Interviews:トム・サックスが語る “Ten Bullets” の成り立ちから自身の考える茶会 そして Nike とのコラボスニーカーまで

「もちろん完成したスニーカーも僕の誇りだけど、あれも彫刻の一種として捉えているんだ」

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Tom Sachs(トム・サックス)のキャリアを熟知している人なら、もちろん“Ten Bullets(テン ブレッツ)”のことはご存知であろう。知らない人のために説明すると、2012年にSachsが設けたアシスタント向けのルールであり、彼がニューヨークシティに構えるスタジオでの作品制作において、発注や生産性、無欠陥などを確かなものにするための共通認識でもあるのだ。ルールのなかには“Work to Code(コードに沿って作業する)”という項目があり、アシスタントは“あえて”既存のコンセプトに基づいて作品を制作する。10個のルールのなかで特に知られているのが“Always Be Knolling(常に整理整頓を心がける)”だろう。チームのメンバーは、使い終わった道具などを作業台に対して90°に並べ、常に整理整頓を意識しなくてはならないのだ。

Sachsが“Ten Bullets”を作った直後、フィルムメーカーであり彼の親友でもあるVan Neistat(バン・ネイスタット)がこれを映像化した。その7年後、2人はショートフィルム『Paradox Bullets(パラドックス ブレッツ)』を発表。矛盾したメッセージと共に始まる本作について「“Ten Bullets”がスタジオでのルールなのに対し、“Paradox Bullets”はクリエイティブな問題解決方法なんだ。時々意味不明なものもあるけどね」と我々の取材に対し、Sachsはそう語ってくれた。

こういったルールや方向性が意味を成す成さないかは別として、Sachsにとっては今後のプロジェクトにおける基盤となっているようだ。もう少し具体的にいうと、これらの指針は『東京オペラシティ アートギャラリー』で開催中の展覧会“Tea Ceremony(ティーセレモニー)”での鍵になっているのだとか。初めて“Tea Ceremony”が開催されたのは2016年のことで、アメリカ・ニューヨークの『イサム・ノグチ美術館』で行なわれた。東京開催となる今回は過去最大規模となり、初お披露目となる作品も多いとのこと。もちろん、宇宙探査や茶の湯に対する熱い情熱を落とし込んだ作品が並んでいる。

東京での“Tea Ceremony”を前に、我々『HYPEBEAST』はSachsにインタビューを敢行。本展についてはもちろん、先述の革新的な“Ten Bullets/Paradox Bullets”についてや〈Nike(ナイキ)〉とのコラボスニーカーを彫刻として扱う理由など、様々な話を聞くことができた。

トム・サックス ティーセレモニー 東京オペラシティ アートギャラリー tom sachs tea ceremony exhibition tokyo opera city gallery artworks installations sculptures

Tom Sachs Studio

“僕たちは真剣にルールと向き合っているよ”

 

スタジオでの作業に関する“Ten Bullets”というルールを設けていますが、どのようにしてできたのですか?
そうだね。“Ten Bullets”は企業などの学習用映像を参考にしているんだ。例えば「マクドナルド(McDonald’s)」で新人にお肉のひっくり返し方をレクチャーするビデオみたいな。学校やミリタリーで見かけるタイプの映像だね。プロパガンダ的要素はなく、何かをする方法を教えてあげるためのもの。つまり、“Ten Bullets”はチームのメンバーや訪問者などに、僕たちの道徳観やメッセージを伝えるためにあるのさ。

7年前に“Ten Bullets”が作られてから現在までの間で、アップデートされた項目もあるのでしょうか?
ルール自体は発表する5年ほど前にできていたし、実によく考えられたものだと思う。でも、ショートフィルムにする前に書き直した部分もあったから、そうだね、変更したところはあるよ。完璧なものではないけど、正しい方向へ進むためのコンパスになるのは間違いない。10個のルールを全て完璧に守れる人なんていないし、あくまでガイド的な役割かな。

