adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS の最新コレクションから紐解く“80年代”のリアルと現代に紡がれたストーリー

小木“Poggy”基史と80年代を知り尽くすコレクターが当時のストリートカルチャーを掘り下げ、今のシーンとの関係性を解き明かしていく老若男女必読の保存版インタビュー

Fashion  

〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS(アディダス オリジナルス バイ ユナイテッドアローズ&サンズ)〉の2018年秋冬コレクションの背景を辿ると、80年代のヒップホップカルチャーに辿り着く。しかし、現代シーンの至るところで見かける“◯◯年代のカルチャー”という言葉は、その世界観を修飾する上で非常に便利な魔法の言葉である一方、とても表面的なもので完結してしまうことも少なくない。次々と新しい情報がスマートフォンとPCの上で消費されていき、情報過多の現在において、過去を振り返る有余はほぼ存在しないと言っても過言ではないだろう。

だが、Helen Keller(ヘレン・ケラー)の家庭教師のアン・サリヴァン(Anne Sullivan)は、「知識は愛であり光であり、未来を見通す力なのだ」と言った。米国の父であるBenjamin Franklin(ベンジャミン・フランクリン)は、「知識への投資は、常に最高の利息がついてくる」と学習の価値の重要性を説いた。偉人の言葉を借りたが、何を言いたいのかと言うと、カルチャーとは過去の集積であって、それを紐解き、理解し、知識へと還元するからこそ一層のめり込むことができ、その知識の積み重さねが未来のカルチャーを生み出していくのではないだろうか。

〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS〉の最新コレクションには、今のシーンを語る上で欠かせない“80年代”を紐解くヒントが凝縮されている。そこで『HYPEBEAST』は『UNITED ARROWS & SONS』のディレクターである小木“Poggy”基史と、資料的価値を持つ貴重なアーカイブを所有/展示するpoor_k氏とIllllllllllluss氏のコレクターお二方に、80年代を包括的に振り返ってもらった。話しは当時の著名アーティストやギャングたちが通った伝説のテーラー『Dapper Dan』のことから波及し、アメリカ、イギリス、日本それぞれの文化の違いから、Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)らが仕掛けた現代ストリートカルチャーに行き着くまでのストーリーにまで膨らんでいく。

当時カルチャーにどっぷり浸っていた読者の方はもちろん、80年代を生きてこなかったユース世代にとっても必読となる保存版級のロングインタビューから、80’sへの理解を深めてみてはいかがだろうか。


ー 〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS〉の最新コレクションは80年代のヒップホップカルチャーを現代シーンへと再提案していますよね。

POGGY:昨年にアメリカの現状で、ユース世代の憧れが〈Ralph Lauren〉などに代表されるアメリカの伝統的なブランドから、〈adidas〉などのスポーツブランドにシフトしているというのを耳にしました。トラッドなブランドを大切にしてきたセレクトショップとしては寂しい気持ちはありつつも、確かに現代のスポーツウェアは過去のそれと比較すると、デザイン的にも洗練されていて、スポーツウェアで色々な場所を訪れることができるようになりました。今年、僕たち『UNITED ARROWS & SONS』は“Dapper”をテーマに掲げているのですが、スポーツウェアをより上品に着こなすことを提案したいと考えた時、トラックスーツにハットを被り、その上からレザーを羽織ってアクセサリーで着飾っていたような80年代に辿り着いたんです。そこで、当時の斬新なジャージの着こなしをリバイバルさせ、2018年という今の時代に適したハイブリッドなスタイルを打ち出したいと思ったことが、このコレクションを発表するに至った原点になります。余談ですがトラックパンツを上品に着こなすといえば、2018年秋冬の〈Needles〉のルックも素敵でしたね。そこで象徴的なアイコンと言えば、RUN-DMC(ラン・ディーエムシー)。RUN-DMCと言えば、〈adidas〉。だからこそ、〈adidas〉と共に80年代と現代をハイブリッドすることには重要な意義があると思っています。

過去のカルチャーやそれまで古いとされていたものの価値を見直しいったのが80年代

ー “80年代”という言葉がキーワードに挙がりましたが、そもそも80年代とはどのような時代だったのでしょうか?

