THE NORTH FACE × HYKE の節目に吉原秀明と写真家・水谷太郎が想うこと

THE NORTH FACE × HYKE の節目に
吉原秀明と写真家・水谷太郎が想うこと

コラボレーションの経緯、ラストコレクションに込めた絵作りへのこだわり……
フィナーレを前にして名コラボの功労者2人がこれまでを振り返る

THE NORTH FACEとHYKEのコラボレーションラインが、2019年秋冬シーズンをもってフィナーレを迎える。2018年春夏シーズンに始動した本プロジェクトは「THE NORTH FACEが現在まで積み重ねてきたデザイン、技術の進化にフォーカスし、アウトドアスポーツウェアの機能性とHYKEの感性を融合させる」というコンセプトを一貫し、アウトドアとファッションのクロスオーバーに新たな可能性と知見をもたらした。

偉大な功績を残した同コラボレーションがこれまで大きな成功を収めた要因のひとつに、写真家・水谷太郎の存在がある。事実、THE NORTH FACEとHYKEのプロジェクト実現には水谷氏の一声も大きな後押しとなり、双方でビジュアル制作に携わったことのある彼だからこそ表現できた世界観があったことは言うまでもない。

今まではただ前だけを見つめ、互いのクリエイティビティと真摯に向き合ってきた吉原秀明と水谷太郎。“結び”を目前にしてようやく落ち着いて膝を突き合わせる時間ができた両者は、名残惜しさのほかに今、何を想うのだろうか。

THE NORTH FACE HYKE ノースフェイス ハイク コラボレーション 吉原秀明 水谷太郎 インタビュー 発売 ダウン ロング フリース

HYKEがTHE NORTH FACEとコラボレーションを行うきっかけになった経緯を教えてください。

吉原HYKEを立ち上げる前の2012年頃まで遡ります。THE NORTH FACEに勤める知人とキャンプに行く機会があり、その時「将来一緒に何かできたらいいですね」という話になりました。その時はTHE NORTH FACEの求めることとHYKEのやりたいことが一致しなかったので、一度見送ることになりました。5年後の2017年に改めて話をもらい、どのようなプロジェクトにしていくか話をしたところ、互いの描くビジョンが重なったので実現に至った流れです。自分でも普段からTHE NORTH FACEを着ているし、HYKEでは難しいアウトドアスポーツブランドが持つ専門的な素材や技術面と、自分たちのデザインを組み合わせることは挑戦してみたいことのひとつでした。

水谷さんは、写真家として今回のコラボレーションはどう感じていましたか?

水谷THE NORTH FACEがアウトドアブランドとしてやっている理念と、吉原さんとHYKEがやっているデザインの哲学みたいなところが、フィールドは違えどすごく似ている部分があるなと思っていました。吉原さんは特に軍モノやアウトドアの古着などの機能をいかにモダンにシンプルに昇華させるかということをデザインの哲学に持っていると感じていたので、双方の相性というか、一緒にやることを想像できました。

ビジュアルをつくるうえで、吉原さんとしては水谷さんにお願いすることを考えとしてお持ちだったんですか?

吉原そうですね、水谷さんとはもう20年近い付き合いで、greenの頃からHYKEになった今までビジュアルづくりに参加してもらっていて、もはや3人目のHYKEといってもいい関係性です。突っ込んだところでコミュニケーションが取れて一緒にやれるチームがベストだと思っていたので、自然な流れで水谷さんにお願いすることにしました。

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このコラボレーションのビジュアルは水谷さんにしか考えられない部分だと感じますが、当初はどんな絵が思い浮かびましたか?

水谷国外でのTHE NORTH FACEとブランドのコラボビジュアルってTHE NORTH FACEから離れたビジュアルが実は多くて、ファッションブランドと組んでファッション側だけの世界観でビジュアルに落とし込んでいるものが多いなと感じていました。双方のブランドの中間に落とし込めると僕としてはちょうど気持ちいいかなと思っていたんです。THE NORTH FACEが得意とする自然のフィールドを舞台に、吉原さんがずっと続けてきているミニマルで削ぎ落とされたモードな世界が交わるポイントが必ずあるのでは、ということは当初からイメージしていました。そこにどう落とし込めるかという調整はしましたけど、そのうまいバランスが取れたかなと思っています。

水谷さんの写真的には、いつものHYKEと今回のコラボレーションにおいて違う点や共通点などありましたか?

