Interviews: 大注目イタリアンブランド SUNNEI のデザイナー、ロリスとシモーネ

量より質、アイロニーと遊び心、そしてセレブに媚びないマーケティング

ファッション 
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2015年にデビューしたイタリアンブランド〈SUNNEI(スンネイ)〉のデザイナー、Loris Messina(ロリス・メッシーナ)とSimone Rizzo(シモーネ・リッツォ)が来日。イタリアならではの良質な素材を用い、伝統のテイラードスタイルに彼ららしい遊びを加えたデザインは、ファッション業界の感度の高い人々から注目される存在だ。この夏ミラノで発表された2018年春夏コレクションでも、ドローストリングを用いたカジュアルかつスポーティーな要素をセットアップやスーツに落とし込むと同時に、あのMySpaceのTomのアイコンをプリントしたTシャツも話題となった。“TOMFOREVER”Tシャツは早くも多くの人々の来春のマスト・バイ・リストに入っているはず。そんな〈SUNNEI〉の2人にインタビューを行った場所は、南貴之の手掛ける『Graphpaper』。現在2Fのスペースにて、〈SUNNEI〉2017年秋冬コレクションのポップアップイベントが開催されているので、ぜひ立ち寄ってみよう。

それでは以下より、初来日を果たした2人へのインタビューをどうぞ。

- ブランド名はなんて読めばいいの?

Simone:スンネイかな。

- この名前の由来って?

Simone:Lorisと車に乗ってる時に、Boney M.(ボニーM)の曲“Sunny”が流れてきたんで、“Sunny, yesterday my life”って歌ってたんだ(笑)。

Loris:で、イタリア人が“Sunny”の綴りを間違って書いたらどんなスペルだろう?っていうくだらない話になって、“SUNNEI”の綴りが生まれたんだよ。

Simone:僕らは“スンネイ”って言うけど、イタリア人に“ああ!君たちのブランドはサニーっていうんだね”って言われると、心の中でガッツポーズするんだ。ひっかかったね!って(笑)。

- ふざけてる(笑)。2人のブランドの中での役割は?

Simone:真面目にふざけてるんだ(笑)。皮肉やアイロニーを込めてね。

Loris:役割は、今までの経験を生かして僕が主にプロダクション関係を。Simoneがマーケティングやコミュニケーションを回してるけど、クリエイションは2人で一緒にしてるよ。僕はフォトグラファーの元で働いた後、マーチャンダイジングをしてた。SimoneはPRとバイヤーを経験してるんだ。

Simone:自分たちがオーナーでありクリエイティブ・ディレクターなんだ。いつか自分で何かしたいってずっと思っていたけど、そのために必要なファッションの知識や業界の仕組みを理解する必要があるだろ? だからいろんな役割を経験した。

Loris:働くうちに、ブランドをするためにはデザイナーの経験が必ずしも必要なわけじゃないことも分かったんだ。生産背景を持って、信頼するパタンナーがいれば不可能じゃない。そして僕らは幸運なことにイタリアにいる。良質な素材や高度な技術を持った職人がたくさんいるから、彼らから学び服を作ることができるんだ。

Interviews: 注目すべきイタリアンブランド SUNNEI のデザイナー、ロリスとシモーネ

- どんな経緯でブランドを始めようと思ったの?

Loris:Simoneと1ヶ月くらいのニューヨーク旅行に行ったんだ。そこで、いろんなリテーラーや客層、流行を見て回るマーケットリサーチみたいなことをした時に、ブランドと消費者の間にあるギャップを感じたんだ。

- そのギャップって、具体的にどんなもの?

Simone:ミニマルで、良質で、且つモダンに構築されたイタリア製の服。そういうブランドがないと思ったんだ。ど真ん中のトラディショナルすぎるイタリアンメイドじゃなく、遊びやアイロニーも孕んだファッションブランドを作りたいと思った。それでLorisと実行したんだ。今は、プリントアイテムが各シーズンに2つか3つくらいのパターンで出てくる感じかな。グラフィックだけじゃなく素材にこだわって作ってるよ。

- プリントと言えば、2018年春夏コレクションでTomのプリントTシャツがあったけどあれは一体?(笑)思わず欲しいと思った人がたくさんいるはずだけど。MyspaceのTomだよね?

