenswear

Eddie Lee/Hypebeast

そのうえで、同時期の〈Calvin Klein〉は1億4,200万USドルから1億2,100万USドルへと収益を落としており、“デザインの問題”と”クリエイティブやマーケティングにおける支出が約1,000万USドルも上積みされたこと“が要因とされており、〈CALVIN KLEIN 205W39NYC〉とSimonsによる〈Calvin Klein Jeans(カルバン クライン ジーンズ)〉に対するChiricoの不安が的中した結果に。後者に関して、Chiricoは「私たちの顧客にとっては、ファッション性が行き過ぎていた」とコメントしていた。

おそらく、Simonsが用いた手法は〈Calvin Klein〉のようなカジュアルブランドには通用しなかったのだろう。彼の知名度は〈Prada〉の方がフィットしやすいと言える。直近では〈Prada Linea Rossa(プラダ リネア・ロッサ)〉の復活をはじめ、限定アイテムや主張の強いグラフィックを起用したアイテムをリリースするなど、裕福な若者たちへのアピールに余念がない。Pusha T(プシャ T)やKanye West(カニエ・ウエスト)、Jeff Goldblum(ジェフ・ゴールドブラム)などのファッションアイコンが夏場に好んで着用するアイテムとして注目されているのだ。2019年後半には、〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉とのコラボレーションで人々を驚かせ、Superstarとバッグのセットは『StockX』をおおいに賑わせた。男性が大半を占めるストリートウェア市場へ今以上に食い込んでいくため〈Prada〉の構想にとってSimonsは重要なカードの1枚なのだろう。

ラフ・シモンズはプラダにとって本当に必要な存在なのか? Miuccia Prada Raf Simons co-creative directors company brand Partnership benefits menswear womenswear

Ben Awin/Hypebeast

Simonsの右腕であり、自身のブランドのヘッドデザイナーを務めるPieter Miuler(ピーター・ミュラー)は、『Instagram』で〈Prada〉へ加入しないことを表明。ブランド〈Raf Simons〉はストリートヘッズへ向けたものではなく、Simonsが好むカットや厳格なアート性は、今のテイストとは必ずしもマッチするものではない。その一方では、若者の文化からインスパイアされデザイン画を描くことでも知られている。Simonsは、ポストパンクのミュージシャンや学校の制服など幅広い分野から着想を得るタイプで、新しい世代のコレクターやクリエイター、消費者と自身のクリエイティビティを結びつけられるのだ。

とりわけ、Sterling Ruby(スターリング・ルビー)やPeter Saville(ピーター・サヴィル)といったアーティスとコラボレーションしたグラフィックものをはじめ、オーバーサイズのレイヤリング、〈adidas〉とのコラボスニーカーなどは、A$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)やKanyeも着用しており、Simonsの影響力の及ぶ範囲を証明している。デザイン性やメッセージ性の強いアイテムに対する彼のアプローチは、ストリートウェアを追いかける消費者にも通用するもので、「欲しくてたまらい」という気持ちを芽生えさせるのだろう。

ラフ・シモンズはプラダにとって本当に必要な存在なのか? Miuccia Prada Raf Simons co-creative directors company brand Partnership benefits menswear womenswear

47,000ドルで転売される“Riot! Riot! Riot!”ボマージャケットを着るKanye WestJacopo Raule/Gc Images/Getty Images

高級路線と影響力のある人物が着用することで、〈Prada〉は“クール”なイメージを保っている。しかしながら、このラグジュアリーブランドにSimonsが添えるのは、さらなる魅力だ。彼の知名度は若い男性消費者の気を引くキッカケになるだろうし、バッグやナイロン製のアクセサリーといった、比較的手に届きやすい価格帯の〈Prada〉製品は近年の密かなトレンドアイテムであった。同時に、その市場が大きくなっているのは言うまでもないだろう。すでに確固たる地位を築いている〈Prada〉に必要なものは、ほんのちょっとしたことなのだ。

Simonsの〈Calvin Klein〉での取り組みは、結果的に望んでいた売り上げをもたらすことはできなかったが、視認性の高いコレクションやアニマルプリント、“Yeehaw”のトレンドなどを見ても、大きな影響力があることを言うまでもない。2017年に彼のファーストコレクションがローンチしたとき、メンズウェアは脱構築(デコンストラクテッド)の時期にあり、〈GmbH(ゲーエムベーハー)〉や〈Namacheko(ナマチェコ)〉といった新進気鋭のブランドがその先駆けであった。売り上げにおける〈Calvin Klein〉の不調は、ラグジュアリー市場に馴染みがなかったことに端を発している。売り上げの大半を占めるのがアンダーウェアやデニムという点を見ても、Simonsが自信を持って掲げたビジョンは、一般消費者には刺激が強過ぎたと言える。一方で、〈Prada〉のファンは高価格帯や斬新なアイテムに抵抗はない。

1993年に初のメンズウェアラインを発表してから、ほとんど冒険という冒険をしていない〈Prada〉。トリム、タイムレスなテイラリングに遊び心あるアートワーク、グラフィック、スポーツテイストなど、絶対的自信のあるフォーミュラを実践しているのだ。そして、ブレザー、ボマージャケット、セーター、テクニカルなテキスタイルなど、メンズウェアの定番もシーズンごとにリリースされる。それらのアイテムに魔法をかけているのは、Miucciaのカルチャーに対する理解であり、ファッションの歴史への愛なのだ。〈Prada〉のデザインはトレンドに媚びない。トレンドを作るのである。

〈Prada〉のメンズウェアは、Simonsのデザイン観と共通点が多い。ブランドとしてのアウトプットはまったく異なるものではあるが、最近のコレクションを見ても、〈Raf Simons〉と〈Prada〉は共にテーラリングで個性を出すなど、同じようなスタンスを取っている。新たにローンチしたフットウェアライン“(RUNNER)”や、その独特な形状についてのプレゼンテーションでも大げさな話し方をしていたSimonsだが、2つのコレクションにはいくつか特徴的な類似点がある。予想外の毛皮のトリム、クリーンなライン、パターンのあるニットウェア、ドラマへの嗅覚である。これらは、デザイナーが何かを真似したり、アイデアをシェアしているという兆候ではなく、それぞれの世界観はうまく調和するという証拠なのだ。

報告書によると、2018年の収益はおよそ34億ドル(約3,500億円)だった〈Prada〉。安泰といったところだろう。しかしながら、カルト的な人気を誇るSimonsやその世界規模のファンは、70歳になり、引退の噂を否定するMiucciaにとって縁起がいい。〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉のVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)や〈DIOR(ディオール)〉のKim Jones(キム・ジョーンズ)のように、新しい視点と若いファン層を〈Prada〉にもたらすことができるだろう。100年以上にわたってリスペクトを受け、大きな影響力を持ち、経営も安定しているブランドにとっては、必要不可欠なアップグレードと言えるだろう

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