STUSSY Livin’ GENERAL STORE x Modarnica によるアームシェルチェア

現代に再現されたミッドセンチュリーのものづくり

デザイン
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ロサンゼルスを拠点に様々なモダンファニチャーを生み出す〈Modernica(モダニカ)〉と〈STUSSY Livin’ GENERAL STORE(ステューシー リビン ジェネラル ストア)〉がコラボレーションチェアを発表。かつて「(チャールズ・イームズ)」によりデザインされた、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)製のミッドセンチュリーを代表するプロダクト“アームシェルチェア”を再現。1950年代から稼働している世界唯一の専門機器と、〈Modernica〉が誇る熟練の職人たちにより完璧とも言える生産手法の再現で完成したのがこの“GS Fiberglass Arm Shell Chair by Modernica”だ。ベースは〈STUSSY Livin’ GENERAL STORE〉が提案するブロンズメッキのラウンジタイプ。リビングやガーデンなどさまざまなシーンに溶け込むカラーチョイスも魅力的だ。価格は75,000円、7月16日(土)より発売となる。ミッドセンチュリーのものづくりの精神、オリジナルへのこだわりと歴史を受け継ぐ数少ないメーカーとして知られる〈Modernica〉の全面協力により実現したアイテムとその生産風景、を上のフォトロールより覗いてみよう。そして以下では〈Modernica〉の共同オーナーの1人「Jay Novak(ジェイ・ノヴァック)」へのインタビューもご紹介。

─始まりについて教えて下さい。

椅子についてですね。80年代後半に、Frank(共同オーナー「Frank Novak」)と僕で「Sol Fingerhut(ソル・フィンガーハット)」氏に出会いました。彼がこのチェアの生産プロセスを発明した本人です。1940年代の話。当時、アメリカでコンポジット(ハイプレッシャー・ファイバーグラス・モールディング)に関する知識を持っている、数少ない一人でした。 僕らは元々、チェアの修繕を手がけていました。リビルド、リコンディショニング、新しいレッグをつけたり、再コーティングしたり、新しいショックマウント(ラバー) を入れ直したり。最初はそんなところを学ぶところから始まりました。そこから、Solと一緒にチェア自体を生産するようになりました。僕らのところで働いてくれている職人を始め、自分たちもトレーニングし、その重機をこの〈Modernica〉の工場に持ち込みました。(記述のPreform Machineは以前「Zenith Plastics」で使われていた世界に唯一の機械で「Sol Fingerhut」が1960年にデザインしたもの)元々の工場はもう閉鎖しています。だから長い長いプロセスでした。僕らが関わり始めた80年代後半は、このファイバーグラスチェアはもう生産停止になってしばらく経っていました。それを復活させたのに関わったのが僕ら、ということです。とにかく長いプロセスでした。生産が始まる前に、2万脚ほど、古いチェアの修繕を手がけましたね。このファイバーグラスチェアは、とても長持ちするんですよ。古くなって、表面が荒くなったり、ショックマウントのラバーが疲弊して取れてしまったり、脚が曲がったり折れたりなどしてしまうかもしれません、でもファイバーグラスのチェアの部分は100年、200年保つ素材かもしれません。僕の家にも66歳のチェアがありますよ。まだまだ見栄えもフレッシュなもんです。

─何がきっかけで生産自体を手掛けるようになったのですか?

当時、シェルチェアは100万脚あまりが作られていたといわれていますが、段々と需要に比して出回っているチェアの現存数が少なくなっていったんです。例えばダイニングに置けるよう4脚分欲しい……と思っても、その当時は物が非常に少なく、似たようなものを探すというのも至難の技でした。特に「赤色」のチェアを探そうというのは、ほぼ不可能だった。そんな風にヴィンテージのチェアを見つけられるのも時間の問題だなと気付きました。その当時、ヴィンテージのチェアはありとあらゆるところから探してきましたよ。全部あわせれば1万脚くらい集めたかな。いや、1.5万脚くらいかな。でもそれも在庫が尽きることは目に見えていました。もともと生産されたチェアはどこかに消えてしまったり、壊れてしまったり、捨てられてしまったりしたんでしょうね。それで僕らはソルのところへ行って、生産する手助けを請うたわけです。彼は古い重機を全て持っていましたから。それを何年もかけて基礎から学びました。


─このロケーションでの稼働を始めるにあたって、コンクリートの基礎を入れ直さなくてはならなかったなど、設備投資をしていますね。

ここの施設を使い始めるにあたり、様々なインフラを整えました。最も手が掛かったのはファイバーグラス部門です。古いファクトリーから重機をそのままここに持ってきました。ファイバーグラスのプレス(型に押し固める重機)は10~15トンもの重さでとにかく重いんです。だからあの機械を入れるにあたり、かなりの面積に渡ってのコンクリ基礎部分を深く入れ直す必要がありました。またファイバーグラスという素材の性質上、環境ガイダンスに沿った操業をしているという市の認可を受けなくてはならなかった。ここロサンゼルス郡のヴァーノン市はアメリカの中でもとても環境規制が厳しいエリアとして知られているので、それらを全てクリアにするのに少し時間はかかりましたね。

─生産にあたって職人さんやスタッフに必ず伝えているメッセージ、教えていることは?