Simone:そう(笑)! ある時、僕らはソーシャルメディアの悪影響みたいなことについて話していたんだけど、SNSが僕らの生活を蝕む前のファッションってどんな感じだっただろう?って思い出していたら突然、“そういえばTomって覚えてる?”って話になって(笑)。

*注:Tomとは、ソーシャルメディアのさきがけであるMyspaceの当時の社長・Tom Anderson(トム・アンダーソン)。Myspaceにユーザー登録すると、自動的にTomが案内役として1人目の友達としてデフォルトで登録されている。つまり、みんなの友達=Tom。

Loris:“Tomって誰だっけ?”って一瞬みんな考えるだろ?“facebookだったっけ?いや、Myspaceだ!”みたいに。世界中の僕ら世代、もしくは少し上の世代が知っている顔。芸能人じゃないのに、「どこかで見たことあるなぁ〜、あ!」っていうのがTomなんだ(笑)。

Simone:Tomの写真の下にプリントした“TOMFOREVER”のフォントも、言わずと知れた別のTOMのやつを使ったんだ(笑)。

- 最高だね(笑)。

Loris:純粋にブリリアントなアイディアだと思ったんだ。哲学的にいつもシリアスにやる必要はないと思うしね。

- でもこれも、ある種皮肉というか、メッセージ性のあるものになっているから面白いよね。

Simone:そうなんだ。ソーシャルメディアとの付き合い方や在り方については、ちゃんと考えていきたいところでもある。

Interviews: 注目すべきイタリアンブランド SUNNEI のデザイナー、ロリスとシモーネ

- ではソーシャルメディアとの付き合い方、活用の仕方も含め、ブランドのビジネスプランなどはある?

Simone:そうだね、まずは量より質というところ。僕らのヨーロッパの代理店はTomorrowっていうところなんだけど、OAMCやMarni、FACETASMほか、人気ブランドをたくさん取り扱っているところなんだ。規模の大きいブランドもあるけど、僕らは彼らに、取引先をどんどん増やしたいわけじゃないって話してる。質の良い服を、質の良い店に置きたいんだ。それと、僕らは今改装中のミラノの店舗やEコマースで、お客さんとのダイレクトな繋がりもしっかり開拓できている。だから今後数シーズンは、ブランド規模の拡大よりも品質を確固たるものにしていくつもりだよ。

Loris:例えば2018年春夏で展開するビニールコーティングのデニム素材は以前のコレクションで好評だった。まだたくさん可能性がある素材だし、今はブランドのメンバーが5人に増えたから、再度改良して複数のアイテムで展開するんだ。そうやって精度を高めることもしたいし、新しいテクノロジーを使った素材にも目を向けていきたい。

Simone:ソーシャルメディア、ウェブメディア、Eコマースでは、ブレずに世界観を打ち出していくつもりだよ。とってつけたような、僕らの友達でもなんでもない所謂“おしゃれ”なブロガーやセレブリティーたちと、アホみたいなコラボレーションをするつもりもないし、興味もない。有名人に金を払って服を売っている数多くのブランドとは違うし、実際僕らはそういったPRに1ユーロさえ金を払ったことはないよ。

Loris:多分20年前だったら、ブランドが金を払ってそういう宣伝をしてるってことは気づかれなかったかもしれない。でも今じゃみんな知ってるからね。カッコイイ服を作ってるのにそんなカッコ悪いことをするくらいなら、もっと明確なブランドのアイデンティティを示していくべきだと僕らは思ってるんだ。

Simone:それと、ブランドを始める時にLorisと話したことは、僕らは僕らの服をいろいろな人に分け隔てなく見て欲しいっていうこと。バイヤーやセレブリティーを優遇するんじゃなくね。今の時代、1人のお客さんがバイヤーであり影響力を持った人物にもなり得るから。それと、SUNNEIのソーシャルメディアでも、自分たちのパーソナルライフを露呈するんじゃなく、ブランドに関係のある事柄や、ブランドを取り巻くインスピレーション、ブランドとしてのストーリーを毎日伝えていくようにしてるんだ。

- 真摯な部分が聞けて良かった!では、今回の2017年秋冬コレクションのインスピレーションはどこから?

Loris:夜家から抜け出して、パーティーに行くティーンたちがテーマなんだけど、毎回僕らは若者のグループと、僕らがティーンエイジャーだった頃のことを思い浮かべて、いろんなシーンや人物像を作るんだ。その方が、スタイルが限定されなくて楽しいだろ?

Simone:皮肉なメッセージを楽しみながら伝えることと、そこに伝統的なテイラーリングの技法と良質な素材を落とし込むのがSUNNEIのスタイルなんだ。職人に、“このカジュアルなジャケットにどうしてこんなに手の込んだスーツみたいなテクニックを使うんだ?!”って言われても、それが僕らにとって手の込んだスーツだったらどうしても譲れないんだ(笑)。

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