水谷HYKEで撮り続けてきていることと、THE NORTH FACEで写真を撮らせてもらっていたこと、それぞれで僕が写真で表現してきたことがあります。今回のコラボレーションはTHE NORTH FACEの中でもファッションとしての要素が強い案件で、HYKEの持っているビジュアルの作り方をうまく融合させたら、THE NORTH FACEが普段海外でやっているコラボレーションのラインや他のビジュアルとは違う、新しいビジュアルの提案ができるといいなと意識しました。

吉原さんはこれまで発表したコラボレーションと今回で違う点はありますか?

吉原HYKEはコラボレーションするときに、ブランドが持っているアーカイブを参考にしながら、そこに重きを置いてデザインすることが比較的多いのですが、今回に関しては現在のTHE NORTH FACEが作っている最先端の素材や仕様に影響を受けていたので、これまでとは少し異なり、新しい技術とHYKEのデザインをうまく組み合わせることを意識して取り組みました。アウトドアスポーツウェアのように機能性を重視したプロダクトは、その観点からサイジングの部分で大胆にデザインすることが難しいのではと考えており、コラボレーションならモードの観点から発想したデザインとしてのサイジングを組み合わせて、HYKEの提案するアウトライン(シルエット)とTHE NORTH FACEの技術を併せ持つウェアが作れるのではないかと当初からイメージしていました。一緒にやらせてもらって、アウトドアスポーツウェアの最先端の技術に触れられたことはすごく貴重な経験になりました、今後のものづくりに活かせていけたらと思っています。

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カプセルコレクションが4シーズンあって、後半の2シーズンはメンズを加えましたよね。普段HYKEではウィメンズだけの展開なので、メンズを加えることの経緯はどんなことだったんですか?

吉原メンズの展開はHYKEからのリクエストで実現しました。 全4シーズンで、プロジェクトとしての大枠は最初に決めてあり、その時点で後半の2シーズンにメンズラインを展開することになりました。

ご自身のHYKEブランドではメンズをつくることは考えとしてあるんでしょうか?

吉原もともとTHE NORTH FACE自体にメンズとウィメンズがあるので、ウィメンズだけよりも、どちらも作ることのほうが自然なのかなと思っていました。HYKEは女性に向けたブランドとして続けているので自分の中で(メンズを作る)異物感があるんですが、このコラボレーションに関しては両方展開することのほうがしっくりきました。

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ビジュアルもシーズンを追うごとに進化しているように感じました。後半の2シーズンは水谷さんが写真だけでなくムービーも手がけていますが、どんな経緯だったんですか?

水谷シンプルに自分が映像の仕事をやるようになったのが理由です。今、見る側は写真もムービーも垣根がなくなっている時代。それを受けてクライアントはビュアー数が伸びるからムービーがとりあえずほしい、みたいなことが先にどんどん進んでいる感覚があります。今までは写真家は写真を撮る人、映像作家は映像を撮る人ということで進んできてしまっていて。ファッションのビジュアルって、ムービーばかりをやってきた人が突然ファッションのムービーを撮るといっても、いわゆるコマーシャルっぽいものを撮ってきた映像作家にとっては難しく、別ものだと思うんです。今の東京のファッションムービーにおいて、ファッションフォトグラファーが経験してきているビジュアルの作り方がすごく重要だということが欠落してしまっていると感じています。時代が移り変わっていく速度とともにプラットホームも変わっていく。ファッションを撮っている写真家が培ってきた経験とかアイデアをもう少しムービーに注入していかないといけないとすごく感じていて。だったら、Macひとつあればできるかもしれないし、カメラは借りればいいし、動画の編集もできてしまう時代だし、なんだったらiPhoneの中だってできてしまう時代。僕も長年やってきた中で、吉原さんが信頼してくれているから動画もやってくれと言ってくれていることに甘えてしまっているのかもしれないけど(笑)、そこで僕は今一番感じていることを表現してみました。

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今回のムービーと風景写真はオレゴンにロケに行かれたんですよね。その撮影で行かれたときに、水谷さんが個人的に車窓から撮影した写真作品があるとお聞きしました。なぜ今回のプロジェクトと別の軸で作品を撮ろうと思われたんですか?