POGGY:簡潔に説明するのであれば、過去のカルチャーやそれまで古いとされていたものの価値を見直していったのが80年代だと思います。例えば、ロカビリーはネオロカビリーになり、デニムもヴィンテージデニムの需要が高まったりと、80年代以前のものが新しいものへと生まれ変わった印象です。80年代を作り上げた人たちは、40年代や50年代を経験、またはその時代への造詣が深い人たちで、だからこそ新鮮で斬新な文化が誕生したのではないでしょうか。それに付随して、『MTV』の誕生により、音楽が視覚的に、すなわちビジュアル化して若者に飛び込んできたというのも80年代を語る上では欠かせない要因だと思います。

poor_k:今の時代しか経験したことない人には想像ができないかもしれませんが、80年代前半に『ワイルド・スタイル』の上映・来日イベントやブレイクダンスのブームもありましたが、大きな広がりを持ったヒップホップカルチャーが突然、いきなりやってきたんですよ。音楽にしてもファッションにしても、86年や87年に何の前触れもなく日本へと上陸して、しかも全く目新しい個性の強いものでしたから、その衝撃は言葉では説明できません。ただ、それぐらいのインパクトがあったからこそ、今でも多くの人が80年代に惚れ込んでいて、大切にされているんだと思います。

ー 現代のストリートでは90年代という言葉も多用されている印象ですが、80年代から90年代への移行にはどのような変化があったのでしょうか?

Illllllllllluss:90年代になると、色々なものが商業的になっていきます。そこでクリアランスと言うのでしょうか、80年代は自由度が高く、サンプリングなどにも規制がなかったのですが、Biz Markie(ビズ・マーキー)の3rdアルバム『I Need a Haircut』に収録されていた“Alone Again”がサンプリングの使用許可を得ておらず、訴訟にまで発展して最終的にBiz Markieが敗訴、そしてアルバムの回収を命じられるという事件があって以降、サンプリングへの規制が厳しくなっていきました。『Dapper Dan(ダッパー・ダン)』も3社に訴えられ、商材が商材だったため裁判に勝てるわけもなく、92年に閉店。そういった一種の変化を抜け切ってから既製品、すなわち俗に言うデザイナーブランドの文化が発展していきました。

ー Illlllllllllussさんのお話しの中で、“Dapper Dan”というワードが出てきましたね。『Dapper Dan』と言えば、最近では〈Gucci〉とのコラボレーションも記憶に新しく、〈Supreme〉x〈Louis Vuitton〉のコレクションにも大きな影響を与えましたが、そもそも『Dapper Dan』とは当時どのような存在だったのでしょうか?

POGGY:『Dapper Dan』はハーレムに店舗を構えていた伝説のテーラーです。RUN-DMCはもちろん、Eric B & Rakim(エリックB&ラキム)など、当時を代表するアーティストたちが彼らの洋服を着ていたことで名を馳せた印象がありますが、決してアーティストたちの衣装を作っていたわけではありません。ラッパーのみならず、ハスラーやギャングたちも通っており、そういった人々に愛された理由には、〈Louis Vuitton〉や〈Gucci〉がデザインしないようなもので、尚且つストリートに生きる人たちが着たいものを作っていたということがあると思います。また、“テーラー”と言っても俗に言うスーツだけではなく、主にトラックスーツなどのカジュアルなウェアを仕立てていたようです。

ー ラッパーやハスラーたちは“Dapper Danが仕立てた洋服”のどこに魅力を感じていたのでしょうか?

poor_k:「Def Jam」に所属していた3rd Bass(サード・ベース)のPete Nice(ピート・ナイス)と繋がっていて、「なぜ当時、みんながこぞってDapper Danの洋服を買っていたの?」と質問したら、シンプルに「誰も持ってなかったものを着たかったからだよ」という答えが返ってきましたね。でも、実はこの答えが全てで、80年代は“自己主張の強い時代”ですから、人々が彼らの仕立てた服を欲しがるのは自然の流れだったようです。