特別なメッセージがあったり、マントラがあるわけではありませんが、もちろん安全第一ではあります。また、僕らの生産は急いで行うものではないということ。作り方を見てもらえれば、それぞれの段階できちっとしたハンドリングが求められることがわかると思います。会社のカルチャーとして、商品が正しく作られ、なおかつ美しくなくてはいけない、というものは根幹にあるかもしれませんね。少し余計に時間が必要なんだったら、それはそれでいい。それと質問をして、さらに学ぶ時間が必要であれば、すすんで年長者に聞いてほしい。また誰かに質問をする際は、臆することなくどんどんして欲しい。そんなところが僕らの会社のカルチャー、つまり文化ですかね。僕らは生産をせかしているわけじゃない。美しいものを作る会社なんです。そしてこれらが決して簡単に作れるプロダクトでないことはわかっています。色のバリエーションの幅が広過ぎればダメですし、白い斑点が出てしてしまったりしたらそれもダメです。それが僕らの会社の方針ですかね。クオリティが第一。 このプロダクトはクラフツマンシップがあってこそ、成り立つものなんです。だからそのクラフツマンシップを妥協してしまったら、プロダクトがダメになってしまうんです。

─元々、あなたがデザインや家具作りに携わるようになったきっかけは?

少しづつの積み重ねですかね。最初はやっぱり、モダン家具が好き、というのがありました。ヴィンテージ家具を買っては、でもどこか壊れていたりして、それを直したり、というところから始まりました。いろいろ集まるうちに、美しいプロダクトばかりだけれど、いろいろと改善できる点がある、ということに気づきました。 生産から携わることによってね。Frankと話していたのですが、素材自体が足りなくなってきている、ということに気づきました。だから自分たちで 作ろう、ということになりました。ショックマウントのラバーは特に一番痛みやすい。最初はそこのパーツの生産から始めました。また、木製の足でこの工場内で全て作られているものもあります。ショックマウントは別の場所で作られていますが、椅子にマウントするアッセンブリー作業は全てここで行います。


─クラフツマンシップが必要なところは全てここで作られているんですね。

そうです。 今の時代に全てロサンゼルスで生産されている家具というのはとても贅沢ですよね。自分たちの自慢話ばかりをするわけではありませんが、このように一貫して、アメリカで今も作り続けられているプロダクトというのは本当に少ないと思いますよ。 ファイバーグラスチェアの生産に携わっている職人とスタッフは20人。工場部分は12人。工場の様子を見てもらえればよくわかると思いますが、それぞれの部門がしっかりと分業化しています。場所の面でもね。彼ら自身が一つのカルチャーなんです。ファイバーグラス部門の職人たちは、昼休みも一緒に食事したりね。だから彼等のチームワーク、連携プレーは最高ですよ。

─そういったクオリティコントロールの網羅された生産ラインがこの場所に全てあることで、今回の〈STÜSSY Livin’ GENERAL STORE〉とのような細かなプロジェクトにも取り組めるんですね。

そうなんです。それにみんな楽しみながら取り組んでいます。もちろん大変な作業です。でもみんな携わっている人は楽しんでやっています。これはそんな楽しみの一つですね。働いている若いスタッフに「どんな服が着たい?」って聞いたら、きっと多くが〈Stüssy〉、と答えるでしょう。だからもし自分の作業が〈Stüssy〉とのコラボレーションの一環だったら、それはもう楽しんでやりますよね。毎朝レジンの色を混ぜるRaulは、もう35年働いてくれています。Raulはそろそろ60歳くらいかな?彼は元々のファクトリーに25年以上いた職人です。そんなベテランから、とても若い職人までいろいろです。プロセスを見てもらえれば分かりますが、とても特別な流れです。まずはファイバーグラスを切断して、エンジェルヘアーのような状態の素材を、椅子の形にします。それを完璧にこなすにはとても特殊な技術が要ります。それも見てもらえますし、そのラフなフォルムができた後に、職人が手作業で重さを計りながら、より完璧な椅子のフォルムに仕上げていきます。手で触って、自然光にかざしてみて。必要であれば削ぎ落としますし、薄過ぎれば足したりもします。重さは決まっているので、それを守ってね。みんながみんなできる技術ではありません。職人でも難しい作業です。とても直感的なプロセスなので、向いている職人さんがやはりいるわけなんですね。このアッセンブリー工場の方では、〈Case Study〉(Modernica 社が他に手掛けるブランド)の陶器の金属の脚の仕上げをしたり、他の家具を作ったり、木工プロダクトを作ったり、色々なことをやっています。ソファなんかも作っています。ファイバーグラスチェアのショックマウント、ネジ、それからファイバーグラス(コーニング社)は僕らのプロダクトではありませんが、それをチェアの形にするのは全て僕らの職人の手で行われます。レジンも別の生産者から入れていますが、12種類くらいの原材料から、それを混ぜ込んで僕らのカラーを作るのはRaulの仕事です。また、プリフォーム(元々の方を作るプロセス)も別の業者に任せる会社が多い中、僕らは重要な部分は全て自分たちの工場で手がけています。

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