『Paradox Bullets』では矛盾したルールを提案していましたが、一般的にルールを破るべきときってあるんでしょうか? あなたのチームメンバーに関しては?
僕たちは真剣にルールと向き合っているよ。気まぐれではなく。命がけさ。

トム・サックス ティーセレモニー 東京オペラシティ アートギャラリー tom sachs tea ceremony exhibition tokyo opera city gallery artworks installations sculptures

Tom Sachs Studio

“自分を表現できることをしよう”

 

どのくらい命がけなのでしょうか?
夜中の3時に、斧を持った不審者が家にやってきたときくらい。最悪な事態になる前に、不法侵入者を撃退しないといけないでしょ。死にたくなければ、他に選択肢はないのさ。“Paradox Bullets”は、ルールの矛盾を受け入れるための術なんだ。

矛盾したルールを作るキッカケは何だったんでしょうか?
『YouTube』での映像制作にはルールがある。“コメントを見るべからず”ってね。僕はコメントを読むことでルールを破ったけど、世の中の矛盾に対して腹を立てている人が多いみたいだね。“Paradox Bullets”は、僕たちが出した答えさ。一連の“Bullets”を提示し、その真逆を見つける。例えば、“まず簡単なことから始めよう”に対して、“まず難しいことから始めよう”というものがある。後者は、先延ばしに意味を持たせる。ほとんどのケースで、“真逆のルール”は真実なんだ。それを受け入れることは重要なのさ。

まだ公にしていないルールもあるのでしょうか?
たくさんあるよ。そのうちの1つに、“朝起きてスマホや新聞を見る前に、絵を描こう。粘土に触れよう。踊ろう。何でもいいから自分を表現しよう。残りの8時間は、無意味だけどやらなきゃいけないことをやる”というものがあるね。

たとえ意味不明なものであっても、何かを表現したりクリエイトすることは潜在意識を研ぎ澄ませる。言うまでもなく、それ以外の日常は潜在意識を鈍らせるだけだからね。Donald Trump(ドナルド・トランプ)が最低なことをすれば、自然と耳に入ってくるよね。こちらから求めなくても。Edward Tufte(エドワード・タフト)からは多くのことを学んだよ。

トム・サックス ティーセレモニー 東京オペラシティ アートギャラリー tom sachs tea ceremony exhibition tokyo opera city gallery artworks installations sculptures

Tom Sachs Studio

“最大の強みは潜在意識なんだ”

 

つまりテクノロジーと距離を置き、クリエイティビティへの誘導瞑想によって潜在意識を養うということでしょうか?
最大の強みは潜在意識なんだ。そこに夢というものがあり、一方では合理性という温かみのないものもある。スマホなどから入ってくる情報のことだけど、現代社会においては防ぎようがないね。

答えはあると思いますか?
他人と時間を共有するということは、サイバネティックコネクションの一部になるということ。もちろん誰しもがそうなんだけど、唯一寝ている時間だけはコントロールされない。自分だけのものなんだ。

日本の茶道などは非常に儀式的で、様々な側面で規制というかルールがあります。今回の展覧会は特に茶道の影響を受けていますが、この歴史あるテーマにおいて、普段のスタジオでのルールも反映させているのでしょうか?
スタジオでのルールついてはわからないけど、何をするときでも3つの理由があるんだ。精神性や官能性、そしてハードウェア。例えば宇宙計画で言うと、精神性は科学や宗教と同じことを問いかけてくるんです。“私たちは孤独なのか?”、“私たちはどこからやってきたのか?”といった具合にね。宇宙を探索したり、興奮状態がもたらす重力を感じたり、最高峰の山を登ったり、そういったものが官能性。そして、ハードウェアはものなんだ。ロケットや宇宙船、サテライトなどのクールなもの。

茶道も同じだと思っているよ。精神性は禅、官能性は畳の香りや着物のシルエット、抹茶の味。そして最後にハードウェア。僕の出番だね。湯呑みや着物、茶室、茶筅、お茶を置くための刀、そして彫刻。全ては彫刻なんだ。それが僕たちが作るものだし、プライオリティは彫刻なんだよね。だからって儀式をないがしろにしたり、精神性を伴わなかったり、理由がないわけではない。三位一体になってこそなんだ。