Illllllllllluss:ステータスだったんですよね。『Dapper Dan』のウェアを着ることが成功の印で、ギャングやハスラーやラッパー、もちろん一般人も、着ていると必ず周りから物凄い注目を集めたそうです。Fat Joe(ファット・ジョー)がそんなコメントをしていましたね。『Dapper Dan』の洋服=成功の証、だと。

ー “成功の証”ですか……、それがFat Joeの言葉となると説得力が一層増しますね。ただ、オーダーメイドともなると、一朝一夕では完成しないかと思うのですが、『Dapper Dan』の洋服は誰もが買えたのでしょうか?

Illllllllllluss:10年間、24時間営業だったみたいですよ。ですが、『Dapper Dan』の店内で顧客だったボクシング界のスーパースターであるMike Tyson(マイク・タイソン)がMitch Green(ミッチ・グリーン)を殴ったこと、ラップアルバムの好調なセールスなどで日の目を見てしまい、『Dapper Dan』は起訴されてしまったんですよね。少し話しが逸れましたが、『Dapper Dan』のお店は誰でも行けるのですが、基本的にかなり高価でした。とても一般人がサラッと購入できるような値段設定ではなかったんです。世界中のヒップホップヘッズたちから熱い支持を集める〈BBP〉のKCDさんも、どこかのインタビューで「Dapperは高くて買えない」とおっしゃっていたと記憶しています。

poor_k:3rd BassのPete Niceに質問したところ、「Prices varied . 500 to several Gs.」と答えていましたね。安くても500ドルから数千ドルと、相当な価格設定だったようですね。

POGGY:ジャージがメインストリームだった時代ということを考えると、とてつもない価格だったのが容易に想像がつきますね。映画『UNBANNEDエア ジョーダン 1 の伝説』にもDapper Danが出てくるのですが、その時に彼がスニーカーを履かない的なことを言っていたのは驚きましたね。彼自身もハイエンドだったからこそ、憧れの的になったということもあるのではないでしょうか。

adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS 80s RUN-DMC Virgil Abloh Kanye West Dapper Dan Interview HYPEBEAST

現代では思春期に80年代のストリートカルチャーに影響を受けた人たちがメゾンデザイナーとして時代を作っています

ー 『Dapper Dan』では実際に何を仕立てていたのですか?

Illllllllllluss:僕が展示させてもらっているバーシティジャケットはもちろんですが、先程言ったトラックスーツやキャスケットもそうですね。その他では……半袖のスーツとかも作ってましたね。

poor_k:RUN-DMCのJam Master Jay(ジャム・マスター・ジェイ)が『Ghostbusters』の12inchで着ていたホワイト/グリーンの〈MCM〉のショートスリーブもそうじゃないかな?

Illllllllllluss:レザーで切り替えた半袖&ショーツのセットアップとかもありますね。〈Nike〉のものも、〈MCM〉のものも見たことがありますね。当時のアルバムジャケットからは色々と発見があるはずですよ。Nice & Smooth(ナイス&スムーズ)の処女作はオモテ面もウラ面も『Dapper Dan』の洋服で揃えていたはずです。Rob Base & DJ EZ Rockの『It Takes Two』のジャケットではスニーカーも〈Nike〉のSwooshを〈Louis Vuitton〉のモノグラムでカスタムしたりと。

元々、生地は“本物”から採取していたそうです。つまり、実際に〈Gucci〉や〈Fendi〉のストアで買い物をして、購入した商品を解体して使用していたんですけど、その後シルクスクリーンの技術を身につけて、中には猛毒の薬品を使ってやっていたというのも見たことがありますね(笑)。『Dapper Dan』のお店は3階建てのビルの1階にあったのですが、顧客が近づかないように最上階がプリント工場だったようです。だから、“本家”にない色とかを表現できたんだと思います。