水谷そもそもTHE NORTH FACEとHYKEの間に存在するイメージのビジュアルはカプセルコレクションの最初のシーズンの段階からおぼろげに、形を変えながらずっとありました。車窓のシリーズはTHE NORTH FACE側が持っている写真素材では今まで存在しない“自然の風景”や“アウトドアの概念”を表現しています。それに対して、HYKE側の視点としても、見えてくる自然の風景写真としておぼろげに感じていました。オレゴンに行く前にはそれを撮ろうと決めていたわけではなくて、現地に行って車で移動しながら見て、感じている中で、この風景が見えている記憶が“新しい自然”の感覚だと思って。いわゆるアウトドアとかファッションみたいなジャンルを分けてしまうとそういうものって見落としてしまいます。しかし、今の時代の新しい風景は、こういうところにあったりするんだろうなと感じました。道中を移動しながら、記録しなければ見落とされていく自然風景。この刹那はファッション的にも面白いだろうなと感じました。でも、そういう驚きとか自然が与えてくれるものというのはTHE NORTH FACEが掲げているNever Stop Explodingという根元にもあって、おそらくそういうものを探し続けることみたいなことが基本的な理念としてもあるのかなと思っている。そういう雑多な情報の中からミニマルに選び落とすとか削ぎ落とすということは吉原さんの視点でもあって、その写真の撮り方だとその二者が見えている景色の表現として面白いのかなと移動して撮りながら感じていました。

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今のお話をお聞きしたうえで車窓の写真作品を拝見すると納得します。

水谷THE NORTH FACEってもはやお客さんからすると、たとえば何千メートル級の山とか登らない人もたくさんいて、ファッションから見たTHE NORTH FACEという存在が時代として確立されているわけで、そうなったときに、こういうビジュアルの考え方とか表現とか、思想とか価値観を拡張できる可能性があるんだなと思いました。

一冊の写真集で表現することで、コラボレーションで表現したビジュアルと同じ姿勢だけど、水谷さんの写真家個人の次の視点ということでしょうか。

水谷その真ん中の感覚がすごく大切だと思います。今ってヒップホップとロックの差ってないじゃないですか。要はアウトドアだろうがモードだろうかストリートって本当は関係ないのに、見る側がわかりやすくするためにそういう状態にすることが多くなっているけど、今回撮った車窓からのシリーズのようなうものを作ることで、その先の景色が見えてきたりするんじゃないかってどこかで思っています。

吉原たしかに、その中間って感覚的に理解しているんだけど、メディアとか紹介する人のほうがわかりやすく伝えたいと思って仕分けをしてしまうのかなと思います。コラボレーションの場合、本当に魅力的に感じるものは、お互いの強い部分とか良い部分をリンクさせるわけだから、相手の強さと自分の強さを提供して、相性が良ければ魅力的なものが生まれるんでしょうね。その中間で見せることは面白いし強いと、今の水谷さんの話をお聞きして感じました。仕事をしていると感覚的にやっているので、今の言葉で改めて再認識しました。