トム・サックス ティーセレモニー 東京オペラシティ アートギャラリー tom sachs tea ceremony exhibition tokyo opera city gallery artworks installations sculptures

Tom Sachs Studio

“茶の湯/茶道についてはすごくリスペクトしているよ”

 

物理的なものの力強さが、あなたの作品においては極めて重要であると思います。どのようにして、何を作るか決めるのですか?
全て自分のために作っています。茶会にしても、僕たちが考える茶会なんだ。もちろん、茶の湯/茶道についてはすごくリスペクトしているよ。ただ、もてなされる側でも、しっかりしたマナーを習得するのには10年ほどを要する。もてなす側は30年ほどかかると言ってもいいくらいで。それだけの時間がないとは言わないけど、20年も待ちたくないんだ。今は、いろいろなことを学ぶのが楽しいよ。今回の“Tea Ceremony”には、30年にわたる彫刻作りの経験を活用したいと思っているんだ。

伝統的な茶道具とあなたの作品における共通点は何でしょうか?
いつも僕たちが作っているような彫刻作品を目にするだろう。ネジやハードウェア、親指の汚れ、鉛筆で描かれた印、そして僕たちの作業の証を目にするだろう。湯呑みに磁器を使っているのは、指紋があるので実際に僕が作ったことがわかるから。5万年後には、指紋を元に僕やWalt Disney(ウォルト・ディズニー)、Adolf Hitler(アドルフ・ヒトラー)のクローンができるかもしれないね。

Walt DisneyやHitlerと茶会を開きたいということですか?
遠慮しておくよ。彼らは茶会をしたいリストでは下の方だね。DisneyにもHitlerにも興味がないんだ。でも、2人が対照的なヒーローであることは間違いない。僕が茶会をしたいのは、道徳的な指針を持った素晴らしいリーダー、つまりBenjamin Franklin(ベンジャミン・フランクリン)やBob Marley(ボブ・マーリー)がリストのトップ2だと思っているよ。

トム・サックス ティーセレモニー 東京オペラシティ アートギャラリー tom sachs tea ceremony exhibition tokyo opera city gallery artworks installations sculptures

Tom Sachs Studio

“何よりも生で見ることがスタジオの価値を具体化すると思う”

 

では、今回の『東京オペラシティ アートギャラリー』でのインスタレーションは、どのような形になるのでしょうか?
“Tea Ceremony”は今回で4回目になんだ。日本で開催できて光栄だし、今回が初めての展示になる作品もたくさんある。新宿エリアの主要スポットだし、スペースも広くて雰囲気もいい。Tokyo Studioという素晴らしいプロダクションチームに作品の展示や池の制作を手伝ってもらったんだ。

若くて意欲的なアーティストは池に近づかないことをお勧めするよ。とても危険なんだ。人生を台無しにしてしまうほど。水死することはないけど、身の回りのマテリアルをダメにしちゃうよ。池作りには苦労したね。

最後に『HYPEBEAST』読者へ何か伝えたいことはありますか?
実は六本木ヒルズの「小山登美夫ギャラリー」でも作品を展示しているんだ。登美夫とはかれこれ20年以上も知り合いで、何度も一緒にプロジェクトを成功させてきたけど、今回が最もいい出来だね。もし、僕が〈Nike〉とコラボレーションしたスニーカーを気に入ったのであれば、ぜひ展覧会に足を運んで作品を見てもらいたい。それこそがエネルギーの元だから。もちろん完成したスニーカーも僕の誇りだけど、あれも彫刻の一種として捉えているんだ。

また、“Tea Ceremony”の作品についてより詳しく知りたければ、何よりも生で見ることがスタジオの価値を具体化すると思う。マテリアルの透明性に触れられるので、どのようにしてその作品が作られているかを感じられるはずだよ。

Tom Sachs “Tea Ceremony”
会期:2019年4月20日(土)〜6月23日(日)
場所:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:03-5777-8600

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