POGGY:僕も猛毒(?)でプリントしたプロダクトを『MoMA』で展示しているのを拝見して。去年、『MoMA』で“Items: Is Fashion Modern?”という展示があったのですが、それは例えばアランセーターのルーツはどこにあって、誰(デザイナー)によって作り変えられ、現在のカタチに至るのか、といった源流を辿るようなものでした。その中で『Dapper Dan』がシルクスクリーンでプリントしたプロダクトが展示してあったのですが、それを見た時に、昔はブートレグを作っていたにもかかわらず、それが『MoMA』という権威でオフィシャルに展示されている事実に心底驚き、感銘を受けました。

ー アンオフィシャルだったものが、オフィシャルに。面白い流れですね。

POGGY:はい。そのあたりから〈Bally〉がSwizz Beatz(スウィス・ビーツ)を起用して、昔Doug E. Fresh(ダグ・E・フレッシュ)が着用していたものなどをオフィシャルで製作したり、Lo Life(ロー・ライフ)を追いかけていたTom Gould(トム・グールド)が“Polo Stadium Collection”のカメラマンに起用されたり。それらの最たる例が〈Supreme〉x〈Louis Vuitton〉なんですよね。オフィシャルではなかったものが、今の時代にオフィシャルとして登場しています。現代では思春期に80年代のストリートカルチャーに影響を受けた人たちがメゾンデザイナーとして時代を作っています。だからカルチャーの捉え方が変わっていて、その流れが面白いから、僕も現代のアパレルなのかヴィンテージなのかわからないようなディスプレイをお店で提案したかったんです。これが5年前だったら〈adidas〉サイドからもNGが出たかもしれません(笑)。でも、今回のコレクションは〈adidas〉の本国チームともやりとりしていて、彼らからGOサインをいただいています。

あとは、当時のカルチャーを語る上では、グラフィティも欠かせない重要な要素であることは間違いありません。 〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS〉の最新コレクションでご協力してくださったWANTOさんは今も世界各地を飛び回り、現役で活躍されている正真正銘のストリートの方です。Futura(フューチュラ)やKAWS(カウズ)のようにアメリカではストリートからスターダムを駆け上がることができますが、日本では未だに認められないという現状があるようですね。日本の風習を打破して、米国のような夢のある文化を作っていきたいというWANTOさんの言葉には大変大きな感銘を受けました。今回のコレクションでもグラフィティライターの方だからこそ、WANTOさんのロゴをニット以外はTシャツやシュータンの裏に隠しているんです。

adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS 80s RUN-DMC Virgil Abloh Kanye West Dapper Dan Interview HYPEBEAST

ー 80年代について、もう少しファッション寄りの目線でお話しを伺いたいのですが、当時のストリートでは何を、どのように着ることがカッコいいとされていたのでしょうか?

poor_k:やはり、様々なブランドからリリースされたトラックスーツが一大ブームでしたね。洋服はタイトに、靴は今とは違ったボリューム感が好まれていて、ハイカットのバッシュを合わせることが多かったと思います。あとは大ぶりなジャラジャラしたアクセサリーに〈KANGOL〉やキャップでしょうか。

Illllllllllluss:サイズが大きくなる前が80年代ですね。みんながジャストサイズぐらいで着ていたと思います。展示してあるグラフィックTシャツとかを見ると当時の着こなしがわかってもらえると思います。ジャージの下には露店で売っているような〈Gucci〉の安いブートレグを着たりしていましたね。

ー アメリカの話しが大部分ですが、もうひとつの文化の震源地であるイギリスはどのようなムーブメントがあったのでしょうか?また、日本にはどのような影響があったのでしょうか?