水谷(今回のコラボレーションで)落とし込まれているプロダクトも実際そうだと思います。お客さんも感覚的に思っているところだと思います。その強度は僕にも実はあって、この2つのブランドは僕にとっても付き合い的にも長いし、勝手に愛情を注いでやってきているから、そこのコミットの仕方がクライアントワークっぽくないというか。お互いのルーツと経緯を理解しているから、こうやったらもっと面白くできると思う、というのが自分ごとになってしまっている。たとえば、写真を撮るうえで、お母さんが自分の子供を撮るのが最強説みたいなものってあるじゃないですか。僕らはそれを超えることはできないんだけど、双方とクライアントワークっぽくないコミットの仕方をしているから、たぶん他の写真家が撮るよりは強度が違うというか。勝手にそうしてしまっているところもありますが(笑)。今回の写真で双方に意識やイメージの拡張をお返しできるひとつの答えなのかもしれない。それがお客さんに伝えられたらいいなと思っています。ファッションやアウトドアなどを文化的に捉えると、視覚表現やイメージは常にメッセージとして何かを伝えてきた。そういうもので刺激し合えたらやっぱりいいなと思っています。

吉原水谷さんとは20年近い付き合いで、こうやって(メディアに)一緒に紹介してもらうのが初めてだから、すごく新鮮です。本当にずっと一緒にやってきましたから。

水谷greenの時からですしね。僕が20代の半ばの、右も左もわかっていない無名の時から使ってもらっていますから。

吉原毎回ゼロベースで会って、お互いの手持ちの材料を出し合って話し合ってビジュアルを作っていく。そう考えると、当時からビジュアルの作り方ってそれほど変わらないです。積み重ねてきましたね。

Hideaki Yoshihara
吉原秀明HYKEデザイナー。1998年、デザイナー大出由紀子とともにHYKEの前身のブランドgreenを開始。2005 FWから2009 FWまで東京コレクションでランウェイ発表、人気を博すも2009 SSでブランドを活動休止。約3年の休止期間を経て、2013FWからブランド名をHYKEと改め活動再開。自身のコレクションと並行し、2014FWから2016FWまで MACKINTOSHとのコラボレーションラインMACKINTOSH×HYKEを、2015SSから2016FWまでadidas Originalsとのコラボレーションadidas Originals by HYKEを展開。2017FWよりAmazon Fashion Week TOKYOに参加、ランウェイにてコレクションを発表している。2017年、第35回「毎日ファッション大賞」受賞。
Taro Mizutani
水谷太郎1975年東京生まれ。写真家としてファッション、コマーシャルフォト撮影の活動と並行し、ムービーの映像監督・撮影も手がける。また、写真家活動として多数の展覧会を開催。2013年、Gallery 916にて個展「New Journal」。2016年、Art Photo Tokyo edition zeroにてTCK主催の「Contact Prints」、KYOTOGRAPHIE京都国際写真展にKG+特別展として参加。今夏、3人の写真家の共作展「LOOKIN THROUGH THE WINDOW」を終えたばかり。作品集に「Here Comes The Blues」(2012)、「STILLSCAPE」(2015)、「UNDERCOVER Chaos / Balance」(2017)。

Taro Mizutani Photo Book “Lethe”

水谷が真冬のアメリカ・セントラルオレゴンの風景を撮影した。車が街から郊外、そして山を抜けて大地への情景が移り変わる中を走り続ける助手席の車窓から、作家自身が無意識に見た風景の記憶を膨大に記録した作品を一冊に編集。ギリシア神話で「記憶をつかさどる川」、古代ギリシア語で「忘却」を意味する『Lethe』と銘打ち、写真集を刊行する。9月7日よりBOOKMARC、9月11日より伊勢丹新宿店本館3階=センターパーク/ザ・ステージ#3、9月18日より一部アートブック取り扱い書店ほかにて500部限定で販売予定。¥4,500(税別)

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Photo Exhibition “Lethe”

東京・原宿のブックストアBOOKMARCにて、この写真集の出版を記念した写真展『Lethe』を開催。会場では写真集と、展示したオリジナルプリント作品を数量限定で販売する。

会期:
2019年9月7日(土)〜9月16日(月)11:00〜19:00
(9月6日(金)19:00〜21:00 オープニングレセプション。一般入場可)
会場:
BOOKMARC 東京都渋谷区神宮前4-26-14
   Tel:
03-5412-0351

Credits
Photographer
Taro Mizutani, Shuhei Kojima
Videographer
Taro Mizutani
Interviewer
Hiroshi Kagiyama
Designer
balconia
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