POGGY:日本の80年代のメンズファッションは、アメリカのプレッピースタイルがトレンドだったので、テニスやラグビーなどヨーロッパ発祥のスポーツウェアが主流だったと思います。しかし、『MTV』が浸透して勢いを増して、80年代後半から90年代にかけて音楽とビジュアルが一緒に発信されることにより、次第にバスケットボールに代表されるアメリカのスポーツ、アメリカのカルチャーに移行していきます。なので、80年代の服屋のスポーツファッションはどちらかと言うとヨーロッパ寄りだった気がします。

poor_k:雑誌や本から情報を仕入れている人たちは、藤原ヒロシさんと高木完さんによるヒップホップグループであるTINNIE PUNX(タイニー・パンクス)の影響が大きかったですね。ボンテージパンツに〈adidas〉の靴をあわせて、〈Louis Vuitton〉のポーチを提げ、キャップは〈Gucci〉、といったような。オリジナルのアートフォームが完成したのが80年代の日本かなと思います。

Illllllllllluss:先程Poor Kが言ったように、ロック、ニュー・ウェーヴ、ディスコ、ヒップホップと、影響を受けた源流は各々で異なるかと思います。TINNIE PUNXであれば、〈Seditionaries〉をバッチリ着る。高木完さんの東京ブラボーは、ニュー・ウェーヴの流れ。ヒロシさんは『Worlds End』に象徴される正統派パンクの流れ。そこにヒップホップという要素が加わり、日本ならではの文化が発展していったからこそ、僕たちは物凄く影響を受けましたね。

ロンドンもアメリカの文化の影響は大きかったようです。80年代初頭からヒップホップのイベントも開催されていましたが、The Wild Bunch(ワイルド・バンチ)は地方都市のブリストルに起源があります。イギリスも日本も同様ですが、確かにアメリカの影響は大きかったものの、アメリカと同じことをやっていたくない、自分たちにはもっとカッコいいカルチャーがあるというスタンスを貫いていました。

ファッション面でもイギリスはイギリスとして発展していったのですが、アメリカと異なり、ゴールド(ジュエリー)が手に入らなかったそうです。ニューヨークであればオーダーメイドもできましたが、イギリスにはそういった文化がなかったから、「Mercedes-Benz」や「Audi」の車からエンブレムをへし折って首からぶら下げていましたね。

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強烈な個性、自由、いなたさ

ー 『Dapper Dan』から80年代の世界のファッションについてまで色々なお話しがありましたが、2018年の現在から見た80年代の魅力は何なのでしょうか?

POGGY:ファッション的に見ても、Public Enemy(パブリック・エナミー)のFlavor Flav(フレイヴァー・フレイヴ)の首からさげたシャワークロックなど、各々のスタイルが確立されていると言いますか、“強烈な個性”が80年代にはあるなと思います。

Illllllllllluss:それに加えて、“自由”でした。音楽もファッションもそうですが、良い意味でも悪い意味でもやりたい放題だったからこそ、凄いものがたくさん誕生したのもまた事実ですね。

poor_k:そこに『Dapper Dan』のジャケットの刺繍がずれていたりする不完全さや、“いなたさ”みたいなものがありましたね。そういったものも含めての個性だったと思います。

ー 80年代を深掘りするために見るべき資料や本、行くべき場所のおすすめはありますか?

POGGY:ヒップホップの歴史を紐解いていくのであれば、『ヒップホップ・アメリカ』という本がオススメです。ヒップホップがどのように生まれ、発展していき、90年代に突入していくのかがこの一冊でわかります。また、ヒップホップのファッションであれば、「Netflix」の『フレッシュに着こなせ』というドキュメンタリーも一見の価値があり、それ以前のことであれば、70年代後半のヒップホップ黎明期のニューヨークを描く『ゲットダウン』も面白いですよ。もちろん、82年に製作された映画『ワイルド・スタイル』も欠かせないですね。DJ KRUSHさんは『ワイルド・スタイル』を観て、その足でターンテーブルを買いに行ったりしたそうですが、本当に多くの人があの映画に影響を受けてヒップホップにハマっていったので、是非当時を知らない人たちには観てもらいたい作品です。

Illllllllllluss:あと……これは見てと言っても難しいと思うのですが、やはり当時の雑誌は重要な資料だと思います。80年代にリアルタイムで活躍した人のインタビューとかが盛り沢山ですから。『宝島』の月に1度の連載“LAST ORGY”は本当に楽しみにしていたコンテンツで、ヒロシさんは“LAST ORGY”の後に『CUTiE』の“HFA”という連載が始まり、高木完さんは『Fine』で“HARDCORE FLASH”をやり、その後『宝島』で2GOさんとJONIOさんの“LAST ORGY 2”が始まりましたが、これらは今でも読み返しますよ。

poor_k:「フジテレビ」で深夜帯に放送していた『FM-TV』の中でも“LAST ORGY”を捩った“LOST ORGY”というコーナーがありましたね。当時、親に早く寝ろと言われながらも深夜2時3時まで起きて録画したビデオは今でも大切に保管していますし、宝物です。そのほとんどは『YouTube』や『Dailymotion』などで見ることが出来ますよ。

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ー 〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS〉の背景にある文化を掘り下げ、80年代そのものをなぞるようなお話し、本当にどれも興味深いものでした。最後に、POGGYさんにお伺いしたいのですが、この時代、このタイミングに今回のコレクションを出すことにはどのような意義があるのでしょうか?

POGGY:今回、僕がなぜこういったプロジェクトをやりたかったのかと言うと、現代に至るまでの“流れの一つ”を伝えたかったからなんです。事実、Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)の〈Louis Vuitton〉のショーにも賛否両論がありますし、Kanye West(カニエ・ウェスト)御一行が2008年のパリコレ会場に訪れた際には本当に話題になりました。でも、彼らは本気でファッションをやりたかったんですよ。Raf Simons(ラフ・シモンズ)に弟子入りを申し出るも断られ、最終的にKanyeとVirgilは〈FENDI〉でインターンをすることになりますが、その時彼らはデザイナーが全てをデザインするのではなく、“チーム”が重要であるということに気付いたんだと思います。だからこそ、イタリアの「NEW GUARDS GROUP」と手を組み、ストリートのトレンドを発信できているのだと思います。2005年春に〈Louis Vuitton〉がNIGO®️さんとPharell(ファレル)とサングラスコレクションを作りましたよね? あの出来事はストリート発でラグジュアリーとコラボレーションしたため、ヒップホップ界隈の人たちは歓喜していました。そういう背景があるからこそ、Virgilは〈Louis Vuitton〉のデビューコレクションで2人にオマージュを捧げるサングラスを作り、Kid Cudi(キッド・カディ)やA$AP Nast(エイサップ・ナスト)、Playboi Carti(プレイボーイ・カルティ)といったラッパーたちをモデルに起用しました。

つまり、このようなストーリーが積み重なってVirgilたちが生み出した流れが完成したんだと思います。ヒップホップは70年代後半に生まれたと言われているので、もう40年の歴史があるということになりますが、それでも分からない人には全く分からないんだと思います。なんで〈Timberland〉のイエローヌバックが好きなのか、ブランドのモノグラム柄が好きなのか、とか。そういった文脈の一つを実物を見せてリアルに伝えたかったんです。日本にも日本の文化があり、それは本当に素晴らしいことですが、その一方で地理的要因もあって、固定概念が強かったりもします。だから、受けての善し悪しはともかく、〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS〉の最新コレクションでは80年代の素晴らしい歴史にオマージュを捧げ、当時の魅力を再提案すると同時に、2018年という現代シーンが持つ意味を、押し付けるのではなく、ただ純粋に見てもらい、そして知ってもらいたかったんです。

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いつになくロングフォームのインタビュー記事となったが、いかがだっただろうか。poor_k氏とIllllllllllluss氏のアーカイブ展は9月2日(日)をもって終了してしまったので、期間中に『UNITED ARROWS & SONS』を訪れることができなかった方は、上のフォトギャラリーをチェックしてみてほしい。また、本コレクションの世界観を色濃く反映した『UNITED ARROWS & SONS』の特設サイトはここまで読み終えてから見ることで、きっとまた何か違うインスピレーションを感じ取ることができ、各種アパレル&スニーカーの見え方も大きく変わってくるはずだ。カルチャーの歴史そのものを纏う楽しさを是非、〈adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS〉の最新コレクションから体感してみてはいかがだろうか。

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Writer
AKIHARU ICHIKAWA/HYPEBEAST
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